表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/60

24 国家機密の冒険者

 俺は冒険者ギルドのドアを大げさな音を立てて開けた。

 ザワザワとしていた冒険者たちはドアの音で一旦静まり返り、こちらに注目してきた。

 さて、今回はどうなるかなって思いながら俺はズカズカと奥のカウンターへと歩み寄る。

 前はヤジられバカにされ散々だったからな。


「もしかして、火龍王に乗って王都に戻ってきた棍棒勇者?」

「本物?鬼神との戦いの話を聞かせてくれよ!」

「二人で魔族軍50人を倒したって本当?しかも棍棒一振りで!」


  冒険者達の中から次々と質問が飛び交い、ギルド内は一気に大騒ぎになった。良かった、信じてもらえてる。前回とはえらい違いだな、あの吟遊詩人に感謝だな。


「私、ギルドマスターにいらっしゃったことを伝えにいってきますね!しばらくここでお待ちください」


 そう言って受付のお姉さんは、二階へと走っていった。


 言われたとおり待っていると、色んな冒険者が自己紹介しながら、俺に話しかけてきて、周囲にちょっとした人だかりが出来たのだが、その中で、やたら女っぽさを漂わせた冒険者らしき女の二人組居て、周りを押しのけズイズイと俺の所にやってきて、馴れ馴れしく腕をつかんできた。

 後で聞いた話だが、この二人は魔法使いと戦士の姉妹で、強い冒険者に色仕掛けで近いては、報酬の良いとこ取りをする悪癖姉妹として、この界隈ではそこそこ有名だったらしい。


「ねえ、棍棒勇者さん、私たちと組んで一緒に災害クエストに行かない?」


 最初に話しかけてきた姉の方は、戦士にしては露出が高く防御力的にどうなんだという装備をしている。特にお胸のあたりが。


「私、あなたの強さに興味があるの、色々近くで手解きしてほしいなって」


 妹の方は、魔法使いらしからぬ派手なアクセサリーをチャラチャラとつけていて、いかにも甘え上手な声で、上目遣いでささやいてくる。


 うーん、なんだこのテンプレ臭は、どっちも見た目は可愛いんだけど罠、地雷のフラグ感がすごい。まあ俺、経験ないんだけど。


「いや、結構です、間に合ってるんで」


 とりあえす予定もあるし面倒なのでそっけなく断ったろころ、姉妹は突然不機嫌になり、豹変したよう俺を見下してきた。やっぱりね、見たまんまやーん。


「ちょっと有名になったからって、調子に乗らないでよね」


「まあ、若造には、私たちの大人の魅力がわからないかぁ」


 彼女たちは嘲笑しながら、俺に顔を近づけてくる。


「ふんその顔じゃ、どうせ女も知らないんでしょう」


 はい、知りませんです。彼女いない歴=年齢の……その時だ。


「私の婚約者(フィアンセ)に何か?」


 アルティナが姉妹の前へずいっと割って入り、いつもの氷の微笑でそう言った。


 それを見て姉妹は一瞬で怯んだ。当然だ、そこに居るのは龍王さえ陶酔する圧倒的美貌とプロポーションを誇る、王直属の天才魔導士アルティナさんなのだから。

 蛇に睨まれた蛙とはこのことだろう、彼女の神がかった美と存在感がその場を支配し、姉妹は無言の圧でマウントポジションを取られ、タップしながらレフリーの所在を確認している状態だ。

 なにより婚約者(フィアンセ)という言葉に、すべての男達が顎が外れるくらいにあんぐりとなっていて、中には壁に向かって頭を何度も打ちつけてる奴までいる。そこまでか!?俺のココロほうが凹むんだが。


「それは、し、しつれいしました。挨拶も終わったのでわたしたちはこれで・・・」


 そういうと目が点みたいになった姉妹はに、後ろ歩きに引き下がり、茶室から出るくらい丁寧にドアを開けて閉めてギルドを出ていった。


 周囲の冒険者たちはザワザワと驚き、なんで、なんでだ、なにがあどうなってあれがああなのかと、声にならない声を上げている。


「アルティナ…さん、また人前で」


「え?事実を言ったまででしょう。あの子たち、人の婚約者(フィアンセ)の前で無礼だわ」


 アルティナは相変わらず、あっけらかんんとしている。どこまでが本気でどこまでが建前なんだろう。たぶん美貌マウントしたって本人は気づいてないんだよなこれ。

 そもそもエルフは恋愛感情とかほとんど無い種族なんだよね?違うのかな、それともこの人が特殊なのか、経験がなさすぎな俺の頭ではさっぱりわからない。


 そうこうしてると、受付のお姉さんが戻ってきて、ギルドマスターの準備ができたから、マスター室まできて欲しいというので、俺たちはギルドマスターの元へ向かう。


 マスター室のドアの前に立った俺は、今度はもちろん丁寧にノックする。


「はいってくれ」


 中に入るとギルドマスターの部屋はそこそこ広くて、執務用のデスクの前に、10人くらい座れそうなミーティングテーブルがあった。


 その椅子にはギルドマスターらしき軍用のパンツに赤いダブルのジャケットを着た白髪のイケメンオヤジと、初めて見る黒髪で長髪の女性が座っている。とはいえ秘書や従業員というより、かなり上級の戦闘職といった雰囲気で、緑色の身軽そうな衣装からしておそらくハンター系と思われる。


