第8話 半月夜の戦い
ロメオは空中に浮きながら、街を見つめる。
すると、吸血鬼達が一軒家や店を襲撃していた。
(住民を襲撃している……なぜ今になって……?ジュリエッタ達を探しているのか……?)
だとしたら倒さなければ……
(今日は半月……あの時みたいに全力は出せないが十分か……)
杖を顕現させると、空に向かって左手を伸ばす。
「半月の月明かり」
上空からの光が襲撃する吸血鬼に向かって落下する。
(攻撃力は満月の月明かりより半減するが……雑魚には通用する威力だ……これでレオナールのような実力者に通用するかどうか……)
そう思いながら、チラッと王宮の方を見る。
(この国の根本を叩くべきか?それともやめるべきか……だが行けばジュリエッタを助けるのは厳しい……)
悩みながらジュリエッタ達がいる家の方を見る。
(ジュリエッタには吸血鬼狩りがいる。いざとなれば彼らが助けてくれるだろう……
仮に彼らが手こずったとしても私とジュリエッタは繋がっている)
そう判断し、ロメオは王宮に向かった。
「何の音だ?」
ダイゴがジュリエッタの部屋を覗きに来た。
「吸血鬼が出たってロメオが……」
「吸血鬼が?……ていうかロメオって誰だ?」
「えっと……」
話そうとすると、クルミが慌ただしくやって来た。
「ダイゴ!吸血鬼が住民を攻撃している!」
「ジュリエッタから聞いた。なんで急に……」
「私達を探しているのでしょうね……片っ端から……」
「……!それはまずいな」
ダイゴはダッシュで自分の部屋からナイフを持ち去ると、家を出る。
「俺が狩る!皆を頼んだ!」
「ちょっとダイゴ!」
クルミの静止も聞かずに、ダイゴは街に消えた。
「仕方ないわね……」
クルミは両目を閉じると、右手を床に置いた。すると、床が輝き始めた。
「『透明結界』展開」
ジュリエッタ達がいる家が結界に囲まれると、外から見えなくなった。
(とりあえずはこれで乗り切る。でも……もし血誓いの眷属が来たら……)
そう思うと、心臓がドクドクと鼓動が速くなったのを感じた。
一方、王宮のとある一室ではレンズが怯えながら、尻餅をついて後ずさりしていた。
「お、お前!何しにここに来た!それにどうやって入ったんだ!」
ロメオが一歩ずつゆっくり歩きながらレンズに近づく。
「く、来るな!」
「ここに倒れている女……全部お前がやったのか?」
「だ、だからなんだ!私は王だぞ!何が悪い!」
ロメオが一歩ずつ歩くと、徐々にレンズとの距離が縮まっていく。
「私はお前みたいな王が一番嫌いだ。自分の欲を満たすために権力を使う……お前みたいな……王が」
怒りを露わにしながら、杖をレンズに向ける。
「や、やめろ~!」
レンズが両目を閉じると、後ろから壁を破壊してラビルが剣で攻撃を仕掛ける。
「消えろ。侵入者」
ラビルの一撃を杖で受け止めると、魔法陣を足元に出現させる。
「月糸の拘束」
光の糸がラビルに向かって伸びると、ラビルは後ろに下がった。
「王よ。お逃げください。私が食い止めます」
「わ、わかった!」
レンズは慌ただしくそこから逃げだした。
「あんな王を助けるとは……お前もあいつみたいなクズか?」
「なんとでも言え。操り人形がいなくなられたら困るんだよ」
親指を噛みちぎると、血を弾き、ロメオに飛ばす。
(速い!)
杖で捌ききると、上からラビルが剣を振り下ろす。
「死ね」
すると、光の糸が刃に向かって伸び、捕らえる。そのせいでこれ以上下がらない。
「お前も捕まえる」
魔法陣からさらに光の糸が顕現し、ラビルに向かって伸びる。
ラビルの親指の血が地面に垂れると、落ちた場所から尖った血岩が出現し、ロメオの左肩を貫通する。
「なっ……」
光の糸の拘束がなくなり、刃でロメオの首を切断する。
首から大量に出血するのと同時に、切断された顔が床にポトッと落ちる。
「王に手を出すからこういうことになる」
ラビルは部屋を出ようとすると、背後から声が聞こえた。
「さすが血誓いの眷属……真祖の配下なだけある……」
驚いて振り向くと、顔と胴体があるだけだ。
(誰が喋った?まさか……)
ロメオの胴体が顔を掴むと、首にくっつける。切断面が何事もなかったかのように再生した。
「お前……何者だ……」
「吸血鬼《お前ら》とは違う化物と思ってくれればいい」
光の糸が魔法陣からどんどんロメオの周りを囲むように伸びていく。
「さぁ……続きといこう」
「クソ……次は殺す」
ラビルは左手で刃を思いっきり掴むと、出血させる。
床に血が落ちていくと、落ちた場所からロメオに向かって、複数の血の針が伸びる。
すると、複数の光の糸が守るように防御する。
ラビルが針の上を走り、攻撃態勢に入る。
「次こそ終わりだ」
ロメオが杖をラビルに向けて光を放つと、高く跳び上がり、血を飛ばす。
「月籠の結界」
結界が展開され、攻撃から身を守る。
「終わりじゃなかったな」
ラビルがイラつきながら血を刃に垂らすと、赤く変色する。
「全部斬る」
斬撃を放つと、攻撃力が高く、部屋が破壊される。
「はぁ……はぁ……」
体力が切れたのか、膝を地面につける。
(あいつが何者なのかは分からないが……これで……)
安堵していると、突然前から放たれた光がラビルの心臓を貫く。
「……は?」
ロメオが杖を持って宙に浮いていた。
「半月の月明かり」
半月を背景に複数の光がラビルに向かって放たれる。
光がラビルの肉体を何度も貫いていく。
(まだだ……こんなところで……終わるわけ……には……)
ラビルの肉体が腐敗していき、消滅した。
(力を使い過ぎた……後は吸血鬼狩りに任せてもいいだろう……)
ロメオは吸い込まれるように、ジュリエッタの宝石に戻った。
「……!」
ジュリエッタは首飾の宝石を見つめると、宝石のエネルギーが貯まっていくような気がした。いや……正確には戻ったと言った方が正しいだろうか。
(ロメオが戻ってきたんだ……)
戻ったということは吸血鬼を倒したということだろうか?
「ありがとうロメオ」
感謝の気持ちを込めながら、宝石を両手で包んだ。




