48 王都決戦〜世界最強のバフ
聖王スルバーンの勇姿に、兵士たちの歓声が高まる一方で、不死王カーロンは邪悪な笑いを浮かべた。
「カーロンよ、私が戦いに武器を用いないのはすでに知っておろう。つまり自慢の【無垢の界域】とやらも、私には無意味だぞ」
聖王は静かに呟くと、すぐさま両手を天に掲げ、強烈な魔力で空気を震わせた。金色の光が彼の周りを包み、古代語のような呪文の声が力強く響いた。
「出よ、炎のイフリート!風のジン!」
天空から轟音と共に、炎と風の最上位精霊が召喚され、その巨大な姿が戦場に現れた。イフリートは赤々と燃え盛る炎の巨人で、ジンは突風と共に空を切り裂くような風の精霊だった。その圧倒的な存在感に、冒険者たちや兵士たちの士気は再び高まった。
「すごい……!最上位精霊だ……!」
「しかも二体同時召喚!こんなの見たことないぞ」
兵士たちの驚きが戦場に響き渡る。しかし、それを見たカーロンは不敵な笑みを浮かべた。
カーロンは余裕の表情を見せるが、スルバーンは静かに笑った。
「火焔の王イフリートよ!灼熱の焔を纏いし者よ、天と地を焦がし、すべてを灰へと還す者よ――今こそ我が命に応じ、その力を解き放て!」
スルバーンが命じると、イフリートの灼熱の炎が不死王カーロンに向かって放たれ、カーロンに襲いかかる。
「ぬぉぉ……」そしてカーロンは明らかにダメージを嫌がっている。
「暴風の王ジンよ!天空を駆ける風の精霊よ、疾風の刃をもって、全ての障壁を切り裂け!」
ジンの発する鋭利な刃を持つ竜巻がカーロンを襲う。
「炎と風よ!世界を浄化せし灼熱の暴風となり、不死者どもを滅せよ!」
すると二体のスキルが重なりさらに強力な力を生み出した。轟音と共に、炎と風がカーロンを直撃する。
カーロンの【無垢の界域】は、武器や魔法の攻撃力を無効化するが、精霊の力は自然界の無垢な力であり、防げないようだった。
「ぐ……!さすがやりおるな……!」
カーロンはこの戦いで初めて苦しげな表情を見せた。
イフリートの灼熱の拳がカーロンの肉体を焼き、ジンの風刃が彼の体を切り裂く。聖王スルバーンの最上位精霊たちは確実にカーロンにダメージを与えていた。しかし、カーロンはすぐに冷酷な笑みを浮かべた。
「だが、英雄スルバよ、その程度ではこの不死王は倒せぬ……見せてやろう、我が切り札を!」
カーロンは両手を広げ、黒いオーラが地面に広がっていく。その瞬間、異次元へのゲートのような巨大な門が上空現れ、戦場に闇が立ち込めた。
「闇の深淵を守りし【冥府の門】よ、今こそ開かれよ! 異界に眠りし守護者たちよ、我が呼び声に応え、 冥府の鎖を断ち切り地上へ降臨し、生あるすべてを蹂躙せよ!」
するとカーロンの呼びかけに応じるように門がゆっくり開き、その中から巨大な三体の冥界の守護者たちが地上に降り立った。
巨大な鎌を持ち、死を刈り取る者として恐れられる——滅亡の守護者アバドーン。
影の中から現れ、敵を闇の中に引き込む幻影の使い手——深淵の守護者ノクティス。
病や疫病を撒き散らし、敵の体力を奪い尽くす毒と腐食の力を持つ——腐敗の守護者モルガナス。
彼らの巨大で異様な姿はただならぬ存在感を放っており、まさに死の象徴ともいえる強大な力を纏っていた。
マスター・ゼロスがすかさず叫ぶ。
「まずい……あれは最上位精霊と同等以上の力を持つと言われる、冥界の守護者だ!それが三体も……」
冥界の守護者たちは、圧倒的な力でイフリートとジンに襲いかかり、精霊たちは徐々に押されていく。【冥府の門】はカーロンが長年準備してきた「英雄スルバ対策」そのものであり、彼の徹底的な策にスルバーンも驚きを隠せなかった。
