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姉ちゃん全集  作者: 神村 律子
高校三年編
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その二十八

 僕は磐神いわがみ武彦たけひこ。高校三年生。


 幼馴染のクラスメートである都坂みやこざか亜希あきちゃんと交際中だ。


 その亜希ちゃんに、中間テストを頑張った「ご褒美」をたくさんもらい、僕は浮かれていた。


 クラス中のみんなが、僕を見直してくれて、僕は勉強が好きになりかけていた。


 これも全部亜希ちゃんのおかげだ。


「どうしたの、武君? ニヤニヤして」


 訝しそうな目で亜希ちゃんに言われた。


 しまった、また思い出し笑いをしていたみたいだ。


 今、僕と亜希ちゃんは、図書室で勉強中。


 しかも誘ったのは僕。


「ご、ごめん。ボンヤリしてた」


「ボンヤリしてたにしては、嬉しそうに笑っていたけど?」


 亜希ちゃんの視線が痛い。


「あ、その、亜希ちゃんのご褒美を思い出していたんだ」


 僕はうっかり本当の事を言ってしまった。


「もう、武君たら、エッチなんだから」


 そう言いながらも、亜希ちゃんはニコニコしている。


 僕は頭を掻き、ノートに目を向ける。


「ここなんだけど」


「ああ、それはね」


 亜希ちゃんの顔が近づく。僕は思わず彼女の唇に見入ってしまう。


「でね、こう。それから、ここでこの公式を使ってね」


 亜希ちゃんは僕の視線には気づかず、説明を続けている。


 いかん。勉強に戻らないと。


 僕は亜希ちゃんの話に集中した。




 そして、下校。季節はすっかり夏。


 我が校は、衣替えを終え、みんな涼やかな制服になっている。


 女子達の制服は、近隣の高校の中でも人気で、制服目当てで受験する子もいるらしい。


 そういう事に関心が薄かった僕は、一年と二年の時の亜希ちゃんの夏服を全く覚えていなかった。


 三年になってからの衣替えで、


「ウチの高校の女子って、何て可愛い制服を着てるんだろう!」


と改めて思った。って言うか、気がついた。


 亜希ちゃんは何を着ていても可愛いし、ファッショナブルだ。


 でも、やっぱり制服を着た亜希ちゃんが一番可愛い。


 僕は決して制服マニアではないけれど、そう思う。


 そして何より、亜希ちゃんはさり気なくお洒落なのがいい。


 本当にこれほどの女の子と付き合っているんだと思うと、僕は幸せだと感じた。


「じゃあ、また明日ね」


 亜希ちゃんと亜希ちゃんの家の前で別れ、僕は自分の家に帰った。


「わっ!」


 僕は玄関に入るなり、叫んでしまった。


「何? 文句ある?」


 そこには、姉が立っていた。


 いくら姉が怖い僕でも、玄関に姉が立っているくらいで叫んだりしない。


 そこまで姉が怖い訳ではないから。


 叫んだ理由は他にある。


 姉はどういう訳か、高校の時の制服を着て、玄関の姿見の前でポーズを決めていたのだ。


 しかも、スカートは丈を詰め切ったような短さ。当時のままだ。


 何のつもりだろう?


「べ、別に文句なんてないよ」


「どう? まだ高校生に見えるかな、姉ちゃんも?」


 僕は唖然としたまま、姉を見た。


「衣替えで服を入れ替えていたら出て来たんだ。懐かしくなって、着ちゃった」


 僕は無言のまま姉の横をすり抜け、階段を上がる。


「おい、何か言え!」


 後ろで叫ぶ姉を無視して、僕は自分の部屋に入った。


 でも。


 亜希ちゃんも可愛いけど、姉ちゃんも可愛い。


 まだ高校生で通りそうだよ。


 そう言ってあげたいけど、そんな事を言ったら、あのまま出かけそうなのでやめておこう。

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