One summer night
ポンッと俺の目の前にボールが落ちる。
「あ〜もうっ!
知樹!もうちょっとちゃんとやりなさいよ」
「うるさいな。。。
ビーチバレー初めてなんだから仕方が無いだろ」
・・・とりあえずビーチバレーは俺と俊一と零奈の組と残りのメンバーの3人でやっている。
始まったは良いが、とりあえず砂に足を取られて動き難い。
このように零奈に怒られる始末だ。
ま、点数とかは気にせずにやってるから、真剣なムードじゃなくて楽しんでやってる感じだ。
「次、失敗したら罰ゲームだからね!!」
怒られている事は事実だが。。。
零奈ってこんな負けず嫌いだったっけか?
「罰ゲームって?」
「そうね・・・俊一、何か無い?」
「・・・・ならこの旅行中に俺の試作品を[食べて]もらおう」
「また何か作ったのかよ!?
しかも今度は飲食系か!?」
「大丈夫だ。
最悪でも死ぬだけだ」
「殺傷能力付き!?」
内側から破壊!?北○神拳か??
「知樹!!次は俺のサーブからだ!
罰ゲームは覚悟しておけ!」
くそ、、、涼の野朗。
実験台にされたからって、俺まで陥れるつもりかよ。。。
「おらっ!!」
くそっ、必ず取る!!
ボールのスピードは速いけど何とか取れるはずだ!!
「うおぉぉぉ!!!」
とど―――――かない?!
「な・・・!!」
(ボスッ)
き、急にボールが落ちやがった・・・。
「見たか!!知樹!!これが俺の日夜の努力の結晶だ!!
普段から、何を努力してんだよ。
「・・・ふふふ、面白い。
もう一度そのサーブ打ってみろ」
俺の後ろで俊一が微笑を浮かべて言った。
「ほう、、、ならお望みどおり打ってやろう」
涼は「勝手に海に浮かべ吹っ飛ばした恨み、晴らしてくれる!!」とか何とか言いながら、さっきと同じサーブを俊一に放つ。
「・・・・・」
俊一は無言で落下地点にもぐりこみレシーブ、そのまま相手陣地にボールを返した。
「!!!まさかっ・・・」
「どうした?
これだけか?」
「いや、まだまだ!!」
涼が更にサーブを打ち込むと今度はそれを足で蹴って返した。
「くそっ・・・まだだ!!」
「ふっ・・・・」
「ねぇ知樹。
あの二人多分、あの状況がまだまだ続くと思うんだけど部屋に戻らない?」
ふむ、零奈の言うとおり多分続くだろうな。
涼が打つ限り、俊一は返すだろうから。
「だな。
向こうも涼以外は部屋に戻りたそうだし先帰るか」
零奈はコクリと頷くと、ジェスチャーで、向こう側のコートにいる聖奈さんとニーナを呼び出し、更衣室へ向った。
「うおらっ!!!!」
「ふっ・・・」
うお・・・すげ、かかとで返したぞ。
「まだだ!!」
涼・・・いい加減諦めろ、隕石か小惑星でも落とさない限り、全部返すぞあの馬鹿は。
・・・って、言ってもどうせムダだから俺も着替えてこよう。
時間は進んで夕食時。
「まさか、全て返されるとはなぁ」
結局アレから二人が部屋に戻ってきたのは30分後だった。
案の定、涼は全て返されたみたいで、ショックが隠せない様子。
「おい、涼、あんまり気にすんな」
「・・・そうだ。
単なる遊びだろう?気にする事は無い」
珍しく俊一がフォローを入れるぐらいに、負のオーラで満ちていた。
「そうは言うけどな、俺の必殺サーブをことごとく返したのお前だろ?
