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リザルト:死者0人、子供二人以上

戦いは、ヤマアラシの追撃が終わったことで、終結した。

アレンもやっと一息つくことができた。

「ふう、何とか生き残れたな。……それよりミディはどこに行ったんだ?」

物見台には、先ほどまでいたミディが見当たらない。

もしかして、倒れたのか?と思い向かおうとした矢先に、ヤマアラシの団員から声が掛かる。


「アレン殿、久しぶりだな」

アレンに声をかけてくる、四十代くらいの男がいた。

声の主は、傭兵団「ヤマアラシ」の団長ギリーであった。

ギリーは本隊を副団長に任せ、自らが先発隊を率いて来たのだ。

「ギリー殿!お久しぶりです、救援感謝します。」

互いに挨拶をして、がっちりと握手をした。

「よく持ちこたえてくれたな!お陰で、村の崩壊は免れたぞ」

「これも、救援が間に合ったからですよ。助かりました」

互いを称えながら、ケントも交えて、簡単な現状の共有をしていく。

「ふむ、大体わかった。こちらの本隊も、もうすぐ到着する。復旧はその後からだな」

「わかりました、こちらは少し休ませて貰います。正式な引き継ぎは、また後で」

「おう、お疲れさん、後のことは任せな!」


アレンは、礼をしてその場を去る。

ケントも村人に、移住者の受け入れ体制の指示を出すため離れていく。


残されたギリーたちは、誰もいない物見台を見つめている。

「……団長、先ほどのこと聞かなくてよかったのですか?」

団員の疑問にギリーは、笑いながら答え、目を細める。

「今ここで聞いてもはぐらかされるだけだろ、後でこっそり聞くわ」

(まぁ、アレはどうみても「光の翼」だよなぁ……暫くは、騒がしくなりそうだな)


未だに、ミディは物見台でうずくまっていた。

(あぁぁぁ……身体しんどい!誰か来てぇ……)

ミディの願いはすぐに叶えられた。

「ミディ……」

地の底から響くような声に振り返ると、はしごから顔だけ出し、半眼で見つめるモニカがいた。

「ひぇ……」

あまりの怖さに、漏らしそうになる。


登り終えたモニカは、ボロボロなミディの姿をみて泣きそうになる。

「ミディ、無事か?」

クラウスも到着した。

「クラウス、ミディを背負って救護所へ運んでちょうだい」

「……」

クラウスは難しい顔をしてためらっている。

「どうしたの、クラウス?」

モニカはそんなクラウスをいぶかしむ。


クラウスは、ためらいがちに、ミディに問う。

「ミディ、俺が触っても大丈夫か?男が怖くないか?」

その言葉にモニカは、頭を殴られたような衝撃を受けた。

確かに、ミディが倒れた原因を考えれば、その心配は当然の事だった。

その考えに至らなかった自分を責めながらも、心配そうに尋ねる。

「ミディ、ごめんなさい。もし辛いなら私が運ぶから……」


(……何かすごい誤解が生まれている気がする。これは選択を誤っちゃダメなやつだ!)

「全然?大丈夫だし、気にしてないよ!」

身体は動かないが、声だけは元気だ。

そんなミディを、二人は痛々しそうに見ていた。

(誤解が……解けてない!くっそぉ、もう一発かましてやるしかない!)

「クラウス考えすぎだよ、トロルと戦って疲れてるでしょ?大丈夫?私のおっぱい揉む?」

沈黙が辺りを支配する。


「……すまないモニカ、俺の考えすぎだったようだ」

苦虫をつぶしたような顔でミディを見つめるクラウス。

「……ええ、私もそう思ってたところよ、ちょっとお話したいことも増えたから、救護所までよろしくね」

モニカは、能面のような表情で、ミディを見つめながらクラウスに伝える。


クラウスはミディを抱きかかえたが、すぐに異常に気付いた。

「モニカ急ぐぞ、すごい熱だ」

ミディの身体が燃えるように熱いのだ、モニカにそれを伝え急がせる。

モニカも慌てて、ミディのおでこに手を当て、その熱さに目を見開く。

「もう、やっぱり無茶しかないじゃない!クラウスお願いね!」

救護所に連行されるミディであった。


ベッドに押し込められたミディを横目に、団員が救護所に集まる。

「助かったよ!アホの子」

「頑張ったな!アホの子」

口々にミディを褒め、罵る。

そして、最後のミディの翼についての話になる。

「ミディ、あの翼はなんだったんだ?」

「翼?なにそれ?」

アレンが問いかけるが、ミディは翼を出したことすら知らなかった。

驚いた一同は、その時の状況をミディに説明した。

(は?魔力が背中から放出されたら、翼になったってこと?……よかった、お尻から出なくて本当に良かった!!!)

ミディは、一人納得して安堵する。

クラウスは皆の会話には口を挟まず、無言でミディを見つめていた。

(ミディが、本当に「光の翼」をだしたのなら、やはりアイリス様の……)


