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姉ちゃん全集  作者: 神村 律子
高校三年編
28/313

その二十七

 僕は磐神いわがみ武彦たけひこ。高校三年。


 悲惨だったと思われた中間テストは、


「世界が滅びる!」


とクラスメート達の多くを絶叫させるほど、高得点だった。


「武君は、やればできる子なのよ」


 幼馴染で、クラスメートで、僕の救世主である都坂みやこざか亜希あきちゃんが言ってくれた。


 英語のテストを返されたあの日、亜希ちゃんから思わぬご褒美をもらい、次の日に国語のテストを返されて、またご褒美をもらって、僕は有頂天になった。


 亜希ちゃんのご褒美が連日続いて、もう頭が爆発しそうだった僕は、思い切って亜希ちゃんに尋ねた。


「どうして、あんなご褒美をくれたの?」


と。


「だって、私達、付き合ってるんだよ? 武君て、私の事、嫌いなのって思うくらい、何もしてくれないんだもん」


 亜希ちゃんの答えは、また僕を動揺させた。


 そうなの? 付き合っていたら、その、えーと、キスとかしていいの?


「女の子にここまで言わせて、武君て、ホント、意地悪ね」


 そう言いながらも嬉しそうな亜希ちゃんに、僕は惚れ直してしまった。


 そんな感じを引き摺ったまま、僕は家に帰った。


「お帰り」


 姉がいた。何故か仁王立ちで出迎えられた。


「な、何、姉ちゃん?」


 僕の身体の中のセンサーが作動し、咄嗟に身を引く。


「何よ、それ? 私が噛み付くとでも思ったの?」


 いや、殺されると思ったんだよ、とは決して言えない。


「またあんた、隠し事してるでしょ?」


「へ?」


 全身から嫌な汗。姉は悪魔のような笑みを浮かべて、


「全部わかってるのよ。観念しなさい」


 何、この威圧感? この圧倒的な迫力。怖過ぎる。


「さあ、言いなさい」


「う、うん」


 僕は本当にバカ正直だ。亜希ちゃんにご褒美をもらった事を話してしまった。


「……」


 姉は何故か目が点になっていた。


「そ、そんな事があったの?」


「ええ?」


 ウソ、違うの? 引っかかったのか、僕は? うわあ、参ったなあ……。


「よし、わかった。姉ちゃんもご褒美をあげよう」


「い?」


 僕はまた後ずさりした。


「何よ、亜希ちゃんのご褒美はもらえて、姉ちゃんのご褒美はもらえないって言うの?」


 いや、普通、姉が弟にそんなご褒美あげないでしょ?


「四の五の言わず、目を瞑りなさい!」


「は、はい!」


 僕は恐る恐る目を瞑った。


「行くぞ」


 キスをするのにそんなかけ声はないと思う。


 何故か、もの凄くドキドキする。まずい。そんな感情はいけないんだ。


「あいででで……」


 次の瞬間、僕の唇を衝撃が襲った。


「ギャハハ、この変態め!」


 目を開けると姉が大笑いをして僕を指差している。


「グガ……」


 ふと見ると、唇に巨大洗濯ばさみが……。


「何するんだよ、姉ちゃんは!?」


 僕はすぐさまそれを外し、姉を睨んだ。目に涙を一杯溜めて。


「お前が変態だからだよん」


 姉は笑いながらキッチンへと消えた。


 確かにそうかも知れない。


 姉の冗談に乗った僕は、姉のご褒美を期待したのだ。


 反省。

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