どちらも自分だよ!
1話が短かったり、長かったりするので安定させたい
――――ミディは夢を見ていた。
夢の中では、前世の山田太郎が大学を卒業して、就職活動を繰り返していた。
元々、対人関係が苦手で会話選びなど出来ず、話が続かない。
それでも、就職の意欲はあった。
5社目を落とされても、今の世の中「当たり前」と自分に言い聞かせ、次の求人募集に突撃を繰り返す。
20社辺りで徐々に、疲れが見え始め、50社を超えてからは心を無にしていた。
もう何社目かわからない位、お祈りメールをもらった時、心が折れた。
そこからは、フリーターで生活を維持していたが、それも無くなり、実家でニート生活を送ることになった。
ミディの心も徐々に曇り始めたが、踏ん張り太郎に叫んだ。
「私、聞いて!やっと内定もらえたよ!」
太郎の虚無な瞳がミディを見つめる。
「二回目の人生で、やっと就職できるんだよ!」
太郎とミディ、二人で一つの、様々な感情が揺れ動く。
「だから……、一緒に頑張ろう!」
ミディの差し出した手を、太郎が恐る恐る握りしめた。
太郎の身体が光り始めて、ミディに取り込まれていく。
やがて、夢の中はミディのみとなった。
カチリと音がして、心の中の枷が外れた気がした。―――
……辛い夢を見た。
でも、最後は笑っていた気がする。
ミディは、曖昧な夢での出来事に、少し涙を流しながら起き上がった。
常にある心の不安が、少し軽くなっている事にミディは気付いた。
そのことが、ちょっとだけ嬉しく、表情筋が少し動き僅かに微笑んだようにみえた。
「さて、明日に向けて色々備えますか」
ソニアから、許可を貰い、簡易版の調合器具を室内に設置した。
魔法は落ちこぼれだったミディだが、調合はそれなりに扱える。
(こんなことが出来るのも、全部師匠のお陰です)
傷薬、毒消し、魔力回復材を一日かけて作成する予定だ。
材料は、大森林と道中で採取した素材が豊富にある。
師匠から授かった、小さなマジックバッグに素材は全て入ってる。
火を使えないので、湿布系や丸薬、粉末にした各種回復材の作成をしていく。
(ある意味初めてだけど、よかった、身体が覚えてる)
薬研で素材をゴリゴリとすり潰しながら、当面の目標を考えていた。
(まず、絶対条件は1年は傭兵家業を続けることだね、キャリアに傷が付いちゃう)
(その後は、高度の柔軟性うんたらかんたら……臨機応変に対応していこう)
夕方まで、ミディは薬を作り続けた。
師匠直伝の時間短縮術、丸薬の乾燥時間を魔力で早める技を使い、1日で仕上げていく。
作り過ぎた薬は、ソニアに渡そうと思い、一階の店に降りて来た。
丁度客も居なく、ソニアは店じまいの準備を始めていた。
「ソニアさん、傷薬と魔力回復の丸薬を作りました。店に卸しますので売っちゃってください」
「おや、良いのかい、いくらだい?」
「いえ、居候のような身なので、お礼として受け取ってください」
ため息をつきながら、ソニアは真剣な顔で注意をしてきた。
「ミディちゃん、それは駄目だよ。お金関係はしっかりしないと、人間関係にも影響出るからね」
「それに、私も商売人だ。値切って購入したのなら良いけど、タダで貰ったら、商人失格になっちまうよ」
(あ、またやっちゃった……)
ミディの顔が蒼ざめ、涙を浮かべる。
「ご、ごめんなさい!いつもいつも良くしてくれているのに、何もお礼できないから私……本当にごめんなさい!」
「いいんだよ、判ってくれたなら。ホラ!そんな顔しちゃだめだよ、こっちいらっしゃい」
ソニアママに優しく抱きしめられ、ざわつく心が落ち着いていく。
(あぁぁぁぁぁ、腰まで沼に浸かってる気がするぅぅぅ)
このポンコツはもうダメかもしれない。
ミディの徒然日記
〇月&日
前世の自分と、少し分かり合えた気がした。
始めは、なんで前世の記憶を引き継いでしまったのだろう?って後悔してた。
その記憶が、私の性格に大きな「デバフを掛けてるだけの存在」としか見てなかった。
完全な記憶で無く、曖昧になっているのは、神様のお情けでは?とも邪推した。
でも、今日ちょっと分かり合えた気がしたことで、前世も今も私なんだって思えたから「このままでも良いかな?」って思っちゃった。
デバフなのはデバフだけどね!
後、ソニアママに叱られた!
その後慰められた、沼が深いよ!




