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姉ちゃん全集  作者: 神村 律子
大学三年編
218/313

その二百十七(亜希)

 私は都坂みやこざか亜希あき。大学三年。


 先日、私の彼の磐神いわがみ武彦たけひこ君の亡くなったお父さんの実家の事で、あれこれあり、武君始めお姉さんの美鈴さん、お母さんの珠世さんも大わらわだった。


 そして、一息つけた時、同じ大学の経済学部に通う長須根ながすね美歌みかさんから連絡があり、ダブルデートをする事にした。


 行き先は遊園地。一緒に楽しむ事も、別行動もできる場所だからだ。


 私と長須根さんは、遊園地に行くまでいろいろとお喋りしたのだが、武君と長須根さんの彼の間島ましままこと君はほとんど話していない。


 武君は初対面の人と話すのが苦手。間島君もそうなのかな? 本当は何度か顔を合わせているのだけれど、二人で話した事はないから、話題がないのかな? 二人はちょっと似ているような気がする。


 


 そして、目的地に到着した。


 メリーゴーラウンドには、それぞれカップルに別れて乗った。


 四人でいると、私と長須根さんばかり話してしまうので、そうしてみたのだ。


 案の定、間島君は長須根さんとだと笑顔が出て、よく喋っていたようだ。


 それに反して、武君は私と二人になっても口数が少ない。


「最近、亜希は磐神君に圧力かけ過ぎなんじゃない?」


 先日、久しぶりに会った親友の須佐すさ姫乃ひめのちゃんに言われた。そうなのかなあ?


 そんなつもりは全然ないんだけど。武君に訊いても、何でもないって言うのは目に見えているし。


 長須根さんに相談してみようかな? 似た者彼氏と付き合っているから、何かヒントを得られるかも知れない。


 そこで、お手洗いに行った時、長須根さんに提案してみた。


「武彦と間島君、何だか距離がある感じだから、ちょっと二人きりにしてみない?」


 すると長須根さんもそう思っていたのか、


「そうですね。間島君、人見知りするのですけど、磐神先輩になら、打ち解けられると思います」


 すぐに賛成してくれた。第一段階はこれでクリアだ。


 


 ホラー系のアトラクションを出たところで、小休止する事にした。


「アイスクリーム食べよっか?」


 長須根さんを誘ってその場を離れ、武君と間島君を自然に二人きりにする事に成功した。


 そして、アイスクリームのお店を目指しながら、私は長須根さんに本題を切り出した。


 長須根さんは少し驚いていたようだが、


「都坂先輩の考え過ぎだと思いますよ。コンビニで一緒に働いている時も、先輩の話題は都坂先輩の事ばかりですし」


 そんな事を言われるとは思っていなかったので、顔が火照った。


「私も、間島君とそんな関係になりたいなって思いました」


 長須根さんも顔を赤らめて言った。そして、


「それに、間島君にも、三つ年上の綺麗なお姉さんがいるんですよ。もう、嫉妬してしまうくらい仲がいいんです」


「ええ?」


 それはちょっと驚き。武君と間島君に何か似たような雰囲気は感じたけど、そこだったとは思わなかった。


「だから、磐神先輩となら、間島君も共通の話題ができて、話が弾むのではないかと思ったんです」


 長須根さんは心中複雑そうな笑顔で言い添えた。何だか長須根さんが一気に身近に感じられる。


 武君と打ち解けられるのは嬉しいのだろうけど、その話題がお姉さんだというのが少し引っかかるのかも知れない。


「長須根さんの気持ち、よくわかるわ」


 溜息が出てしまう程彼女の心の内が理解できた。


「間島君のお姉さんの誕生日が来週の土曜日なんです。それで、何をプレゼントしたら喜ぶかなんて訊くんですよ」


 長須根さんは可愛くほっぺを膨らませて言う。ますます共感してしまう。


「だから、磐神先輩に訊けばって言ったんです。そしたら、ダブルデートしようって言い出して……」


 長須根さんは悲しそうな顔になった。お姉さんのためにダブルデートなのか。


 それは彼女としては、いたたまれないわね。それもよくわかる。


「それから、これは私の思い過ごしかも知れないんですけど、間島君、都坂先輩に憧れているみたいで……」


「ええ!?」


 それも驚いた。そう言えば、間島君は武君とはほとんど話さなかったけど、私には時々話しかけていた。


 何だかちょっと複雑だ。


「多分、間島君は年上の女性とは普通に話せるんですよ。お姉さんがいるから。大学が違うとそういうところがちょっと心配なんです」


「なるほどね……」


 私は苦笑いをするしかなかった。それにしても、間島君のお姉さん、美鈴さんとお誕生日も近いのね。


 奇遇なんていうレベルじゃない程だ。


「そろそろ戻ってみましょうか。打ち解けた頃でしょ?」


 アイスクリームを買い、私達は武君達のところに戻った。




 すると、思っていた以上に二人のシスコンはにこやかに話していた。


 長須根さんもそうだろうが、私も複雑な感情が湧いて来た。


「気持ち悪いな、二人共。男同士で何ニヤけてるのよ」


 少し嫌味を加えて言ってみる。するとこっちが驚くくらい武君と間島君は狼狽えた。


「男子がニヤニヤしているのは、エッチな事を話していた時だって聞いた事があります」


 長須根さんは少しだけムッとしているようだ。間島君が更にビクッとした。


「エッチな事なんか話してないよね、間島君?」


 武君が慌てて言った。


「ええ、してませんよね、先輩」


 間島君は顔を引きつらせて応じている。


「ま、信じてあげましょうか」


 長須根さんと頷き合って、シスコンコンビを許す事にした。


 長須根さんとはこれからも密に連絡を取り合おうと思った。

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