第三話 ファーストコンタクト
お久しぶりです、柊奏です。
だいぶ間が空いてしまいましたができたので投稿します。
side 名無し
何だこの広い森は?
もうかれこれ1時間近く歩いているが出れないぞ。
まさかぐるぐる回っているんじゃないだろうな?
それにしても不思議な森だなここは。
葉が生い茂っていて空が見えていないのに明るくて足もともよく見える。
おかげで多少走っても転ばないからありがたいな。
それにさんざん歩いているが動物をほとんど見ないな。
さっきも果物を見かけて食べたいな、と思ってたらちょうど手の中に落ちてきたがラッキーだったな。
美味かったし。
そんな果物が成っている木を何度も見たから、ここはとても豊かな森だろうと思うのだが・・・
せめて栗鼠みたいな小動物と出会いたい。木ばかりは飽きる!
「いい加減にこの森から出たいところだな・・・。」
まあ、やみくもに歩いているだけでは出ることは難しいだろうな。
果物とかたくさんあるし餓死とかはないだろうが飽きそうだ。
そんな時前方の茂みからがさがさと物音が聞こえてきた。
ようやくこの果てなき行軍に終わりが見えたか・・・
近づいてみると一人の少女がしゃがんで何かをしているのが見えた。
「む、誰だ!?」
すごいはねた。兎のように。
その勢いのままこちらに振り向く少女。
若干見上げている形になっているので俺よりも背は高い。
肩辺りで切りそろえた栗色の髪とそこそこ整っている容姿。
落ち着いた色のワンピースを着ていて、背中には本人が入れそうな籠。
よくいる明るい村娘のような雰囲気だ。
そんな少女の琥珀色の瞳が驚愕に見開かれていたが、
次第に安堵の表情に変わっていった。
「あぁ、よかった。ただの人か。」
何だと思ったのだ?
side イリカ
あぁ、すごくびっくりした。
何か後ろから来るんじゃないかと思っていたときに、ちょうどよく声をかけてくるんだもの。
振り向いたとき、いたのがいかつい人だったら絶対叫んでたかも。
でもそこにいたのは、私よりもちょっと背が低くて黒髪を腰ぐらいまで伸ばしてる男の子。
大きめの黒いコートのようなものを羽織っていて、
その下には変な模様のついたシャツとズボンを着ている。
とても高そうな素材でできてそうだったからここが森だと考えると、
ちょっと首を傾げたくなる姿だった。
「で、なんでキミはこんなところにいるの?」
まだちょっと動悸が収まってないけど聞いておかないとね。
正直こんな森に一人でいるなんて怪しすぎるもん。
・・・私もか。
「それは俺こそ知りたいところだな。」
「どういうこと?」
「目を覚ましたら既に森の中だったのだ。」
彼は本当に訳が分からないという表情で私を見てくる。
とりあえずいろいろ聞いてみよう。
「・・・いろいろ聞きたいこともあるけど、まずは自己紹介からしましょうか。
私はイリカ、フラン村で薬師をやってるの。キミは?」
「わからん。」
「・・・へ?」
「わからんのだ。どうやら記憶喪失というやつらしい。
名前すら思い出せん。」
そっかぁ、記憶喪失かぁ。
・・・どうしよう。面倒そうだからってこのまま、はいさよならってわけにもいかないし。
ここは乗り掛かった船ということもあるし記憶戻るまで一緒にいたほうがいいかな。
「だったらしばらくうちにきてよ。いろいろ手伝ってほしいこととかあるし、
何がきっかけで記憶が戻るかもわからないし。」
最近近くに薬草がなくなってきたから栽培でもしようかなって思ってたからちょうどいいや。
これなら私も助かるし彼も助かるしで、いいことづくめだよね!
普段ならこんな提案なんかしないけど本気で困ってるみたいだし、困ってる人は助けなきゃね!
・・・ここで別れたらまた一人になっちゃうからヤダとか考えてないヨ。
「オレとしてはありがたいが本当にいいのか?
自分で言うのもなんだがかなり怪しい人物だと思うぞ?」
「いいのいいの!困った時はお互い様でしょ。
その代わりいろいろ手伝ってよね。」
「了解した。微力を尽くそう。」
やった!労働力ゲット!村のみんなに頼むのも悪いから一人でやろうと思ってたけど、
いい拾い物したね!
戻ったら早速彼に手伝ってもらおう。
「そうだ、いつまでも"きみ"じゃあれだからなんて呼ぼうか?何かリクエストある?」
「とくにないな。ジョン・スミスでもジョン・ドゥでもイリカの好きに呼んだらいい。」
「じゃあねぇ・・・、ネイって呼ぶね。」
「"ネイ"かいい名だ。ところでその名に何か由来とかはあるのか?」
「えっ・・・・・・、特にないよ。」
「・・・その間が気になるが、まあいい。」
アハハ・・・、昔飼ってた闇鴉なんて言えないよ・・・。
餌あげたらなついちゃったんだよね。可愛がり過ぎたら逃げちゃったけど。
元気にしてるかなぁ。
「とりあえず、これからよろしく頼む。イリカ。」
「うん、よろしくね。ネイ。」
うん、これから楽しくなりそう。
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「ところで、この森を出るにはどうしたらよいのだ?」
「・・・あ。」
一時間さまよったら何とか出れました。
前回までの3倍の量になりました。
更新は遅いですが最後まで続けられるように頑張ります。
ちなみに闇鴉は魔獣です。
普段は群れで生活し、光りものを好みます。
闇鴉のネイは怪我をしていて群れからはぐれたようです。
行商人の天敵です。