今に至る理由
今日は俺の命日だ。
・・・・まだ決まってねぇよ!!
心なしか、今日は一人ボケツッコミも微妙に決まっていないような気もする。
・・・・オホン。
さて、ニーナの風邪は昨日の今日で、すっかり治っていた。
よくよく考えてみたら、風邪の状態で兄が来てみろ。
申し訳が立たないじゃないか。
謝っても、謝りきれん。
いや、むしろ俺がそのシスコ・・・・じゃなくて、妹思いの兄に殺される方が、謝るより早いかもしれない。
ま、解決した事だし、そんな事はどうでも良い。
今は午前10時ごろ、俺は普段どおりに生活しながらも内心ドキドキしていた。
いつ、家のインターホンが鳴るのか―――――・・・・・・・。
(ピンポーン・・・・)
家の中に響き渡るこの音は・・・・・。
・・・・インターホン――――――「鳴っちまったぁぁぁ!!!」
「トモはそんなに怯えなくてもいいんじゃないかなぁ・・・。
私が落ち込むのはわかるけど・・・」
「じゃあさ。
その兄さんの特徴は?」
「極度の妹思い」
「そこが怖いんだよっ、俺はっ!!」
「????」
首を傾げるニーナ。
ん〜〜・・・もしかしたら、本当に危険じゃないのかもな。
希望的な考えはしない方がいいけど。
そんな事を考えながら俺とニーナは玄関へ向う。
む・・・・過去にこれほどまでに『玄関のドア』を恐れた事があろうか。
「よ・・・よし。
あ、開けるぞ」
「う、うん」
俺はドキドキしながら、ドアノブを捻る。
(カチャ・・・)
ドアの前には―――――――――
「お届け物です、印鑑かサインをお願いします」
――――「・・・・・宅配便・・・ですか?」
「あ・・・・忘れてた。
私が一ヶ月前にリックが来るって聞いて注文しておいたんだったぁ」
「無駄に緊張させるんじゃねぇよ・・・ったく。
それより一ヶ月前に聞いたんなら、その時俺に知らせ――――――
「印鑑かサインをお願いしまぁす」
―――――――あ・・・はい、すみませんっ」
若干、宅配便のお兄さんおの顔が引きつり気味だったから、素直に従わねば・・・・・。
「ありがとうございましたぁ〜〜〜〜」
と宅配便のお兄さんが一礼をして、ドアが閉じる。
「ったく、、、大切な事はすぐに知らせてくれよ?」
「うん、分かった〜」
「分かってないだろ、お前」
「うん」
しっかり返事すな!!
「はぁ・・・。
つ〜か、会いたくないくせに、しっかりと歓迎の準備はしてるのな」
「来客にはおもてなし、これ基本でしょ?」
む、偉そうに。
なんかムカツク。
「それに会いたくないって訳じゃないんだよ?」
むむ・・・結構複雑な関係なのか??
(ピンポーン)
とか、玄関でそんな会話をしているうちに、再びインターホンが鳴った。
「こ、今度こそ」
この扉を開けた先に・・・・ニーナの兄が・・・・・。
「よし・・・開けるぞ」
「・・・うん」
(カチャ・・・)
俺がドアノブを捻るとそこには・・・・・。
「うぃ〜〜す。
知樹ぃ、今暇か?」
涼がそこにいた。
・・・・・・・・。
「・・・・どうした?」
「だから今暇?
夏休み・・・彼女もいないこの俺と・・・遊んではくれまいか!!!」
こっちがナーバスな状態なのに・・・何故コイツはハイテンションで泣きの演技を・・・。
「お前・・・昨日、爺ちゃんが倒れたって言ってたろうが(←前の回参照)」
「もう大丈夫だってよ、しばらく入院すればよくなるってさ」
「そうか、それは良かった。
お前、暇なら爺ちゃんの所行ってやれ、入院生活って凄い暇だから。
それが嫌なら街中でナンパでもしてろ、お前ならきっと上手くいくさ」
(バタンッ!!)
ドアが閉まる。
いや、訂正。
閉めた。
「・・・・・俺、何か悪い事したか?」
と一人考え込みながら、その場を立ち去る涼であった。
「ったく・・・・無駄に緊張させるなっての」
「リョウが可愛そうだったけど」
「いいんだよ、涼だから」
「あ、そうか、そうだよね〜」
涼への扱いが酷い?
