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聖都にて

フェリクス国王の執務室を出たライリーは、直ぐに父親のいる柘榴石(ガーネット)宮に向かった。

ルーベル公爵の執務室で、二人はテーブルを挟みソファーに座っている。 人払いをし、部屋には二人きり。


「父上、話があります」そう言って、ライリーは静寂を破り、()()話をした。 アメシスタス侯爵達が見た、ヴィオラが()()()()に殺される未来を。


そして、サフィルス公爵領で令嬢達が魔物に襲われた一件から、アメシスタス侯爵家の予知は、あながち間違っていないのではないか。と考えている事を伝えた。


「それで、ヴィオラ嬢を匿ってルーベル家に得はあるのか?」

公爵は、脚を組み直す。


「ユニコーンの乙女を囲え。と言い出したのは、父上ではないですか」

()()まではな。それに、今の話だと我が家は、蒼のゴタゴタに巻き込まれる事になるぞ。 お前は、紅と蒼の対立を望むのか?」


ライリーは考える。 なぜ、蒼はヴィオラを狙うのか。 そもそも、ヴィオラが狙われだしたのは……『完全中和』の能力に目覚めてから………前王やフェリクス国王の解毒を担当してから。

前王が退位しても、彼女は狙われている。という事は、次に狙われるのは()()()()()国王? 彼には()の王妃がつく。

次の王位継承権は……ルイ王子……()の妃……まさか!?


「もしや、蒼は……国政を牛耳るために?」

「さあな。 しかし、それだけでは、ヴィオラ嬢を囲う理由にならんな」

公爵は、話はここまで。とでもいうように立ち上がり、執務机の上にある書類を手に取った。


ライリーは焦る。ここで、ヴィオラを手離してはいけない。二度と会えなくなるかもしれない。


「いや、父上! 私が彼女を手放したくないのです。ヴィオラに求婚させて下さい。アメシスタス侯爵の了承も得ました」

驚いたような表情で顔を上げた公爵は、マジマジとライリーを凝視する。


「彼女は……眠っているのだろう?」

「―――ここだけの話、目覚めました。 なっ……なので蒼に気付かれる前に、我が範疇に収めたいのです」

「また、勝手な事を………。しかし、()()()()()()()()。表だって蒼と揉めたくはないからな。 おって、婚約式の日取りをきめる」

そう言うと、ルーベル公爵は重厚な皮貼りの椅子に腰を下ろした。 もう、書類から顔を上げない。ライリーを見ることもなかった。


※※※


静かに父親の執務室の扉を閉めたライリーは、焦燥感に駆られた。


どうする。どうすればいい。 彼女をアメシスタス侯爵に託された。今更、無理でしたとは言えない。かといって、そのままアメシスタス侯爵の屋敷に置けば、蒼に気付かれた時に、また襲われるだろう。

ライリーの脳内で、様々な考えが浮かんでは消え、浮かんでは消える。


そうだ、父は()()()()、と言った。 ならば、他に連れていけばいい。

とたん、雲が晴れたように思考が明確になる。 確かジョシュアの親族に聖女がいた。 聖都に行けば()()()安全が守られる。 なぜなら、聖都は不可侵領域だから。 何者も、危害を加えられない。

時期を見て、ヴィオラを公爵邸に招き入れれば良い。


そうと決まれば、早速ジョシュアに相談しよう。

ライリーは、心も晴れやかにジョシュアがいるであろう黄水晶(シトリン)騎士団へと馬を走らせた。


―――のはずなのだが、途中ジョセフィーヌに捕まり、彼女の私室に連れ込まれた。

あれこれ質問責めにされ、つい、ヴィオラを柘榴石(ガーネット)宮に招き入れる事が難しい、と嘆いた。


「兄様、ヴィオラを柘榴石(ガーネット)宮に招き入れるのは、やはり、婚約式の後の方が安全よ。 兄様、蒼の前で宣言してたじゃない。 何か仕掛けてくるかもしれないわ」

ジョセフィーヌは思いを巡らす。

「確か、そろそろフレイヤが王都に入るはず。 私からの使者として、ジョシュア様とアメシスタス侯爵邸に行ってもらいましょう。その後、聖都に向かえばいいわ。まぁ、ジョシュア様の協力がいるわね」


すぐさま、ジョセフィーヌは使者を飛ばした。


しばらくすると、廊下が騒がしくなった。 何事かと覗いてみると、慌てた様子の紅の貴族達が、公爵への取次を願い出ていた。


「何か問題でも起きたのか?」と、ライリーが廊下に出ると、彼に気付いた貴族達がわらわらと群がり、口々にお祝いの言葉を述べる。


「ご婚約おめでとうございます」

「ヴィオラ嬢の回復を祈ってますよ」


「あらあら……」と、ニマニマしながらジョセフィーヌが覗いている。

「さすがお父様、仕事が早いわ」


どうやら、知らぬ間にライリーとヴィオラの婚約の発表がされたようだ。

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