「ここは救護所なの!騒がしくするなら出て行け!」

騒ぎすぎたことに、モニカがキレる。

アレンとクラウス以外は追い出され、静かになる。


「おう、邪魔するぜ」

救護所に、ギリーが現れる。

「……ギリー殿、何か御用で?」

アレンは、若干警戒しながら尋ねる。

「そこのお嬢ちゃんのことで……そう、警戒してくれるな」

モニカが露骨にミディのベッドの前に立ち身構える。

クラウスもまた、その場から動かず殺気をこめた視線を送る。

ギリーは手を振り、苦笑いをする。

「俺が何か言わなくても、いずれは、広がる話だ。」


「お前さんたちは、お嬢ちゃんが何者なのか知っているのかい?」

ギリーの問いに、アレンが答える。

クラウスとモニカは無言で警戒を続けている。

「……彼女は、「爆炎」アゼル様のお弟子だ」

「……なんだと?」

ギリーは自身が思っていたことと違う回答に、少し驚いていた。


「そうか、あの婆さんの弟子かぁ」

頭を掻きながら、どこか懐かしそうにしている。

「婆さんは元気なのか?」

「いえ、先月にお亡くなりになられたそうです」

「……そうか」

ギリーは黙祷をするように、目を閉じた。

「訃報だが、情報を貰っちまったからな、こっちも話をしておくわ」

少し湿っぽい空気になったが、ギリーは気を取り直し、アレンたちに語りかける。

「あの嬢ちゃんが出した、光のようなものは恐らく、「光の翼」だ」

「「……」」

「「光の翼」ってあの王国の……?」

モニカは驚き、寝ているミディを見る。

アレンとクラウスは無言を貫いていた。


「ほう、知っていたのか、見た事でもあるのかい?」

ギリーのカマかけに反応しない二人。

「……まあいいか。忠告しておくが、このまま団にかくまえば、確実にトラブルに巻き込まれる」

さらに話は続く。

「まだ、お嬢ちゃんとの付き合いも浅いんだろ?今のうちに団から抜けさせた方がいい」

「老婆心ながら忠告させてもらうぜ」

アレンはギリーの言葉をすぐに拒絶できなかった。

ミディは確かに大切だが、自分は団を率いるものとしてリスクを天秤に掛けなければならないからだ。

だが、決意したように言葉を発する。

「ご忠告ありがとうございます、ですがミディは我が「大地の盾」の大切な一員です」

モニカもクラウスも頷く。

「だから、団員である限り、何があっても守りぬこうと思います」

その言葉が判っていたのか、ギリーも何も言わずに「そうかい」と肩をすくめる。

「俺から言うことはもう何も無いな、後はお前ら次第だ。うまく立ち回れよ?」

そう言い残すと、ギリーはその場を後にした。


「外で見張っている」

後に続くように、クラウスは一言いうと、救護所の外に出て行った。


静寂が室内を支配する。

(なんで本人居るところでそんな話するかな!!!何にも知らないよ!?)

身体がしんどすぎて眠れなかったミディは、突然始まった劇場に寝たふりを決め込んでいた。

(そんな話、聞きとうなかった!!!どんな顔して皆に会えばいいの!!??)

脂汗を流しながら、寝たふりを続けるミディ。


そんなこと、何も知らないモニカは、優しくミディの汗を拭きとり、頭をなでていた。

「酷い汗、本当に頑張ったのね……」

「そうだね、ミディが居なかったら確実に死者も出ていたよ」

「ごめんなさい、私、肝心な時に倒れてて……」

「仕方ないさ、だれもこんな事態になるなんて予想できなかったんだから」

アレンは優しく語りかけ、モニカを抱きしめる。


「ねえ、アレン」

「なんだい、モニカ?」

「私ね、ミディの世話してたらね……」

「うん」

「赤ちゃん欲しくなっちゃったの」

「うん……え?」

(へ?)

突然の爆弾発言にアレンとミディは固まる。


「もちろん、すぐじゃなくてもいいわよ」

「い、いきなりだね。何か思うところがあったのかな?」

「ミディを見てたら、「ああ、私の子供もこうやって育てていくのね」って思ったら欲しくなっちゃった」

(私、赤ちゃんじゃないんですけど!?もう十四歳なんですけど!!)

寝顔が徐々に不満顔に変わっていく。


「そうだね、突然だったけど君が欲しいのなら、よろこんで答えるよ。でも先にしないといけないこともあるよね?」

「何かしら?」

「式を挙げなきゃね」

「......!そうね、私ったら少し先走り過ぎたわ!」

(私は、何を見せられてるの???)


「それに僕たちが信仰する「大地母神教」の教えにもあるからね」

「ええ、神官である私たちなら最低二人は欲しいわ!長女のミディも兄弟欲しいと思うわ」

「ああ、もうミディは娘みたいなものだからね」

(!!!???!??!?)

ミディは、自我が確立して初めての恐怖に震えた。

そんなミディを置き去りにして、二人の行いはエスカレートしていく。


「ねぇ、アレン」

「なんだい、モニカ」

「ここで一人目……作ってもいいのよ?」

「……大胆な発言だね、ミディお姉ちゃんに見られちゃうよ?」

二人の影が一つになりかけたその時だった。

(もう無理!頭おかしくなる!)

「こひゅっ……ひゅ、ひゅ……」

あまりのことに、ミディが過呼吸を起こす。

二人は咄嗟に離れ、モニカは慌ててミディに駆け寄った。



ミディの徒然かもしれない日記

〇月!?日

久しぶりに日記が書けた。

色々あり過ぎて、どうしたらいいのかわかんない。

太郎といっぱい話をした。

私は太郎だけど、違う私だった。

うまく説明できない!!!

でも、これから精一杯生きて、幸せになるところを太郎に見せてやる!

もう、後ろ向きにはならない!

みかんもいつか食べる。


光の翼とやらが私の背中に現れたらしい。

よかった、お尻から出なくて!!


モニカが怖くなってきた。

私のお母さんを名乗ってきそう、ソニアママ助けて。

明日、村を出発するらしい。

この初仕事で本当に色々あった、私も色々経験したから成長したよね?


追伸

私を押し倒した人は、今回の闘いで一番の重傷者だったらしい、生きててよかったね!

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