そんなはずは無い。
『you got mail』―――――唐突に俺の携帯から聞こえてくるメールの着信音。
「誰だ??」
ディスプレイには涼の名が。
「涼からか・・・・・」
断られて早速メールって、普通に引き返せばいいものを・・・・何なんだ一体。
俺はメールの内容を確認する。
『今さ、道端でスゲーカッコイイ外国人とすれ違ったんだけど。
そいつ今、お前の家の前でウロチョロしてるぞ。
お前、海外から狙われるようなことしてんのか??』
「なぁ・・・ニーナ」
「なぁに?」
「お前の兄さん・・・そのリックってさ、スゲー格好良かったりする?」
「学生の頃は確か趣味でモデルとかやってたはずだけど。。。
どうだろ?格好いいのかな?家族だから実感ないな〜」
確定しました。
来ましたヨ。
だって、条件一致じゃん。
海外で趣味でモデルやってけるって・・・スタイルとかメチャクチャ良くてさ・・・格好良くない訳が無い!!!
ま、まてここは冷静に・・・・・涼に『気にするな』とメールを送っておこう。
問題はここからだ。
相手は現在、目的地がここであるかを確かめている所だろう。
ならば、どっちみち来るんだから、少しでも早くに誘導して好意を持たせるべきだ。
(ピンポーン・・・・)
インターホン・・・鳴っちゃった。
俺は三度ドアノブを捻る。
そして目の前にいたのは、スーツ姿に花束を持って、物凄くキラキラ光っている外国人だった。
そうだな・・・・例えるなら王子様みたいな人が凄い笑顔で立ってるって感じだ。
「こんにちは」
と、物凄い笑顔で言ってきたので、俺は戸惑いながらも「こ、こんにちは」と返した。
いや、イメージと全然違うぞ・・・もっと筋肉質でゴッツイ人が来るかと思ったのに・・・・。
まさかこんな王子様系とは・・・・。
こんな人と住んでて、ニーナはなんで俺なんかを追ってきたのか、不思議で仕方ないぞ。
「君がトモくんですね?」
満面の笑みで聞いてくる。
とりあえず、頷いとこう。
「なるほど、小さい頃、家に来たときと余り変わってないですね。
一目で分かりましたよ」
「は、はぁ、そうですか
なぜ敬語なのかは知らないが、いい人そうなので釣られて敬語を使ってしまう。
「あはは・・・トモったら何か変〜〜」
後ろでニーナが笑い出す。
何だよ、そんな不自然じゃないだろ。
「おぉ!!!」
急に叫びだすニーナのお兄さんことリック。
笑顔がまた一層明るくなった。
ど、どうした!?
「ニーナじゃないか!!
元気にしてたか〜」
そういいつつ、俺の後ろにいるニーナに抱きつく。
「心配したんだぞ・・・どう?ご飯は食べてる?風邪とかひいてない?」
「あはは・・・大丈夫・・・元気だから、そんな力入れなくても・・・」
「あぁ、ゴメン、ゴメン」
と、腕を解くリック。
因みに二人の会話は前編英語だ。
しかし、聞いたとおり何という妹馬鹿だ・・・ま、良いか俺への敵意は見られないし。
むしろニーナを制御してくれる点では、リックの暴走は捨てたものじゃないぞ。
ただ、気がついたところが一つ。
「・・・靴〜〜・・・脱いでくれないと困るんだけど・・・・」
「ん?・・・・あぁ、なるほど、失礼」
やっぱりこの二人血が繋がってるってことか。
とりあえず、リビングには俺とアメリカ人二人。。。
ここは何処だ?
俺の家は何時から国際化した?