最後なんか何処で返したか分かるか、知樹?」
「いや、俊一には無限の可能性があるから想像できねぇ」
「言ってやれ俊一」
「・・・後頭部」
『・・・・・・・』
一同、唖然。
そりゃ凄いわ。
てか、どうやるんだよ。
是非とも、○ou t○beか○コニ○動画にアップして貰いたい、絶対見るから。
「トモも私の愛のサーブを華麗に返してくれたら良いのにね」
「・・・・・早すぎて全てサービスエースだって事は確かだ」
「じゃあ、もっと遅くする!!」
「ああ、そうしてくれ。
それでも返せないと思うけど」
「もう・・・」
あいも変わらず他人がきいたら、頭可笑しな奴らと思われる事間違いなしな会話だ。
俺とニーナのやり取りが終わったと同時に、零奈は聖奈さんにいった。
「聖奈さん、俊一って小さい時からこんな感じだったんですか?」
・・・確かに、それは結構気になる。
「俺達、小学校からの付き合いだからな。
少なくとも小学生のときから性格は変わってないのは確かだよな」
「・・・こんな小学生いるんだな」
涼は俊一を指差していった。
「確かにね、家の弟は昔からこんな感じだったわね。
実を言うと、私も小学生くらいの事しか覚えてないから、これ以上は話せないけど」
ま、そうか。
俺だって幼少の頃の事なんてほとんど覚えてないからな。
ま、そんなこんなで俺達は部屋に戻った後も思い出話なんかを集まって語り合い、夜が更けてきたので決めておいた部屋に分かれて寝る事となった。
一日目は、俺は俊一とニーナと同じ部屋だっけか。
カチッ、と部屋の電気を消す。
「おやすみ〜〜〜〜」
ニーナはどうも眠たかったらしく、速攻で床については「スゥ・・・スゥ・・・・」とすぐに寝てしまった。
因みにベッドの並び順は俊一、俺、ニーナの並び順だ。
真っ暗で何も見えず、ただ部屋の冷房の静かな音のみが聞こえる。
いや、良く耳を澄ませば、海の波の音もかすかに聞こえる。
・・・寝れん。
カウントしてた訳じゃ無いが、5分余り、この空間で寝ようと試みているものの、どうも眠つけない。
さっきまでワイワイ騒いでた訳だし、若干気分が高まっていて寝付けないってのもよくある話だ。
幼稚園や保育園じゃ「お昼寝」っていう平和な時間があったけど、それが自由時間の後とかにくるとさ、全然寝れないわけ。
だって、さっきまで友達と外で走り回ってたのに、いきなり「ハイ寝なさい」はあんまりだと今更思う。
小さい時の頃はよく覚えてないって言ってたけど、「お昼寝」は俺が一番嫌いだった時間だって事は良く覚えてる。
・・・・俊一は起きてるだろうか。
「・・・なぁ、俊一」
「・・・・・・・」
返事は無い。
二人とも寝るの早いだろ。
このポツーンと取り残される感じが嫌だったなぁ、とまた幼少時代を思い出した。
・・・すこし風邪に当たってこよう。
俺は部屋の二人に感づかれないようコッソリと部屋を抜け出し、ホテルの外に出た。
「ふぅ〜」
冷房の聞いた部屋の中と比べれば、少し蒸し暑い気もするが、潮風は何故か気持ちがいい。
月の光に照らされ海だけでなく砂浜もキラキラと光っているように見える。
海は昼見せていた明るい風景とは別の、もう一つの顔を見せていた。
ホテルから海岸線の道路沿いを少し歩くと、ベンチを発見した。
俺はそれに腰を掛け、しばらくボーっと何時も見る海とは違う姿の海を見ていた。
どれ位時間が経ったか分からないが、後ろから足音が近づいてきた。
俺が振り向こうとした瞬間、ぽん、と肩を叩かれる。
「何してるの?」
そこには零奈がいた。
「寝付けなくてさ。
さっきまで騒いでたってのに、いきなり寝るとか俺には無理。
零奈は?」
俺は海に再び視線を戻しそう言った。
笑って、零奈は俺の隣に腰掛けた。
「はははっ、私も同じ」
それで会話は途切れてしまったが、俺は海を見続けた。
海を見続ける俺が気になるのか、零奈の視線を痛いほどに感じる。
「何だ、俺の顔に何かついてるか?」
「別に、何でそんなに真剣に海見てんのかなぁって」
「何でって、、、難しい表現は俺には無理だけど、なんつ〜か・・・神秘的なんだよな。
昼の明るい海のイメージと違ってさ。
昼の海は飾られている感じがしてっけど、夜の海は本当に自然の『海』って言う感じがしてさ。
こんな姿もあるのかって関心してた」
「・・・・言われて見ればそうかもね・・・・」
「ただそんだけのこと
さ、そろそろ帰るか。
一人の時間も邪魔されちまったし」
「悪かったわね」
「ははっ!冗談冗談!!
よし、ただ来た道戻るだけじゃ面白くないから、砂浜を歩いて戻るか」
俺達は二人で砂浜に降りて、並んで歩くことにした。
「本当の姿・・・かぁ」
零奈俺の横で唐突に言った言葉は、俺がさっき言った言葉の一部だった。
「それが、どうかしたか?」
「自分に正直になる事ってやっぱり大切なのかな」
・・・何が言いたいかさっぱりな訳だが。
「あ、ああ、大切だと思うぞ、多分!」
「いつも、馬鹿正直なアンタが言っても説得力全然無い!」
笑いながら零奈は俺の背中を叩いた。
あ、なるほど。
「ツンデレ卒業か?」
「・・・」
(バシィ)
「いっ!!・・・・たくない?」
痛くない、珍しく手加減でもしてくれたんだろうか。
「・・・バカ・・・」
暗くてよく見えなかったけど、多分俺の頭を何時もより弱い力で叩いた零奈の顔は、、、笑っていた様だった。
その後、部屋に戻ると、俺は時計を目にする。
その時刻午前一時半。
明日起きれるのか?と自分に問いただしつつ、ベッドの中にはいると、俺は人の事を言えない程の速度で眠りについてしまったのであった。
恐らく・・・ですが、零奈のファンが増えたかもですね。(笑)
結構、意味深な言葉も言ってましたし、これからどうなるのか、乞うご期待。