28 コロシアム廃墟の決戦①
剣豪のオビオンが前衛で、俺に接近戦を挑んできた。後方からは人類最強クラスのハンター、ディオーネの支援攻撃が来るのは確実。2VS2のパーティ戦の場合は大抵、前衛の鍔迫り合いを互いの後衛が支援or妨害しながら削り合う長期戦、もしくは二人がかりで相手の前衛か後衛のどちらかを集中攻撃する短期決戦の2パターンになる。この二人の選択はまず俺に集中して一気に落とす戦法とみた。うん、この場合、最も弱そうなのから擦り潰すって選択はかなり正しい。
ただし——俺以外が相手だったらの話な!!
まずオビオンの黒い両手剣が俺に襲いかかる。
「【疾風連撃】」
オビオンがいきなりの四連撃攻撃、その一撃でも当たれば致命傷だが、俺はすべての攻撃を見切り最小限の動作で回避する。八連撃を回避出来る俺には造作もない!
「【スナイパースティング】」
オビオンに合わせるようにディオーネの矢が空気を引き裂き迫ってきた。
ヘッドショットでダメージが2.5倍になる超長距離ショットだ、こんなの当たったら即死だろ!
俺は頭に当たる直前で【パリィ】する。
ここで半回転して、オビオンに即反撃。
「【乱撃】」
ディアルウィールの二連✖️四連の八連撃が決まったかと思ったがオビオンが直前にステップアウトして攻撃を交わした。その場でしか乱舞出来ないこの技の唯一の欠点を初見で見抜かれた!ってん?今の避けるタイミングはおかしい、俺の攻撃が最初からそこに来ると分かっていたような動きだ、偶然か?
「【龍王の咆哮】」
ムスターファが地響きするほど大きく咆哮し、後衛のディオーネを萎縮させ、そのまま上空から急降下して、巨体を前転させつつハンマーのような尻尾の一撃を見舞う。
ディオーネは直前で回避したが、衝撃波で数メートル吹き飛んだ。ダメージも入っている。ムスターファは任せとけと言わんばかりに俺を見てニヤニヤしている。おっけー、彼女は火龍王に任せよう。
「【ファントムストライク】」
黒いた大剣を構えたオビオンが3つに分身、左右と正面から同時に斬撃を放ってきた。俺はギリギリまで引きつけつつ、垂直にジャンプして回避し三体が重なるところ攻撃をしようとしたその瞬間。俺の直感が危険を知らせる。
「上!?」
「【シャドウスラッシュ】」
オビオンのもう一つの分身が俺の上方に現れ、影のオーらを纏った斬撃を放ってきた。これはブラインド効果(一時的な盲目状態)を与える厄介な技だ。喰らえば終わり、その脅威が、俺の集中力を極限に誘う。
「【燕返】」
俺の必殺スキルカ【燕返】のカウンター&反射攻撃が見事に炸裂。オビオンのHPの2割を削り、逆に盲目効果を付与してやった。相手は今、目が見えないはず、ここで一気に攻める。
「【ファストアタック】」
俺は、サイドに回り込みつつ【ワールドブレイク】確定の四連撃を見舞った。はずだったが、オビオンは最初の連撃の通常打撃を鎧で受け、【ワールドブレイク】の打撃のみを【パリィ】する。次の連撃は分かりきってかのようにバックステップで回避した。しかもこっちを見ずにだ。
「おいおい、あんたチーターか?今の動きはおかしいだろ!」
「チーターとは……ナンダ?」
なんだよ喋れるんじゃん!……でもなんか違和感のある声だ、ボイスチェンジャーみたいな嘘くささを感じるな。
「……あんた人間じゃないな?……もしかしてゴーレムか?」
そうだ、この既視感、紺碧の武者こと悉那虎に雰囲気が似てるんだよ。
「……スルドイナ、勇者拓海、ダガ普通のゴーレムとは少しチガウ」
うーむ、ゴーレムではないけど近い何かってことか?とりあえず盲目効果はまだ残ってるようだな俺との視点があってない。だが、見えてなくてもこっちの攻撃がすべて読まれてるとは何事だ?これじゃ殺陣の演技みたいだ、先読み出来るユニークスキルなのか?