「飲み物とか入れようか?」
「私は麦茶っ!!」
ニーナは夏に飲む麦茶が気に入ってしまい、毎日のように飲んでいるので即答。
「リックは何か?」
「ダージリンのヴィンテージ・マスカテルを」
「・・・・・・・・」
「無いのでしたら、ある物でいいですよ」
普通の家庭にはそんな名前の紅茶は置いてない・・・・・はずだ。
・・・そういや、ニーナの家庭って大富豪だったな。。。
そうか、だから本業じゃなくて、学生時代に趣味でモデルやってたのか、この人は。
俺は飲み物を机に置き、ソファーに座る。
向かいにはニーナとリック。
「・・・・・・」
何か話さねば。
「・・・リックはどんな仕事を?」
「普通のビジネスマンですよ。
こうやって世界を跳びまわるのが仕事です。
ただ、今日は仕事ではなくプライベートですが」
ニコニコと輝かしい笑顔でそう話すリック。
「リックってね、こう見えて物凄い頭いいの。
学生時代の成績は常にトップレベルでね。
よく教えてもらったっけ〜」
「へぇ・・・・」
頭いいのかぁ・・・人は見かけによらないな本当。
ま、学業しながらモデルなんて賢くなきゃ出来ないわな。
「ああ、ニーナ。
何でそんなに可愛いんだっ!!」
ガシッと隣のニーナに抱きつくリック。
「・・・これが、欠点なんだよね。。。
対処法は一応あるんだけど」
と、ニーナは困った顔をしながら小声で俺にそういう。
「ねぇ、リック」
微笑を浮かべながらリックに囁くニーナ。
「何?」
リックはニーナを見上げる。
「気持ち悪い」
見事と言うしか無い、爽やかな笑顔でそう言い放つ。
「!!!!!!」
リックはその場でゆっくり立ち上がった。
「どうした?」
「い・・・いや、少しお手洗いの方へ・・・」
そして、覚束ない様子でフラフラと歩き出した。
「おい、そっちは庭だぞ」
(バタッ!)
そのままあさっての方向へ歩き、ソファーから3m地点でそのまま倒れてしまった。
ピクリとも動かん、大丈夫か?
「ね?」
ニーナがこちらを向いてそう言い放つ。
その様子は兄のこの状態を全く気に掛けていない表情だった。
「ね、って・・・・大丈夫なのかよ」
「大丈夫、何回もやってるから」
「何回も?
で、引っかかってるのか?」
「うん」
「馬鹿だろ」
「うん、馬鹿」
・・・俺としては、涼以外の馬鹿キャラはもういらないんだけど。
「とりあえず、俺の部屋に運ぶか」
「やっさしぃ〜〜。
私もそんな風に扱って欲しいなぁ」
「昨日、十二分に付き合っただろ。
それに、ここで寝てもらわれると邪魔なだけだって」
後の事も怖いし。
「ふぅ」
俺は自分のベッドまでリックを運ぶと、自分の椅子に座って一息ついた。
「ッたく・・・厄介な兄妹・・・・」
ま、あんだけ大事にされてりゃ、仲が悪いよか幸せか。
「う・・ぅ・・・トモ君・・・ですか。
・・・ご迷惑をお掛けしました」
リックの意識が戻ったみたいだな。
「いや、それはいいんだけど。
調子の方は?」
「ええ、、、慣れてますからね」
だったらまず倒れないようにしろ、と心から言いたい。
「やっぱり、嫌われてるんですかね・・・・私は」
天井を悲しそうに見つめながら呟くリック。
ニーナ自身は冗談半分でやってるみたいだけど、本人は相当気にしてるみたいだな。
「・・・そこまで嫌ってないと思うけど」
「え?」
「だって、さっきニーナがリックの自慢話してる時とか、思い出を語ってる時。
凄い楽しそうだったからさ。
よほどいい生活をしてたんだなぁ、ってな」
「・・・だと、いいんですけど」
・・・・・。
「そこまでニーナを思ってるって、何か理由でもあるのか?」
「・・・・・」
「あ、いや、嫌なら話さなくてもいいんだけど・・・・」
「・・・・ニーナは、昔から友達が少なかったんです」
リックから出た言葉は、意外な内容だった。
「あの明るい性格のニーナが?」
初耳だぞそんな話。
「ええ、性格は問題ないとは思うんですけどね。
他の子と家庭環境が余りにも違いすぎてたんですよ」
「それは・・・裕福すぎるからって事か?
