第一章_善人とは
21XX年。
人々は性格をスコア化されていた。
もはや、生まれつき聖人がいるかのように・・・・・・
人々は生まれてからすぐに善人か悪人かの評価を高性能な汎用型AI搭載のスーパーコンピュータによって評価され、善人だと評価された者は高い地位や職、自由な権利を得ることができるが、悪人だと評価された者は低い地位を与えられ、職すらもろくに無く、過去の奴隷制度を彷彿とさせるような権利しか与えられない。
これは善人と悪人が誰かの正義に左右されないようになるための話である。
(新宿の駅前)
そこは2000年代と全く変わらない光景が広がっているものの、何かがおかしい様子である。
ポスターには悪人リストと呼ばれるものが貼られ、顔や名前、性別、好きな食べ物、趣味嗜好など、プライベートなことまで載せられてしまっている。
それを見たある男はこう言った。
「悪人リストか、本当に悪い人なのか会ってみたい」
橙色の毛色、カールした毛質、180cmほどの身長、白いパーカーにデニムのジーンズ。
そう、この男こそが今回の主人公である。
彼の名前は中島孝一。
彼は大学の帰りにこのポスターを見かけたのだった。
――数時間前――
「本日の講義では、この社会がどうして『善人と悪人がシステムによって分けられるようになったのか』を語っていきたいと思います」
教授がそう言った後、モニターにテキストが表示される。
「まず、前提として悪人と善人をこれだと説明できる人はいますか」
他の生徒が次々と挙手を挙げ、答える。
「悪人は犯罪をする人?」
「善人は優しい心を持つ人?」
「いい人は卑怯な手を使わない人?」
教授はニコッと笑いながらこう答える。
「いいですね、全員合っています。正解を言うと、答えはないのです。だからこそ、過去の歴史をたどると戦争などの争いがあるのです。インターネットという魔法が登場してからそれらは特に拡大しました。そのため、国は『善人スコア』というのをつけることになりました。」
そこで中島はこう質問する。
「質問です。もし、善人かどうかをスコア化されたとしても、その定義そのものが間違っているということはないのでしょうか?」
教授は真剣な顔でこのように答える。
「その通りです。今はスコアを判別する汎用型AIが人間よりも倫理を守るという研究結果が現れました。ですが、一応コンピュータのバグが発生するのを想定して人間もついています」
他の人も続けて質問をする。
「悪人リストに入ってしまうと、どうなってしまうのでしょうか」
教授はこう答える。
「大抵の人は国家反逆罪や殺人などをしない限り、すぐには悪人リストには入りません。ですが、簡単な積み重ねで悪人になる可能性もあるので注意が必要です。あなたたちは、生まれついて善人というカードを手に入れました。そのため、そのカードを無駄にしないでください」
――数時間後――
「今回の講義はここまでです。ご静聴ありがとうございました」
中島は背後から肩をポンポンと叩かれる。
「よっ、孝一。」
中島は嬉しそうに振り向く。
「何だよ。山田」
彼の名前は山田蒼。
中島と同じ大学2年生だ。
彼は中島の同級生で唯一の理解者だ。
「今から、カラオケ行かない?」
中島はこう答える。
「悪い、この後バイトなんだ。また今度でいい?」
山田は残念そうな顔をする。
「そっかー、じゃあまた今度なー」
――今に至る――
中島はバイト先のコンビニへ歩きながら向かった。
(無人コンビニ)
今のコンビニはほぼ無人の状態であるが、念の為数時間に一回店員が定期的に商品のチェックや高齢者を口頭でサポートする必要があるのだ。
すると、高齢者の女性が来店してきた。
「いらっしゃいませー、何かお困りごとはありますか?」
中島はいつも通り軽めの挨拶をする。
「このレジ、現金はもう使えないのかしら?」
今の時代、数十年前のキャッシュレス化が加速したことによって現金は貴重品でかつ、持ち歩く人はほとんど高齢者のみとなった。また、現金を扱う場合はQRコード化したレシートを使う必要があるのだ。
「お客様、現金を扱う場合はATMを使用して、QRコードのレシートを提示してください」
「もう、めんどうくさい時代になったものね」
中島は会計の金額を言った。
「1200円になります」
女性はQRコードのレシートを提示する。
「『善人ポイント』はお付けしますでしょうか?」
善人ポイントとは、何かしら良いことをするとポイントが%加算され、それらを買い物や税金を払う際に活用することができる。しかし、犯罪やネットでの炎上、相手から強い不快と感じたことをすると善人ポイントが減る仕組みとなっている。またこのポイントは良いことの度合いによって付与されるポイントが違う。
「はい、お願いします」
今回の場合、女性が敬語を使って相手にお願いをしたので、0.1%の付与がかかる。
「昔、やっていた電子決済と違ってすぐにポイントがすぐに溜まっていいわね」
申し訳なさそうに女性は謝る。
「ごめんね、こんな婆様に付き合わせてしまって」
「いえいえ、これが仕事なので・・・・・・」
――バイトが終わった後――
中島は背伸びをし、リラックスする。
(ふー、今日もバイト疲れたな。久しぶりに何か美味いものでも食べたいな)
中島は夜道を歩いていると、スーツの男性らしき人に当たってしまう。
「痛てぇ・・・・・・」
男性がそう言うと、すかさず中島が謝る。
「すみません!大丈夫ですか?」
しかし、男性はわざと痛がった様子でこう言う。
「・・・・・・おい!今のわざと体当たりしただろ!」
「・・・・・・え?違います!」
彼は顔をにやけながらこう言う。
「お前、善人ポイントが今のですごい減ったな」
中島はこの場を立ち去ろうとするも手を捕まられる
「録画もしている。もう逃げられないぞ」
男性は大声でこう叫んだ。
「おーい!ここに当たり屋がいるぞ!」
中島は手を振り払い、その場から逃げた。
(夜の高架下)
気づくと、中島は警察に囲まれていた。
そう、もう中島は善人ではなく悪人という名称になったのだ。
「本当に俺はやっていない!」
そう中島は言っても今更いうことを聞いてくれない。
すると一人の警察がこう答える。
「そうやって悪人はみんな言い訳するんだ。堪忍しろ」
つづく




