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リトライ  作者: 炯斗
16/18

016

「ところで御二方のお話は偶に突飛ですね?ひょっとして三人目がいらっしゃいます?なんて…ひひ」

冗談を言ってやった!みたいなタゲちゃんにaとKは真ん丸な目を向ける。

「ツッコミがないなとは思ってた」

「もしかして、聞こえてない?」

「えぇ?」

そう言えばタウちゃんも「その声は誰ですか?」みたいなことは訊いてこなかった。

『恐らく聞こえていないのだろう。ふたりがこの虚海で玄獣の認識に時間が掛かったように、彼らの感覚器は私に波長が合っていない』

「なるほど。見えもしないし聞こえもしない。そりゃあカミサマはこの世界には入れない」

信仰で成り立つカミサマだ。信仰のない地で存在も感知されなければ存在を保てない、ということらしい。

「今は?」

『ふたりがいるし、私は一応玄獣と縁深い職能だからな』

珠に護られてギリギリ、というところなのだそうだ。万が一を考えて分け身で来たのだろう。

そうこう言っている内にダストシュート前だ。

「じゃあねタゲちゃん。今んとこ監視端末の中でタゲちゃんが一番好き」

「ひひ…そりゃ照れちゃいますね」

またのお越しを、と慇懃に礼をするタゲちゃんに手を振って、一行は経路の扉を潜った。



「あー、特に何もなかったっぽい」

経路を抜けたaは扉を振り返る。Kは涙が止まらないようだった。

「うべ…悲しいわけじゃないけど…ムカつくわけでもなさそうなんだけど…」

ズビズビと洟を啜っている。

対してグランチェスカは分かり易い。大分お怒りのようだ。

「玄獣も同じなんだね。タクちゃんは?」

『私は──いや、そうだな。同じなのかも知れない』

そうなんだ、と言った処で、aは目を瞬かせた。

「Welcome,human!オギエルえよおこそ。この地区の監視端末です」

「かわいっ」

ツチブタ、つなぎを着た二足歩行のツチブタだ。遂に人間型じゃなくなった。耳の先まで入れてもaの腰辺りまでしかない。

「かわい…」

しゃがみ込んだaとKに眺め回されワタワタしている。

「美味しそう…ですね?」

グランチェスカのネットリとした視線を受けビクリと跳ねる。小さくなってカタカタと慄える様は可愛すぎた。

「監視端末は食べられないでしょ。ね、オギー」

Kは立ち上がり、グランチェスカとツチブタを見比べた。

「そうでしょうか…」

グランチェスカの視線は離れない。

「ひぇ…」

aは怯えるオギーを自身の陰に匿った。

「それで、貝空の気配は?」

「…あるような、ないような」

『ある気はするが、薄いような…だな。探してみる価値はありそうだ』


オギエル地区は、まるで廃棄場のようだった。汎ゆる物質が無造作に積まれている。やがて崩れ落ち、そこにまた積み上げられていく。

「すごいなコレ…何?」

「何、と訊かれましても。何でもありますよ。探し出せればね」

積まれたそれらはゴミではなさそうだ。錆も無ければ壊れてもいない。腐臭もなければ傷んでもいない。

「アレが庁舎?」

より堆く盛られた山には、大玄獣の気配がある。aでも感じるくらいだから相当だろう。

「あちらわヨグ=ソトースの住処ですね」

「クリフォトが解らなくなってきた」

Kが疲れた様子で息を吐いた。

「翻訳の具合なんじゃないの?」

「そうだよね。これまでもそう乗り切ってきたもんね。おーけー気にしない」

「『全て』お教えてくれるありがたぁいおかたですよ」

「マジで『全て』過ぎて頭パァンなるヤツでしょ知ってる要らない」

「それでわ庁舎に向かいましょお」


「この辺、この辺です。庁舎お出たのが久し振りでしたから、帰るのも一苦労です」

モコモコとガラクタに頭を突っ込んで蠢いている。おしりが大変に愛らしい。

「いつも引き籠ってんだ」

「そおですねえ〜。物が在り過ぎて大変ですから」

「地区をあげて整頓とかしないの?」

「ヘタなものに触れたら頭パァンですよお」

此方の表現を引用しての警告に、Kは適当に伸ばしかけていた手を引っ込めた。

「ココにあるのは『知識』なんだねぇ」

「そおですね。昔わ知識の竜が棲んでいて。ある時いなくなりました」

「へー」

姿が見えなくなっていたオギーがガラクタの中から勢いよく頭を出し、周りの物が崩れ落ちた。

「入口お見付けました!えらい」

えらいので、イイコイイコしておいた。


なるほど、庁舎は地下に伸びていた。

「この地区で一番の玄獣ですか?ヨグ=ソトースじゃないですか?」

「そうだわなぁ。それ以外で」

「うーん…この地区の皆わ引き篭もりがちなので、あんまり把握出来てないのが現状です」

オギーが地区の座標図を映し出す。各所に様々な明度の点が描かれている。一際明度の高い点は、位置からしてヨグ=ソトースだ。つまりこれは玄獣の配置とその強さを表しているのだろう。

「これ、リアルタイム?」

「そおですね。皆動かないので」

「んん?このうっすいの、やたら動き回ってるけど」

見えるか見えないかくらいの明度の点が、地区中を動き回っている。軌道に法則性は無さそうだ。

「ハエみたいですね。何でしょおか、ちょっと解りません」

「気になる。見に行こう」

「えぇ?まあいいけど…」

明度が強さなら、そのハエに用はないんだけどな…とaは思った。

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