「聖王!私たちもサポートする!」
美月とゼロスが聖王へと駆け寄った。
「いいや、勇者の出番はまだだ、私とてこれで終わりではないぞ」
聖王スルバーンはひるまず、さらに力を込めて次の精霊を召喚しようとしていた。
「巌窟の王ベヒモスよ!眠りし大地の精霊よ、重き足音と共に、この地を揺るがし、敵を塵へと還せ!我が名に応えここに顕現せよ!」
すると大地を震わせながら現れた巨大なベヒモス。その圧倒的な体躯で冥界の守護者たちに向かって突進し、その巨大な爪で一撃を放った。
しかし、その瞬間、スルバーンの体が震え、鼻血が垂れた。彼は明らかに精神的ダメージを受けていた。
「三体同時召喚は天晴れだが、生者では召喚者の肉体が耐えられまい。これが不死王と貴様ら愚かな生者との違いだ!」
カーロンの嘲笑が響く中、スルバーンは苦しそうな表情を浮かべながらも、微笑を浮かべた。
「分かっておらぬな、カーロンよ。生者の喜びを捨て、腐った貴様の脳では理解できまい」
カーロンは苛立ちを露わにし、叫んだ。
「我は全知全能の魔道王であり、不死王なり!何がわからぬとぬかすのだ!」
スルバーンはその言葉を聞いて、静かに笑った。
「やはりわかっていないな……かわいい娘に『頑張って』と応援された時の《《お父さん》》はな……《《世界で一番強い》》のだよ!!」
スルバーンは叫び、さらに力を込めてさらなる精霊を召喚した。
「大海の王リヴァイアサンよ!深淵に潜む海の覇者よ、この戦場を浄化せし怒涛の波を巻き上げ、我が声に応えここに現れよ!怒りの濁流で全てを飲み込み、輪廻の理へと導け!」
すると、天地を揺るがすような轟音が響き渡り、蒼く輝く水霊の王、リヴァイアサンがその巨体を現した。空をも覆い尽くすほどの巨大な姿は、戦場にいるすべての者の目を奪い、その存在感は圧倒的だった。リヴァイアサンの出現と共に、暗い空に裂け目が走り、そこから怒涛の水流が溢れ出す。
「四体同時だと……ありえぬ!人にそんなことが」
信じられない光景にカーロンは驚愕し、後退りする。
「揃いし精霊の王達よ、天の理と相乗の力で、忌まわしき冥府の敵を滅せよ!」
聖王スルバーンが叫ぶと、リヴァイアサンはその恐るべき尾を一閃させた。水流が渦を巻きながら勢いよく地に向かって落ちていく。次の瞬間、戦場はまるで海底に沈んだかのように、押し寄せる津波が冥界の守護者たちを襲った。
続いてジンの風がリヴァイアサンの水流に絡みつき、さらにその威力を増幅させる。風と水が織り成す嵐のような暴力的なエネルギーが戦場を一掃し、冥界の守護者たちを粉々に砕いていく。
「これで終わりではないぞ……!」
スルバーンが鋭く命じると、炎の精霊イフリートが燃え盛る拳を振り上げた。その拳が水流に叩き込まれた瞬間、まるで水が蒸発するかのように爆発的な熱が生まれ、蒸気と火の嵐が戦場全体を包み込んだ。イフリートの炎が水流を炎熱に変え、敵の皮膚を焼き尽くし、冥界の守護者たちは断末魔の叫び声もなく、黒く焦げた物体となった。
さらに大地が揺れ、ベヒモスが巨躯を揺らしながら地を叩きつけると、地面から無数の岩が隆起し、冥界の守護者たちの逃げ場を封じた。その圧倒的な力に圧倒され、冥界の守護者たちは次々と動きを止め、最後にはバラバラと崩れ崩壊していく。
四体の精霊が織り成す強大な力の連携は、まさに自然の摂理を超えたものであり、その力の凄まじさは見るものの言葉を失わせた。天地を揺るがすほどの怒涛の攻撃に、冥界の守護者たちは、ついに跡形もなく消滅した。
