35 大地の剣聖ソル
——森の中に、二人の武器の風切り音が響く。
「やるじゃん!見た目だけじゃないようだなー」
(こいつは強いな!オビオンより速く、剣筋も恐ろしく正確だ!)
「まだ、こんなものではないぞ!」
(なんなんだこの男は、私の剣撃がかすりもしない?ありえんだろ!)
エルフ男の名前は『大地の剣聖ソル』レベルは俺より上の75だ。剣士系とハンター系のスキルをほぼカンストした超エリートと言った感じ。能力値も俊敏以外はすべての面で俺を上回ってる。
とはいえ【ワールドブレイク100】をすでに獲得してる俺の棍棒攻撃はすべて防御貫通が確定。さらに体術スキル【バーサーク】(攻撃力2倍、防御力半減)、【死中求活】(残りHPが10パーセント以下で攻撃力が2倍)を獲得している。なにより、レベル60達成で新しく追加された俺専用の新ユニークスキルを試すのにちょうど良い相手だ。
「これならどうかな!」
剣聖ソルは【瞬足】の上位スキル【神速】使って一気に間を詰めると同時に、居合のような超高速で剣を抜き俺の喉元へ短剣を突き出した。
俺はその攻撃を【時を統べる者】で見極め【パリィ】で弾気返す。
「ほう、初見でこれを回避どころか、弾くのか!」
なぜだか剣聖ソルは嬉しそうだ。
気になったのは、今の攻撃に殺気を感じなかったこと。何のつもりだ?単に様子見してるのか?
俺は挑発するように肩と腕を回し、再び構えて見せた。
「殺す気で来てくれないと、俺の調子が出ないんだが」
そう言うと剣聖ソルは残念そうな顔をした。
「聖王からは殺せとまでは言われてないのだよ」
やはり聖王の手のものか。謎のフードの男の正体が、この剣聖ソルだったかは不明だが、やっぱり無許可で聖地に入ったことを聖王が怒ってるのかもしれない。
「なぜ、俺が一人の時にコンタクトしてきたんだ?」
「……もしこれを回避出来たら、教えてやろう——【百花繚乱】」
剣聖ソルの雰囲気が変わった。剣を俺に向けて水平に構えると、その周囲を囲むように12本の剣が空中に現れ、同じように俺に剣先を向けている。
「この剣は幻影じゃない、一本一本が同じ攻撃力を持っている。さあ避けるか、弾くか、好きなように抵抗してみるがいい」
……この剣には魔法の連結を感じる、おそらく避けても追ってくるタイプだな。
となれば……すべて弾くのみ!
「やってみろよ!——【虎穴】」
【虎穴】はレベル60で神と制作した俺の新スキル。
まず最大の特徴が【パリィ】を成功させるとクールタイムがリセットされる。
つまり失敗しない限り連続【パリィ】が可能になる。
さらに攻撃を弾く度に自身の攻撃力がアップする。
〆で【燕返】や、カウンター攻撃へとコンボすれば、数倍返しの大ダメージを与えることが可能になる。
だが代償として、弾く毎に【パリィ】のミート間隔が短くなり難易度が上がる。
つまり連続攻撃に強い反面、その数によっては失敗するリスクも高くなるという、俺にしか使えない命知らず向けのマゾスキルだ。
「ではいくぞ——【龐蓮華鏡】」
12本の剣が回転しながら全方向から俺に迫る。それと同時に、剣聖ソルが牙突の如く突っ込んでくる。まさに死角無しの恐ろしい攻撃だ。
だがこの——今際の緊張感こそ、俺のステージだ。
集中力が極限へと高まり、時が遅くなる、世界の全てがスローモーションになる。
(もっと、もっと、もっと遅く、時が止まるほどに)
「ここだ!」
その瞬間、剣聖ソルは12本の剣すべてが一瞬で弾かれるのを感じた。
(いまのは、何だ——)
すると目の前にはすでに、棍棒をクロスに構えた俺の姿が迫る。
「【燕返】」
「まて!」
剣聖ソルは直前で攻撃を中止した。
「なんだよ、いいところなのに」
「いやいや、まて、おまえ、バケモノなのか?いま12本全て弾いただろ?!」
「あ——そうだよ、避けると面倒そうだったからな」
「そういうことじゃない、ありえないという意味で聞いたんだ」
ありえないと言われても、俺には昔からそれが出来てしまうのだからしょうがない。
あんただって世界がスローモーションになれば、同じことが出来るだろ。
「俺は反射神経が、まあ、人より発達してるんだわ、それだけのこと」
「いやいや、そんな次元の動きじゃなかったぞ……まあいい、合格だ」
そう言うと剣聖ソルは剣を鞘に納め、俺の顔をみて呆れながら笑った。
「合格?何かの試験だったのか?」
「うーむ、まあ試験というか、実力を計りたかったんだろうな、聖王は」
「聖王が俺の実力を?なんで?」
「それは会えば分かる、まあ私にとっても無関係ではないけどな」
なんか意味深な言いようだな、聖王って一体どんな人物なんだ?とりあえず無許可の件はお咎め無しってことになったのかな。
「とりあえず、これを渡しておく。聖王都に入るための通行手形みたいなものだ」
「え、これがないと入れないのか?」
すると剣聖ソルは、やれやれと首を振りながら肩を落とす。
「おまえは何も聞いてないんだな、まったく……まあ入れないというか見えないんだよ、それが無いとな」
え?聖王都はアイテムが無いと見ることも出来ない幻影都市ってこと?何それカッコイイじゃん。俺そういう設定大好きなんだ、あーなんかワクワクしてきた。
「じゃあ、ありがたくもらっておくよ。で、でも別に何も知らないわけじゃないからな。俺はすべて分かった上で聖地に来てるんだ、せ、説明はしないけど」
はいはい、といった感じのリアクションをした剣聖ソルは、また会おうと言ったあと、一瞬でどこかに消えてしまった。
こんな行き当たりばったりで本当に俺は聖王に会って良いのだろうか。アルティナさん、もうすこし丁寧に話してくれてもいいのに。
「拓海!どこ?」
森の向こうから美月の声が聞えた。どうやら戦いの気配を察知したようだな。
「大丈夫だ!もう奴はいない」
すると茂みから美月が飛び出してきて俺の元に駆け寄ると、いきなりガッチリと抱きついてきた。
おいおい、美月さん、ちょっと……妹キャラとは言え、俺も思春期の男なんですけど!ドキドキするからいきなり抱きつかないで。
「よかった……急にいなくならないで」
「まあまあ、ちょっとしたトラブルだ、問題ない」
美月は俺に兄の影を重ねてるのか、急に距離感が近くなる時がある。
まあこの子は、コミュ障でポンコツなところに目を瞑れば、見た目はとても可愛い女子高生なわけで、俺としても個人的に悪い気はしないです……ん?なんだこの殺気は。
俺は美月を庇うようにしながら、殺気の方向へと視線を向けた。
「あら——アナタ、私の実家に向かう途中なのに、ずいぶんお盛んなのね」
こ、こ、こ怖いよアルティナさん、どしたの、その雪の女王のような目つき。これそういうんじゃないんです。え?何そのモーニングスターは。ボクはニコルみたいに硬くないですよ、やめてくださいよ。
「いや、これは、ちがう——」
そい言いながら俺は、抱きつく美月の頭をつかんで引き剥がそうとするが「いやだいやだ!』と駄田をこねて離れようとしない。
このポン子!状況見ろ状況を!ここで離れないと俺の命が危ういんだよ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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もう35話なんだよー!
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