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最終話

急ぎアダマント王宮へと向かっていたグリシヌが、王宮にたどり着いた時、建物の火は消えていたが、まだ燻っているようで、独特な臭いが彼の鼻をついていた。

そして、彼の目に映ったのは、怪しげなマスクで顔を覆った孔雀石(マラカイト)の騎士達だった。


そのまま駆け抜けるか、様子を見るか……しばし悩んだグリシヌの耳に、自分を呼ぶ声が届いた。

オリバーだった。 彼は()()()を振り撒く事で、この場を納めようと奮闘していた。


駆け寄ってきたオリバーは「グリシヌ様、これを」と言って、マスクをグリシヌに差し出した。 痺れ粉から、身を守るマスクだ。


オリバーは、ヴィオラを取り巻く不審な出来事の一件から、蒼の一族に不信感を抱いていた。 そこに、公爵のルイ王子に対する異様な執着……。


そこで、父親のオリビン侯爵と共に、同じく中立の色が強い黄水晶(シリトン)騎士団のトパジオス公爵に意見を求めていたのだった。

そこは、ジョシュアが所属している騎士団だ。


オリバーは「もうすぐ黄水晶(シリトン)騎士団が来るはずです」とグリシヌに告げる。

と同時に、地響きが鳴り渡り、連絡を受けた黄水晶(シリトン)騎士団が駆け付けた。


「別部隊が、裏から侵入を試みています」

黄水晶(シリトン)騎士団の部隊長が告げる。


彼らの協力の元、マスクを装着したグリシヌとオリバー達は、(こころざし)を共にする孔雀石(マラカイト)騎士団と共に、蒼が……サフィフル公爵が占領したアダマント王宮へと突入していった。


※※※


サフィルス公爵の反逆事件から、五年の月日が経った。


焼け落ちた王宮は再建され、事件の面影もない。

しかしながら、命を落とした者は数多く、近衛兵は新たに編成された。

言うまでもなく蒼の騎士団は解体、再編成されている。


命を削りながら、ラウルを撃ち取ったヴィオラは、タイミング良く王宮駆けつけたグリシヌにより、魔力の提供を受けたが、一ヶ月程昏睡状態が続いた。

そして、連絡を受け駆けつけたアンジェリカにより、無事、一命を取り留めた。


ヴィオラを守り肩を負傷したアジュールは、二度と剣を振るえない身体となったが、いずれフェリクス国王の政務の一端を担う為に、宰相補佐として経験を積んでいた。

また、ラウルに背後から突かれた、反逆の首謀者であるサフィルス公爵は、そのまま断命した。


壁にめり込んでいたラウルは、反逆の責任を問われ処刑された。また、同調していた蒼の貴族達も処刑されるか、爵位を取り上げられた。

また、蒼の騎士団員で同調した者達も、当たり前だが処罰を受けた。


ルイ王子と婚約していたメイジー嬢は、父であるマーガライト侯爵が、一連の事件に多少なりとも関与していた為、婚約破棄となった。


※※※


サフィルス公爵反逆事件が起きた後、ヴィオラを見舞う為、馬車で王都に急ぎ戻っていたリーラは()()をしていた。


それは、モノクロでもセピアでもなく、カラーに色づいた鮮やかな未来だった。


幸せそうに微笑むヴィオラの傍らには、やはり笑みを称えたライリーが、愛おしそうに彼女を見つめ、そして、彼らの回りを三人の幼子が、クルクルと駆け回っていたそうだ。


―――そして、予知は現実となっていた。


コロコロとした笑い声が、眩しい日射しを避けるように建てられたガゼボから漏れていた。


「母様! 見て」


柔らかな赤毛を跳ねさせながら、青々とした芝の上を女の子が駆けている。 手には、母に渡そうとしているのか、スミレの花を、一輪握りしめていた。


「まぁ、ウィロー。 素敵なお花ね」そう語りかけ、女児を抱き上げた彼女は、ヴィオラだ。

側には、ライリーに抱かれた男児が二人を見守っている。

その男児は、ヴィオラに似た青紫の髪色で、利発そうな雰囲気を漂わせていた。


「やっと、三人同い年の子ができるわね」

そう、嬉しそうに話すのは王妃となったジョセフィーヌ妃。 彼女のお腹はふっくらとしていた。


「ヴィオラ、君も少し休みなさい」

ライリーが優しく、しかし反論は認めない姿勢で、彼女をガゼボの椅子に座らせる。

そして、彼女のお腹をやさしく撫でた。


幼いウィローは少しぐずるが、ヴィオラの膝に座り機嫌を直した。


彼女達が見つめる先には顔色の悪いフレイヤが、クッションに埋もれていた。

「母になるのが、こんなにキツイとは思わなかったわ……」

彼女は、ハンカチで口元を覆っている。


「大丈夫よ。後一ヶ月もすれば、体調も良くなるわ。 今は、大人しく彼に甘えていなさい。命令よ」

ジョセフィーヌは、コロコロ笑いながら視線を外に向けた。


そこには、こちらに向かって歩いてくるジョシュアの姿がある。


「ヴィオラ嬢、先程、手紙を預かった」

彼は、そう言うと彼女に手紙を渡し、当たり前のようにフレイヤの隣に座り込んだ。

その彼の手は、優しく彼女のお腹を包む。


ヴィオラは微笑みながら、受け取った手紙を開いた。


※※※


親愛なるヴィオラへ


元気にしている? こちらは、相変わらずだわ。

今度、彼と遊びに行くわ。

もちろん、子供達も連れてね。


『アカンサスの花園』を共に生き残った同士、アンジェリカより





お付き合いいただきまして、ありがとうございます。


https://ncode.syosetu.com/n6393ip/

『コーゼル子爵夫人の契約結婚』

始めました。

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