住んでる所もそうなら周りの子も余り変わらないはずだろ?」
「勿論、通わせていた学校には、家柄の面は相当の子ばかりでしたが、中でも格別だったんですよ。
周りの子が彼女を避ける、近寄ってきてもそれは会社と繋がりを持つ為の偽りの交流でしか無かったのです。
いつも一人で寂しく遊んでいる彼女を見てたら、せめて私だけでもと思いましてね」
「そうか・・・ニーナにそんな過去がな・・・」
「彼女がチアリーディング部にいた事はご存知で?」
「ああ、前に聞いた」
文化祭の時も大活躍だったな。
・・・派手すぎたような気もするけど。
「そのような寂しさを紛らわす為なんですよ。
周りと同じ条件で、同じ目標を持てば・・・・・こんな事は無くなると」
「なるほどな」
「でもですね、今度が彼女が周りを受け止めることが出来なかった。
過去の出来事から、周りの・・・家族以外の人間を信じることが出来なくなってしまった」
「でも、今まで俺の前で一度でも、そんな素振り見せてないぞ。
あくまで俺の主観から見て、だけど」
「えぇ、それは恐らく間違ってないでしょう。
それが彼女がここに来た理由なんですから」
「・・・どういう意味だ?」
「彼女は心の底からコミュニケーションをとれる人を探してました。
そしてある日、とある幼少期の頃の写真を見て彼女は思い出したんですよ。
昔、家に遊びに来たまるで家族や友人の様に自然に接してくれていた男の子の事を。
それが――――――
―――――アナタです」
そうか、それで・・・・・・ここに来たわけか。
「今日訪問したのも、気になって様子を見にきたからなのですがね・・・・正直、ニーナを見た時は驚きました。
以前の彼女の陰りと言う物は一切無くなっていましたので、これなら私も安心ですよ。
心からお礼を言います」
「いや、俺は何も―――――」
「まぁ、状況によっては、貴方を始末する事も考えましたがね、ハハハ」
「――――・・・・・・」
・・・・なんか一瞬この人の『陰』の部分が見えたような。
うん、気のせいだ、きっと。
「さて、私はもう大丈夫ですので、リビングに戻りましょうか。
何時までもお邪魔する訳にもいきませんので」
「いや、別に無理しなくても・・・」
「慣れてますから」
リックはスッと立ち上がる、が。
(ドタッ・・・)
「・・・お、可笑しいですね」
「やっぱり寝てた方が・・・・」
「いや、特別な感情抜きで家族として、なるべくニーナの近くにいたいんですよ。
サマーバケーション、と言っても私用で明日にも日本を発たねばならないですから」
と言って立ち上がろうとするリック。
明日・・・か。
のんびり屋かと思いきや、案外忙しい人なのかもな。
その合間を縫ってまでして妹に会いたいとは・・・。
家族だから・・・か。
「・・・肩」
「え?」
「肩貸すよ。
階段下りなきゃいけないし、フラフラじゃ危ないから」
「・・・ありがとうございます」
俺はリックを連れて一階へ降りると、ニーナはソファーでぐっすりと眠っていた。
「ったく、人を気絶させといて自分は昼寝かよ」
「・・・・幸せそうですね」
リックはまるで肩の荷が下りたように、微笑みながらそう言った。
「ここでいいか?」
「ええ、ありがとうございます」
リックはニーナの向かいのソファーに座る。
・・・・仕方ねぇな。
俺は二階から布団を取って来るとニーナの上に掛けてやった。
「どうも」
リックが俺に軽く頭を下げながら言う。
「いや、俺の独断でクーラー入れてる訳だし、風邪引くといけないからさ」
・・・・昨日まで風邪引いてたなんて事は、口が裂けてもいえない。
「さて、夕食でも作り始めるか」
「まだ夕方ですよ?」
「ニーナに今日はご馳走作ってくれって頼まれちゃってさ。
これ位から作り始めなきゃな、間に合わないからさ」
「ニーナが・・・・手伝いましょうか?」
「それじゃ歓迎になってないだろ。
俺のことはいいから、少しでも妹の傍に、だろ?」
・・・・フラフラしてるのが火器の近くにいたら危ないってのもある。
「・・・トモ君、君はきっと良い旦那さんになれますよ」
「は!?」
「いや、ニーナと結婚してくれと言ってるわけではありませんよ?