「初めまして、勇者 拓海です」


「私は、冒険者ギルドマスターのゼロスだ、そしてこちらが、X級冒険者 ディオーネ殿。とりあえず座ってくれたまえ」


 X級冒険者だと?聞いた事ないぞ、クエルクス・ワールドにもA級からE級の通常冒険者と、S級の特別冒険者までしか存在していない。確かにこの人からは並々ならぬ強さを感じる。いきなりサーチするのは失礼なのでやめておくが、レベル60は超えてそうだな。


「初めまして、ディオーネさん、ところでX級冒険者とはいったいなんです?」


 俺は座りながら尋ねた、俺の両隣には、アルティナと美月も座っている。


 するとギルドマスターが口を開く。


「ああ、君たちは知らないだろうが、実はこの国にはS級のさらに上に、国家機密を取り扱うことを許されたX級という極秘階級が存在するのだよ」


 それに被せるようにディオーネ女史が口を開く。


「私を含めて現在二名のX級が存在する、そのもう一人は、約束の時間になっても未だ現れてないけどな」


 女性だが軍隊あがりっぽい男まさりな口調だ。もう一人が遅れていることにイラついてらっしゃるのか、ピリピリしてて怖い。


「まあ、まあ、私ですら彼をもう2年ほど見かけてないし、いつも謎が多い人物だ、ああ、遅れているもうひとりのX級冒険のことだよ」


 なるほど、X級同士だからって仲が良いってわけじゃないのか。ていうか国家機密を扱うとか言ってたから、仲間でもお互いの行動や素性は良くわかってないのかもしれないな。


「さて、拓海くんで良いかな、受付のケイトから聞いてると思うが、今回は国家にとってかなり重要な件になる、そこで今回、ギルドとして君をX級冒険者に任命することに決定した」


 え?おれまだE級かすらあやしい仮登録冒険者ですけど、いきなり謎のX級?そんなの大丈夫なの?


「いや、そんな簡単に決めてしまってよいのですか?」


 俺は率直な疑問をマスター・ゼロスに投げかける。


「いやいや簡単ではないよ、X級はアポスト神殿の大神官が認定し、ギルドマスターが承認するという二段階認証を経た上で、最後に当人が受託することが規定となっている。だからこそ現状二名しかいないし、他の冒険者も存在を知らない超特階級だ。」


 てことは、大神官はすでに認定してるってこと?俺会った事ないと思うんだが。俺がハテナマークを浮かべてるのを察してか、アルティナが助言してきた。


「アナタが最初に転移してきた神殿の統括管理をしているのが大神官メーディア様よ、だから当然事情はわかってての判断だと思うわ」


 こういう時の彼女は心が読めるのではないかというくらい的確な発言をしてくれるので、ほんと助かるし頼りになる。ていうか、さっきの王との謁見の時といい、王都に戻ってからのアルティナは要所で何か考えがあって発言しているように思える。それがなんなのか俺にはまだ測りかねるが、天才の考えてることだ、きっと深い意味があるに違いない。まったく知らんけど。


「アルティナ、思ってるところは俺も同じだ。そういう意味でも俺はこの依頼を受けようと思うがいいか?」


 するとアルティナはニコリと微笑し「アナタならそう言うと分かってたし任せる」と言ってくれた。実はさっぱり分かってないんだけど、そう言った方がカッコイイと思って適当に言ったんだけど、選択は正解だったみたいでとりあえず良かった。


「そうか、ありがたい、では正式にX級冒険者 拓海として認定し、今回の案件の重要会議に参加することが認可された。では早速本題に——」


 とゼロスが言いかけたところで、ノックも無しにドアが開き、誰かが入室してきた。

 入ってきたのは身長は180センチほどの男で、全身が黒づくめの鎧に紫色のマントを羽織り、頭には特殊な形状の鉄仮面をかぶっているので、顔が分からないちょっとヤバそう奴だった。


「オビオン殿、ノックぐらいしたまえ!遅れてきておいて先客に少々無作法ではないのか?」


 マスター・ゼロスの態度からどうやらこの人がもう一人のX級冒険者のようだな。それにしても機密行動なのは分かるが、顔も見せないとかアリなんだなこの業界。


「ふん、どうせ遅れた理由も話せないのだろ、秘密主義者め。さっさと座れ、私だって忙しいのだ」


 ディオーネさんが怒ってる、やっぱりこの人たち仲が悪いんだな。俺を入れてX級冒険者が三人てことになったんだろうけど、俺も含めて問題児しかいない気がするのだけど、この国大丈夫?


「さて、X級の全員揃ったということだな。ああ、アルティナ殿と美月殿はX級冒険者 拓海の従者として特別に参加を許可されているので、そのまま聞いてくれていい」


 マスター・ゼロスはテーブルに両肘をつき、口元を隠すような独特の姿勢で話始めた。なんかこの雰囲気、なんかのアニメで見たような気がするが、ここでそれを言ったところで意味不明なので、とりあえず真剣に聞こう。


「心して聞いて欲しい……我々が長年かけて追ってきた、国家転覆を企む組織の実態が掴めた。同時に、その計画がすでに大きく動き始めている兆候も…」


 なんだか、やばそう、それってそうとう面倒臭い案件じゃないの?やっぱり聞くのやめるって言ったら怒るかな、ていうかまさか消されるとか?どうしよう、俺、ゲームと難易度しか興味がない社会不適合者なのに。 


「では、これから何が起こるか、我々がどう行動すべきかを伝える」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