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20 スゴイ大作戦


 俺は作戦内容や各自の役割をあらかた順追って説明し終えた。


 「とまあこれが、俺たち全員の長所とスキルを最大限に生かした火龍王対策、その名も()()()()()()だ!」


「ぼうず、おまいはやっぱりスゴイ奴じゃの、わちきはその作戦に乗ったぞよ!」

 嬉しそうなニコル、そうだろう、そうだろう。


「うん…それならもしかして、無傷で勝てるかもしれない」

 美月も感心しているな、よしよし。


「ちょっと待ちなさいよ、私は納得いかないんだけど!」

 おや?アルティナだけご不満な様子…なんでだ?


「あいつのステータス見ただろ?まともに戦うと相当危険で時間もかかるぞ」


 俺たちは寝ている火龍王ムスターファのステータスをあらかじめサーチとしていた。


 ざっくりと重要なポイントだけみてもこれだ


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 火龍王ムスターファ Lv78

 HP:10800 MP:3440


 攻撃:570(大爪+480 尻尾+260)

 防御:289(龍王鱗+680)

 俊敏:150(飛翔+400)


 スキル:【龍王灼熱ブレス】【龍王の咆哮】【龍王の暴風】【龍王の大爪】【アンチマジック】【火炎防壁】【再生の炎】【大噴火】

 ユニークスキル:???


 それに対して俺たちの作戦に必要なステータスがこんな感じだ。


 拓海

 覚醒勇者:Lv38

 HP:590 MP:330

 攻撃:255(棍棒+1)

 俊敏:200(レンジャースーツ+20)

 ユニークスキル:【ワールドブレイク50】【時を統べる者】


 アルティナ

 魔導士:Lv42

 HP:660 MP:1210

 特徴:顔とスタイル


 美月

 覚醒勇者:Lv38

 HP:730 MP:550

 攻撃:155(大地の聖剣:覚醒 +340)

 ユニークスキル:【日を喰らう者】


 ニコル

 大地の守護獣:Lv80

 HP:2000 MP:1200

 攻撃:25

 防御:2000(+紺碧の甲鱗2000x32)

 ユニークスキル:【ファランクス】【超硬化】


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 鬼神メーデスとの闘いでこちらのレベルやステータスも上昇してるとはいえ、火龍王の体力、攻撃力、防御力の方が頭抜けてる。


 ニコルの【ファランクス】には時間制限があるし、攻撃面で俺たちは決定力不足なのだ。


「そうじゃあ!とくに火龍王はのぉマグマに浸かることでHPを回復できるでな、弱ったところで火口に逃げられたら永遠に倒せんぞよ」


 さすがニコル、わかってるじゃないか。そうなんだよ、特に火龍王には翼があるからな、飛翔で逃げられたらどうにもならん。


「あのね、それは分かってるのよ、そうじゃなくて、私の役割がなんで()()()()()()なのかってことよ!」


「あーそっち?だって文献に()()()()()()()()()()()()()()()()って書いてあったし、途中の村でも美女の生贄によって沈静化させた歴史が残ってたろ?」


「だーかーらー!なんで私がやるのよ!美月だっていいじゃない!私はトカゲも龍も苦手なのに!」


「いやいや、アルティナさん、その役に立ってない美貌を生かすチャンスですよ!美月よりも君のその大人の魅力で、ぐふぁ!」


 そう言ってる途中にアルティナに腹をグーで殴られた。なんなんだよ、だって本当のことだろ。


「拓海……女の子のココロをわかってない」


 美月がじとりと俺を睨んでいる。


 そんなのわかりませんよ、そこいらにいる『彼女いない歴=年齢』のゲーム好き高校生ですもん。


「仕方がない、私が説明する」と美月がドヤ顔をするので任せることにした。


「いい?アルティナ……あなたは頭も良くて魔法の技術も天才。顔とスタイルも抜群、わたしはいつも羨ましいって思ってる。」


「え……そんな風に思ってたの美月……」


 アルティナは少し顔を赤らめてる、いいぞ美月もう一押しだ。


「でもね……その美貌、ぜんぜん生かせてないよ。異世界的に見ても、美人の無駄使い。つまり、無駄美人だと思う。だから、頑張ろう。」


 美月さん、そこまで言う必要ないんじゃないの?アルティナさん氷みたいに固まってるじゃないの、なんなのこの子は、コミュ症もここまでくると芸術だろ。


「きゃはは!こむすめは面白いのぉ!がんむばるのじゃ無駄美人よ!きゃは、うぎょあ、やめ、やめよ!」


 ニコルはイガグリみたいなスタッフの先端で思いっきり殴られてる。まあこいつはほっといても大丈夫だ。俺の分まで、気が済むまで好きなだけ殴ってくれ。


 ニコルをどつきまわしたおかげで、アルティナは少し落ち着いたようで、ようやく()()()()()()を受け入れてくれた。


 俺たちは、細かな役割分担を打ち合わせした後に、満月が出てくるまでの残り時間を、それぞれでゆっくり休むことにした。





 俺は寝転がるのに丁度よい岩場を見つけたので、そこであおむけになって空を眺めていた。こうやって上を見てると、危険な火山火口にいるってことをちょっと忘れることが出来るから不思議だ。