「【 ヴォイドスラスト】」
おっとこれは……魔族が得意とする暗黒剣のスキルだ。闇の力を剣に集めたあと、超高速の突き攻撃を放ってくる上に必中効果があって【パリィ】は不可。てことは【パリィ】の派生【燕返】も効かない可能性があるな。
「さあ、イツデモ……コイ」
この技はたしか溜めるほど威力が増す。とはいえこっちが仕掛ければそれより速く突きが来る。悩む時間をかけるほど不利だからさっさと攻めたいところだが……本当に一手先が見えてるのだとすれば、こっちから仕掛けるのは絶対的に不利というか自殺行為だな。
タイマンだとこれほど厄介な技はない、とはいえ後衛と協力すれば対抗できるんだが——ムスターファとディオーネを見ると、火龍王が苦戦しているように見える。ディオーネは遠距離のヒットアンドウェイに徹していて、大きな的でもあるムスターファが飛翔すればホーミング効果のある魔法矢弾を確実に当て、接近してきたら回避と同時に強力なカウンターを当てつつ、縮地スキルで再び距離とるというアウトレンジ戦法でコツコツと相手の体力を削る、対大型モンスター戦のお手本のような戦い方を徹底している。
お互いにHPを減らしているものの、ダメージ量でいえばムスターファが一方的に攻撃を喰らってる状況だ。
あいつ、大丈夫かな。なんかヘラヘラ笑ってるけど、そんな余裕あるんか?しばらく援護は期待出来そうもないか。
「おーい拓海よ、我もそろそろ本気を出したいからお主に【火龍王の加護】を与えるぞ」
ムスターファがスキルを発動すると、俺の体が赤いオーラに包まれた。【火龍王の加護】(火龍王の灼熱の影響をうけなくなる)ん?なるほどね。
その直後、火龍王ムスターファの巨大な胸が大きく膨らむ。口元に灼熱の光が集まり始め、まるで内部で太陽が燃えているかのように眩しく輝く。
「【龍王灼熱ブレス】」
その光は次第に赤から白へと変わり、圧倒的なエネルギーが蓄えられているのが明らかだ。ムスターファーが前に首を大きく伸ばし大きく口を開くと、灼熱の業火が一気に放たれる。火炎は俺たちのいる場所からディオーネのいる付近までを一掃するように、まるで地獄の業火がそのまま現実に具現化したかのように猛烈な熱風とともに火の海が広がる。
しかし、ディオーネとオビオンはその中で冷静に対応していた。
ディオーネは咄嗟に大精霊の妖装の防御魔法を発動し炎から身を守る。いくらかダメージを受けながらも、彼女は矢を番え、ムスターファの頭部を狙って【スナイパースティング】を放つ。強力な毒矢は空を裂いて飛ぶが、ブレスの勢いに押され失速して消失した。とはいえ灼熱の中でも即座に最適な反撃を繰り出すディオーネの技術はかなりすごい。
一方、オビオンは【 ヴォイドスラスト】のオーラを宿した絶影の剣先をムスターファに向け【瞬速】のスキルを発動して炎の中を駆け抜ける。彼はムスターファのブレスの薄い隙間を縫うように移動し直撃を避けながら接近する。さらに影霊の鎧の防御力で炎のダメージも軽減している。ムスターファに近接すると、その足元へ【 ヴォイドスラスト】の超高速突きを見舞った。
その一瞬前にムスターファーが分かっていたかのように狙われた足を上げる。するとその裏側には【瞬速】でそこへ移動済みの俺がいる。【カウンター】もすでに発動済みだ。
オビオンの【 ヴォイドスラスト】の突き攻撃はそのまま俺に向かってくる。見たことない超高速だが、ここに来ると分かってる攻撃なら俺は絶対に回避できる。
迫り来る突きを直前で回避し、オビオンが飛び込んできた所にドンピシャで【乱撃】を発動した。さらに攻撃のタイミングや角度をランダムに変えつつ、相手が避ける、受ける前提の位置に打撃を被せた。
一部は対応されたものの、【カウンター】付の【ワールドブレイク】が3発決まり、オビオンのHPを大きく減少させた。見るとディオーネのHPも既に半分を切ってる。
俺とムスターファの連携で一気に形勢が均衡し、オビオンが先読みする能力を持っていることも確信出来た。
今度は、幾多の縛りプレイで初見ノーミスクリアを達成してきた、俺のヤバさってやつを教えてやるよ。
——その頃、『アザゼル』の首領を暗殺すべく、地下に降りていた美月とニコルは、想定外の事態に困惑していた。




