第二章_善人スコアなんてクソ喰らえ
気がついたら、中島は気絶させられ、周りを見渡すと尋問部屋のようなところにいた。
「ここは・・・・・・どこだ?」
中島がそう言うと黒いスーツに紺のネクタイを付けた警察と思わしき人に尋問される。
「そんなことはいい。それよりも君は重大なことを犯した」
中島はこの言葉を聞いても全く状況がわかっていない。
「私は何もやっていません。それに何をしたって言うんですか?」
警察は深くため息をついて、こう問いただす。
「君がやったことは二つ。『ある男性に対して、強く当たったこと』、『俺はやっていないと否定してしまったこと』以上だ。」
中島は納得が全くいかない様子を見せる。
「強くあたってしまったことはわかります・・・・・・でも、あの時は気が動転していてつい否定してしまっただけなんです!」
警察は今までの状況をまとめた。
「でもこれはもう国の決まりなんだから正直諦めなさい。今ので善人ポイントが3点満点中君は2.8点で、体当たりしたのが-1点、謝らなかったのが-1点だから・・・・・・『0.8点』になった」
中島は動揺する。
「私はこれからどうなってしまうんですか?」
警察は冷静に答える。
「そうだな。君は『要悪人』として烙印を押されることになる。一度烙印を押された者はもう取り消しできない。次もやる恐れがあるからな」
「だ、大学はどうなるんですか!?」
「退学になるかもな。善人で社会が動いている今は、大学という大きな研究機関として働いているため、その汚名をつけられたくないから一刻も外すだろうな」
中島は頭の中が真っ白になった。
「そ、そんな」
―数時間後―
中島は釈放されたが、強い違和感に襲われた。
「(体が当たってしまっただけで、要悪人なんてこの世の中どうなってるんだ・・・・・・そもそも、あちらから強く当たって来たんじゃないか・・・・・・)」
―数日後―
(昼間の大学のキャンパス内)
要悪人に中島がなったことが学校中で噂になっていた。
「あいつ要悪人になったんだって・・・・・・」
「何したんだよ・・・・・・」
「俺も要悪人になるかも」
「でもあいつ、わざとじゃないって噂もあるらしいぞ」
「マジ?でも、前からあいつ変わり者だったじゃん」
中島はいつもの席に座る。
しかし、いつも居た山田がいない。
すると、ある噂が飛び込んできた。
「山田ってやつ、中島ってやつに罪をなすりつけたって噂もあるらしいよ」
中島をその噂を聞いて現実が受け止められなかった。
「(嘘だ、そんなことするやつじゃない)」
―数時間後―
授業が終わり、教員から呼び出される。
教員は重い表情でこう言う。
「中島君、今日から退学ね。わかってくれ、これも国の制度なんだ。それに偏差値が低い大学なら要悪人でも入れる。そこだったら君の力を発揮できるだろう」
中島は分かったかのように素直に認める。
「そうですか・・・・・・今までお世話になりました」
中島はいつも通り、家に帰るところだった。
河川敷に着くとそこに突然、山田と思わしき人物が目の前に現れた。
「おい!山田、今日授業来なかったらしいけどなんか調子悪かったのか?」
すると山田は衝撃な言葉を放つ。
「俺はお前が前から嫌いだった」
「え?」
そのことが受け止められない中島は困惑する。
「そんな冗談通用するかよ。それにあんな噂全然信じてないぜ」
真顔で山田は目線を合わせて言う。
「あれは噂なんかじゃない本当だ。お前はいつも、善人ぶりやがって。それにお前の話に毎日合わせるのが苦痛で仕方がない。お前の善人ポイントがほぼ最高に達していることは知っているんだぞ。それに対して、俺の善行は行ってもギリギリの善人ポイント。何が違うっていうんだ」
今までの怒りを彼から受け、中島は強いショックを受け、黙ってしまう。
「じゃあな、中島。せいぜい社会的に死んで苦しんでいろ」
「ちょっと待ってくれ!」
山田は黙ってその場を立ち去ってしまいそうになるが、ここで中島は手を引っ張り止める。
「善人ポイントなんてAIが作った飾りだ!お前の善意も誰かしら覚えてくれているって!」
山田は悲しげにこう答える。
「そんなわけない」
「ど、どうしてそう思うんだ!?」
「今までの友達も善人ポイントに入らなくて悪人に落ちて自殺してしまった・・・・・・」
すると突然こう中島は提案する。
「そうか、じゃあ『この社会システムを一緒にぶっ壊そう』・・・・・・」
山田はその一言に困惑する。
「は? 一体何を言っているんだ? できるわけないだろ!」
中島はこう答える。
「突拍子もなく言った訳じゃない。前から思っていたことだ、善人スコアなんかなくても善人いるって」
「中島・・・・・・お前・・・・・・」
中島は大声でこう叫ぶ。
「『善人スコアなんてクソ喰らえ』だ!」
「中島・・・・・・俺が悪かった。許してくれ」
中島は山田の手をギュッと握る。
「いいってことよ」
すると、数日前にわざとぶつかって来た黒い影が後ろから近づいてくる。
「いい証拠ゲットー・・・・・・これで二人共犯だな」
「お前は・・・・・・!この間のスーツ男!」
振り向くとスーツ男だった。
「もう言い逃れはできないぜぇ・・・・・・もうライブ中継されている」
中島は吹っ切れたようにこう返す。
「ふっ、だからどうした。逆にカメラ越しにこう言ってやるよ。見てる奴らもよく聞いておけ・・・・・・」
中島はカメラ越しに指を刺してこう言う。
「この社会は善と悪だけでは判別できないものがある・・・・・・時代、文化、歴史その時代によって変わって来た。でも裁く奴らって結局本当に正義だったのか?」
スーツの男は正論を言ったかのように返す。
「みんなが正しいって言えば正しいんだよ!」
「それが間違っていることもあるつってんだよ!間抜け!」
「いいか!よく聞け!結局、何も考えない多数派によって正義は決まっちまうこともあるんだ!だからこそ、自分が信じる善とやらを自ら突き進む必要がある!」
スーツの男が皮肉っぽく笑いながら返す。
「それが間違っていたら?何も意味ねぇじゃねぇか」
「だから、『公正』というものがある!」
「俺からは以上だ!国家反逆罪だろうがかかって来やがれ!」
つづく