戦場には一瞬の静寂が訪れた。しかし、その静寂はすぐに歓声に変わった。兵士たちの声が天を突き抜けるほどに響き渡り、彼らは聖王スルバーンと精霊たちの力に心を奮い立たせた。
「これが、聖王……!……伝説の英雄スルバの力!」
「そして、《《お父さん》》の力!」
多くの男達が、泣きながら拍手をしていた。おそらく彼らも《《お父さん》》なのだろう。
間近に居た美月や冒険者たちは驚きと感動に打ち震え、目の前で繰り広げられた戦いに圧倒された。しかし、その戦場の中心に立つ聖王スルバーンは、鼻血を垂らしながら、静かに呟いた。
「安心するな……まだだ、まだ終わっていないぞ……」
そう、不死王カーロンはまだ健在だ。相変わらず周囲のアンデットを犠牲にして失った体力をとりもどうそうとしている。
聖王スルバーン凛々しい顔に鼻血を流しながら、城壁の方へと向き、つぶやいた。
「拓海、アルティナ……【センチネル】を急ぐのだ……」
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聖王スルバーン
クラス: 精霊王(最上級召喚士) Lv: 99
HP: 8500 MP: 43000
特徴: 聖王スルバーンは、精霊王として全属性の精霊を自在に召喚し、精霊の力をその身に宿して戦う。召喚だけでなく、精霊との融合や精霊の力を借りた強力な魔法攻撃も可能。
攻撃力: 420
防御力: 560(精霊王の神装+700 上位魔法防御+80)
俊敏性: 280
魔力: 999(最高レベル)
精神力: 800(極めて高い精神力を持つ)
スキル:
【五大精霊召喚】
五大精霊を戦場に召喚し、それぞれ強力な属性攻撃を行う。
炎の精霊イフリート:
強力な火属性攻撃を放つ。スキル【灼熱爆炎】(しゃくねつばくえん)は、灼熱の炎で敵を焼き尽くす。
風の精霊ジン:
風を操り、【烈風斬】(れっぷうざん)で鋭い風を放ち、敵を切り裂く。
大地の精霊ベヒモス:
巨大な大地の力を持つベヒモスは、【大地の咆哮】(だいちのほうこう)で大地を揺るがし、敵を崩す。
水の精霊リヴァイアサン:
水の力を使い、【大海の怒り】(たいかいのいかり)で巨大な水流を呼び、敵を押し流す。
空の精霊スカイラーク:
天空を支配し、【天の制裁】(てんのせいさい)で雷と風の力を駆使し、空から敵を撃ち落とす。
精霊の咆哮:召喚した精霊たちが同時に攻撃を行う強力な一撃。全属性の攻撃が融合し、敵に多重属性のダメージを与える。
守護者の威厳:スルバーンの存在自体が味方の士気を高め、戦闘力を一時的に上昇させる。全体の攻撃力、防御力を増加させ、さらに精霊による支援効果を強化する。
【融合術】
精霊融合:聖王スルバーンが自身や他の戦士に精霊の力を付与し、攻撃属性を強化する能力。各属性に応じて、攻撃力や防御力、特殊効果を付与できる。
火属性: 攻撃力増加、追加の火炎ダメージを付与。
水属性: 防御力増加、HPを徐々に回復する効果を付与。
風属性: 俊敏性増加、回避率上昇。
大地属性: 物理防御力を強化し、状態異常に耐性を付与。
空属性: 雷の属性ダメージを付与し、相手の動きを一時的に封じる。
【天と地の守護】
五大精霊の力を借り、仲間を全方位から守る防御壁を形成する。敵の属性攻撃を無効化する効果がある。
【聖王の威光】
聖なる光を発し、周囲の仲間の士気を高め、攻撃力と防御力を上昇させる。
【聖なる再生】
精霊の力を使い、仲間を時間経過で回復し、状態異常を浄化する。
【魂の守護】
精霊のエネルギーで作られた盾を生成し、魔法攻撃を一時的に無効化する。
【ユニークスキル】???




