第9話 王子様の襲撃
吸血鬼と戦っていたダイゴは、何かに気づいたのか王宮の方を見る。
(今……強いやつが倒されたような……)
王宮の方から感じていた大きな魔力が消えた。吸血鬼たちもそれに気づいて王宮の方を見る。
(やつらが青ざめている……倒されたのは吸血鬼ってことか?それなら倒された吸血鬼は血誓いの眷属なんじゃ……)
ダイゴは唾をごくりと飲み込む。
(いるのか?俺たち以外に吸血鬼を倒せるやつが……)
一方、クリボリオ王国に馬で向かっていたスカルドとレオナールもそれに気づいていた。
「おい……今のまさか……」
「ラビルがやられたね」
「嘘だろ……あいつを倒せる吸血鬼狩りがいるってことか!?」
「……本当に吸血鬼狩りかな?」
レオナールはロメオを思い浮かべていた。
クルミも大きな魔力が消えたことに気づいていたが、結界の維持に集中していた。
(倒したのはダイゴ?それに結界周辺から吸血鬼がいなくなった……王宮に向かったのかしら?)
ひとまず吸血鬼がいなくなったことに安堵する。
(ダイゴに連絡しないと……)
通信機を取り出した瞬間、禍々しい気配に気づき、通信機を落とす。
(何……今の?どこから……)
探知しようとすると、大きな物音が聞こえた。それと同時に結界が効力を失う。
(結界が破壊された⁉まさか吸血鬼の襲撃⁉)
そして、二階から壁を破壊するような音がする。
(まずい!上にはジュリエッタさんが!)
クルミがミナに告げる。
「私は上に向かいます!奥さんは旦那さんを連れて地下へ!」
「わ、わかりました!」
クルミが上に向かうと、ジュリエッタがレオナールに首を掴まれて、地面に押し付けられていた。
「なんだ……まだ吸血鬼狩りがいたんだ」
(吸血鬼!)
クルミがポケットから呪符を取り出そうとすると、後ろから右肩を弓矢で撃ち抜かれた。
「うっ!」
後ろを向くと、スカルドが血の弓を構えていた。
「死ね。吸血鬼狩り」
再び弓矢を放つと、クルミを撃ち抜く。
「がはっ……」
口から血を吐くと、前にバタリと倒れた。
「ク……ルミさん……」
「ジュリエッタ。王宮に戻ろう。僕が悪かった」
レオナールは笑顔で首をさらに絞めつける。
「が……あ……」
「おっと。またあの時みたいに倒されるのは嫌だからこれは捨てるね」
レオナールがジュリエッタの首飾の宝石を首から取ると、投げ捨てた。
「これで助けは呼べない」
「あ……あ……」
「そんなに残念そうな顔しないでよ。僕らまだ楽しい新婚生活を過ごせていないじゃないか」
首を絞められて体が動かず、抵抗できない。
「僕が悪かった。さすがに結婚してすぐに吸血するのはよくなかったよね。楽しい新婚生活を過ごしてからにしよう。そうしよう」
「や……め……」
その光景を見ていたスカルドが呆れていると、誰かがやってくる気配に気づく。
「レオナール!誰か来た!」
レオナールが横に振り向いた途端、自分の首をダイゴに切断された。
「なっ……!」
スカルドは慌てて弓を構える。
「あいつ……」
矢を放つと、ダイゴはナイフで弾いた。
(俺の弓矢を……!)
ダイゴはクルミのポケットから呪符を取ると、レオナールの胴体に貼る。
「起爆」
そう言った瞬間、呪符が爆発し、スカルドは思わず目を瞑る。
「くっ……!」
爆風がなくなり、目を開けると一軒家が倒壊していた。
「レオナール!」
倒壊した一軒家に駆け寄ると、レオナールの顔が落ちていた。
「大丈夫か?」
「あぁ。僕の胴体は?」
「呪符が貼られて爆発したんだ。粉々かもな」
「……そっか」
「胴体の再生にはかなりの時間を使う。ここは大人しく……」
そこで言葉を止めたことに疑問を感じたレオナールが声をかける。
「どうしたスカルド?」
「なぁ……吸血鬼を取り込めば、再生も早くなるんじゃないか?」
スカルドの視線の先には、逃亡しようとしているレンズがいた。
「ふぅ……なんとか間に合った」
一軒家の地下に避難していたダイゴはジュリエッタとクルミを地面に下ろすと、ミナが駆け寄ってきた。
「ジュリエッタ!」
「大丈夫です。気を失ってるだけなんで。クルミは重傷なのですぐにでも治療しないと……」
包帯でクルミを止血する。
「とりあえず俺たちの本部に行きましょう。今はクルミとおっさんの治療が最優先だ」
クルミの通信機を手に取ると、電波を発信した。
『ジジジ……こちら本部。どうぞ』
「戦闘部隊ダイゴ・ランダールだ。重傷者が二名。任務は達成したが、迎えがほしい。場所はクリボリオ王国」
『承知しました。すぐに派遣します』
ダイゴはミナの方向を向く。
「迎えが来るまではここで大人しくしておきましょう。瓦礫で道を塞いだので吸血鬼にはバレないはずです」
「わかりました……」
ミナは落ち込んだ表情になっていた。
「どうして……どうしてこんなことになったのかしら……最近まで普通に暮らしていたのに……」
「……」
その言葉をダイゴは黙って聞いていた。
荒れた街の中、一人の少女が傷だらけで歩いていた。
「パパ……ママ……どこにいるの?」
小さい声で呼ぶが、周りには誰もいない。
「あれ……何……?」
視線の先にはジュリエッタの首飾の宝石が落ちていた。