ただ、あなたをパートナーに持った女性は幸せそうだと思っただけです。
ささ、頑張ってください」
なんかこう・・・・・調子狂うな。。。
そんで持って夕飯時。
大富豪のお口に合う物か分からないが、テーブルの上には俺が作った料理がずらり。
「・・・・これ三人分ですか?」
ソファーから歩いてきたリックが、料理が置かれた料理を見て驚いた顔で言う。
「ああ、気合入れて作ったら作りすぎた」
我ながら凄い量だ。
家にある無駄に広いキッチンを最大限利用して作ったからな。
「・・・う〜ん、、、、あ、二人とも・・・おはよぅ・・・」
匂いに釣られたのか、ニーナが起き上がりながらそう言う。
朝じゃないだろ、今。
てか、俺が一生懸命料理してる間ずっと寝てたのか。。
「わっ・・・凄い量だねぇ・・・今日の朝ごはん」
寝ぼけてるな、コイツ。
「待て、今は朝じゃなくて夜だ。
それにこの量はお前が言ったからであってだな、俺の独断じゃないぞ」
「あれ・・・・あ、そうだった。。。
誰も2階から降りてこないから、暇になってゴロゴロしてたらそのまま寝ちゃったんだっけ」
猫か、お前は。
「・・・・ったく、しっかりしろよ、若いんだから」
「えへへ、、、兎に角、料理お疲れ様、ありがとね」
「別に、感謝されるほど頑張っちゃいねぇって。
さて、それじゃ冷めないうちに食っちまうぞ」
全部食えるとは思えないから、明日の朝飯か昼飯に持ち越しは確定だろうけど。
そういう事も考慮して生ものは少なめ。
そして。
「はぁ・・・食った食った」
あんだけ作っといて言うのもなんだけど、食いすぎた。
「親父くさいよ?そのセリフ」
「あぁ、何とでも言ってくれぃ。
今更、お前に何見られようが困らないからさ」
「ふふっ・・・見せてもらってない部分も沢山あるけどぉ?」
「何言ってんだ、お前は」
意味ありげな笑みを見せるな。
「・・・コホン・・・・それにしても、美味しかったですよ。
栄養配分も考えられてたみたいですし、これなら妹を任せても安心ですよ」
咳払いに妙な雰囲気を感じたが、俺は悪くないぞ。
「料理だけは一流なんだよね」
「・・・だけとは何だ、だけとは」
まぁでも、こんだけ褒められりゃ作ったかいもあったかな。
「あ、そうだ。
アレ忘れてた」
ニーナが近くにある家具の引き出しから何かを取り出す。
これは確か。。。
「朝のお届け物か?」
「うん」
そういや、リックに何か用意してたんだっけ。
「はい、コレ」
「???」
リックが箱を怪しげに見ている。
「早くっ、開けて、開けて」
リックは箱を手に取り丁寧に包装紙を取ると、箱をゆっくりと開けた。
「これは・・・・」
中にあったのは、2つのペンダントだ。
一つは赤でもう一つは深い青色をしている。
「赤い方は私ので、青いほうがリック。
でね、これロケットペンダントになってて・・・こうやって」
ニーナが赤いほうを手に取り、カチッとボタンを押す。
すると、中に入っていたのは一枚の写真。
そこには、ニーナとリックが二人、笑顔で写っていた。
「寂しくなったら、これ見て思い出してね」
「ニーナ・・・ありがとう、でも、もう僕の役目は終わったから・・・余り使う機会は多く無さそうだよ」
そういってリックはこちらをチラリと見て笑った。
「勝手に俺に厄介なのを、押し付けるなっての」
「あはは・・・・」
「はは・・・」
「何?どういうこと???」
俺達が笑っている中、ニーナは理解できずに一人首を傾げていた。
俺、兄弟いないから分からないけど、唯一分かる事は、何だかんだ言ってもやっぱり絆は強いってことだな。
上手くまとめたつもりだけど、兄騒動はこれにて一件落着。
騒動っつっても、俺が勝手に焦ってただけなんだけどな。
何か損した気分だ。
リックは次の日、朝早くに日本を発った。
勿論俺とニーナも見送りに着いていったが、リックの最後の言葉なんだったと思う?
『妹をよろしく頼みます』だって。。。
まぁ、、、、当然の言葉かもしれないけど。
その言葉に深い意味が無い事を祈ろうじゃないか。
今回はニーナが知樹の所に来た本当の理由が明らかになりました。
彼女も彼女なりに辛い事があったということですね。
知樹の友人ともやっていけるのも、『知樹の友人』という肩書きがあるからでしょう。
さて、夏休みもそろそろ終わりです。
次回をお楽しみに!