 すると隣に美月がやってきて同じように寝転がって空を眺めはじめた。


 美月とこうやって並んでると、子供の頃に、妹と一緒に公園で寝転がってたのを思い出すな。



「美月……そういえば、先にこの世界に転移したっていう兄さんの、勇者の足取りって分かってるのか?」


 しばらく沈黙したあと、美月はボソリボソリと話し始めた。


「うん……兄は魔王と戦ったみたい。でも魔王は生きてるからたぶん負けたんだと思う」


 そうか、そうだよな、だから美月も転移してきたってことだんもんな。でも確か……兄を助けたいって言ってたよな。


「でも、まだ生きてるってことなのか?」


「…………わからない、でも兄の声を聴いたの」


「ん?どこでだ?それは俺たちでも行ける場所なのか!」


「……いずれ行けると思う。いいえ、必ず行くことになる。」


 必ず行くことになるって、まさか。


「それって、魔王のところか?」


「……うん、魔王と戦ってる時に兄の、日々人(ひびと)の声が聞こえた」


「おい……まさかそれって」


 日々人(ひびと)か、美月の兄さんは、そんな名前だったんだな。しかし魔王との闘いの最中に聴いた?ってことは魔王と日々ひびとが何か関連してるのか?もしかして同一人物ってことはないよな。


「いいえ、日々人(ひびと)が魔王になったわけじゃない。たぶん、魔王に魂を封印されて……利用されてるんだと思う」 


「なんでそう思ったんだ」


日々人(ひびと)の声は私に”その聖剣を捨てて、ここから逃げろ”って言ったの……」


 なんだって?じゃあ兄の日々人(ひびと)は、何らかの方法で魔王の近くに封じられてるってことか、魂を封じる力って、たしか聖剣の持つ能力のひとつだったよな。


「聖剣が怪しいって……そういう理由(わけ)があったんだな」


「……うん、それと、もう一つの聖剣を持ってたのが()()だよ」


 なんだと……魔王が?この世にもう一本存在する聖剣を持っていただって?どういう事なんだ、何が起こっている?なにか嫌な予感がするぞ。


「美月……それは一旦、俺たちだけの秘密にしといた方がいいな、たぶん王家の関係者の中に、何らかの事情を知ってる奴が居ると思う。この件に関しては慎重に探ろう、俺の直感がそう言ってる」


「……うん、そう言うと思ってた。だから拓海には話すことにしたの」


「わかった……兄さん、日々人(ひびと)を必ず救おう」


 美月にまで、俺みたいな辛い思いをさせたくないからな。兄妹を失うなんてのは本当に、まじで、二度と見たくない。


「ねえ……拓海って、もしかして妹、いる?」


「え?……あ、うん、でも、()()だな、正確には」


「……ごめん、つらいこと聞いちゃったね」


「いいや……いいんだ、だいぶ昔の話さ」


「そっか……わたし、なぜか、拓海には色々話せる……その理由がちょっとわかった気がする」


「……そっか、いつでもなんでも話してくれよ、俺でよければな」


「……ありがとう。」


 美月のその言葉に、俺も心もどこか安らぎを感じていた。懐かしいような、少し許されたような、不思議な気持ちが胸に広がる。

 俺たちが見上げる空は、夕闇に染まり始め、やがて夜の幕が下りる準備をしていた。


 空が徐々に暗くなると、無数の星が輝き始めた。星たちが美しい光を放つ中、まるで世界が静寂に包まれているかのような幻想的な雰囲気が漂う。俺はその美しさに心を奪われ、言葉を失っていた。


「拓海、見て……月が出てきたよ」


 美月が指差す方向に目をやると、遠くの地平線から銀色の光が現れ始めた。徐々にその光が強くなり、やがて満月が姿を現す。月明かりが辺り一面を柔らかく照らし、岩場や山の斜面が銀色に輝く。まるで別世界に迷い込んだかのような美しい光景だった。


「火龍王が動き出すかもって時間なのに、本当に綺麗だな……」


 俺はその光景に目を奪われながら呟いた。美月も同じように見入っている。月明かりが彼女の顔を優しく照らし、その瞳には何か決意のような光が宿っている。


 しかし、次の瞬間、火口付近から唸るような音が聞こえた。地面からも微かに震える感覚が足元に伝わってくる。


「拓海……そろそろかも」


 美月が緊張した声で言う。俺も同じくその異変を感じ取っていた。火龍王ムスターファが目覚めようとしているのだ。


「うん、動き出すぞ。準備をしよう。」


 俺たちは急いで立ち上がり、周囲の状況を確認する。月明かりが照らす中、火山の火口からは時折赤い炎がちらつき、黒煙が立ち昇っている。まるで山そのものが目を覚まし、怒り狂うかのような気配を放っていた。


「アルティナ、ニコル。準備はいいか?」


 俺が呼びかけると、少し離れた場所で休息していたアルティナとニコルも立ち上がり、こちらに駆け寄ってくる。


「火龍王ムスターファが動き出す前に、アナタのスゴイ大作戦の配置に各自移動しましょう。」


 アルティナが冷静な声で言う。俺たちは火口の周囲に集まり、作戦準備を始めた。


 火龍王ムスターファとの決戦が、まさに今から始まろうとしていた。

 

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