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姉ちゃん全集  作者: 神村 律子
高校二年編
12/313

その十一(姉)

 私は磐神いわがみ美鈴みすず。女子大生。恋人あり。そして、ヘタレな弟あり。


 今日は久しぶりに私のダーリンである力丸憲太郎君とデート。


 何だか知らないけど、弟の武彦もデートらしい。


 相手は都坂みやこざか亜希あきちゃん。武彦やつの幼馴染だ。


 ホントに鈍感な男だから、亜希ちゃんの思いに最近ようやく気づいたらしい。


 我が弟ながら情けない事この上ない。


「どうしたのさ、美鈴? 元気ないね?」


 リッキー(憲太郎君の事よん)が尋ねる。


「そんな事ないよ」


 私は満点笑顔で応じる。するとリッキーは、


「武彦君の事が心配なの?」


「べ、別にィ」


 私はズバリ見抜いてくるリッキーにビクッとした。


「でもさあ、そろそろ解放してあげないと、武彦君が可哀相だよ」


「え? 解放?」


 何の事? 武彦は誰かの奴隷?


「僕も姉貴がいるからわかるんだけど」


「……」


 私はリッキーのお姉さんが苦手。


 別に嫌な人ではない。むしろ嫌な人の方が対処のしようがある。


 良い人過ぎて、困ってしまうくらいなのだ。


「縛っているつもりはないんだろうけど、弟ってどうしても姉を見て育つからさ、恋人ができると、姉貴の目が気になるんだ」


「リッキーもそうなの?」


「そうだよ」


 その言葉にドキッとする。あのお姉さんと比べられてるのかな?


「それに、美鈴も僕の姉貴が気になるだろ?」


「うん……」


 リッキーはニコッとして、


「でもさ、姉貴さ、酷い事言うんだ」


 ギク。何? 私は陰で何を言われているの?


「お前が美鈴さんと別れても、私は彼女と友達でいるからね、だってさ」


 私は涙が出そうになった。やっぱりリッキーのお姉さん、良い人過ぎて勝てない。


「だからさ、美鈴もあの子を応援してあげないと」


「そ、そだね」


 私が武彦に同じ事を言うと、多分あいつには脅しに聞こえるだろう。


「それにしてもさ」


 リッキーが私をしみじみと見て言う。


「ちょっと挑発的過ぎない、今日の格好?」


 柔道家のリッキーには刺激が強かったみたいだ。


 スカートはどこに座っても丸見えになりそうなデニムのマイクロミニ。


 革のジャケットのファーも妖艶な雰囲気だ。


「やっと気づいてくれたのね、リッキー。いつも私がどんな可愛いカッコして来ても、何も言ってくれないから」


「え? そうなの? いつも可愛いからコメントしなかっただけだよ」


 リッキーの言葉に私は顔が真っ赤になるのを感じた。


「お姉さんが羨ましいな」


 私は火照る顔を覚ましながら言った。


「どうして?」

 

 不思議そうな顔で私を見るリッキー。


「こんないい弟がいて」


「ハハハ」


 リッキーは陽気に笑った。そして、


「武彦君も良い弟だよ」


「そ、そうかな」


「そうだよ。お姉さん思いでさ」


 うーん。「お姉さん、重い」かも知れないけど。




 リッキーは午後から大会の練習があるので、デートはランチを食べて終わり。


 ちょっと寂しいけど、それくらいの方が次に会う楽しみが倍増する。


 私は駅に向かって歩いた。


 あれ? あの間抜け面は?


 カフェのオープンテラスにいるのは、我が弟武彦だ。


 亜希ちゃんはどうしたの?


 気づかれないように通り過ぎないと、後をつけて来たと思われる。


 よし、気がついていない。


 何か視線を感じるけど、振り返れない。


 バカめ。姉のミニスカートに見とれてるんじゃないわよ。


 亜希ちゃんに言いつけるぞ。


 でも何か嬉しいのは、内緒。

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