表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/64

私の人生・2

「ヴィオラ……」


後ろから声を掛けられ、ヴィオラの肩が小さく跳ねる。


「オリバー様……」

「驚かせてすまない。アジュールが植物園で待っている」

「ワザワザこちらまでいらっしゃらなくても、使いを出してくだされば」

「いや、ヴィオラの練習を見てみたくてね。ずいぶんとシールドの展開が早くなったんじゃないか?」


パアーッとヴィオラの瞳が嬉しそうに輝いた。


「まぁ、まだまだだがな」

「―――意地悪です」


オリバーは、カラカラと楽しそうに笑っていた。

「いいんじゃないか? 今まで()()から目を反らせていたんだ。 少しずつ親しんでいけば。よく()()するのは、ヴィオラの得意技じゃないか」

「やはり、良く観察すれば避けられるようになるのですか?」

「まぁ、()()()って言葉が有るくらいだからね。 攻撃する時の僅かな身体の動きに、反応できるようになるんじゃないか? あと、難しいけど、魔法軌道にも反応できるしね」


そうか。 私のやり方は間違えてはいないようだ。なんとなく満足して、ほくそ笑んだ。


オリバーは、満足気に頷いているヴィオラを見て、安心していた。 魔力が無いが為に薬剤師になったのに、その薬剤師の仕事も失ってしまった。

どう、支えていけば良いか悩んでいたが、防御魔法だけは使えるようだ。 アメシスタス家の血筋なのだろうか。


『魔力が無い』という話だったが、あの感じ……まったく無いわけでは無さそうだ。 もしかしたら、もしかするかも。

そんな事を思いながらも、ニマニマと嬉しそうに微笑んでいるヴィオラを、温かく見守るオリバーだった。


※※※


「あぁ、アメシスタス嬢。 忙しい所、悪い」


アジュールが応接室のソファーから立ち上がり、ヴィオラに近寄ってきた。 そのまま、流れるような仕草で、ヴィオラをソファーへとエスコートする。

その無駄の無い動きに、関心しながらソファーに腰を下ろす。


「今日伺ったのは、()()様の像の除幕式に、君を招待させてほしいんだ。」


アジュール様が言うには、シーズン後、初秋頃になってしまうが、守護聖母()()を祝う祭に合わせて、除幕式を行うそうだ。

「像が朽ちてしまったように、イマ様の祭も廃れてしまったが、これを機にもう一度復活させようと思っているんだ」


実の所、守護聖母イマを祝う祭は、今は収穫祭と同化してしまっていて、一部の使用人達が像のあった場所にネモフィラを植えて、細々と祀っていたそうだ。


「これからはキチンと、()()様を祀るつもりだ。その記念ともなる除幕式に是非、参加して欲しい」

「兄の許しが必要ですが、参加させて頂きたいです」


ニッコリと微笑むヴィオラに、アジュールは安心したような笑みを浮かべた。


「この後は、陛下の元に行くのだろう?」

アジュールはそう言うと、再び優雅にヴィオラに手を差し出す。 誘われる様に手を重ねると、柔らかく微笑みを返してくれた。


隣室のオリバー様に、陛下とフェリクス王子の健康観察に出向く事を伝え、アジュール様と共に植物園を出た。


遠くから見つめていた、憧れのアジュール様にエスコートされた上に、共に並んで歩く事ができて、屋敷にまで招待される。 こんなことになるなるなんて、思いもしなかった。

人生、何が起こるかわからないものだ。


※※※


「わざわざ送って下さって、ありがとうございます」


国王の間に続く部屋の入口で、アジュール様にお礼を伝えると、「後で、フェリクス殿下の所で会うと思うよ」と微笑んだ。

「それじゃ」と言い、立ち去るアジュール様の後ろ姿に見惚れていると、衛兵の咳払いが聞こえた。


頬を赤らめながら、開かれたドアから中に入ると、アンジェリカが待っていた。


前室から国王の間に入ると、重厚な艶のある執務机に向かい、国王は何やら、書類に記入しているようだった。

一見、健康に見えるのだが、よくよく観察してみれば、少し頬が()け、肌色がくすんできていた。

確実に、死神は近付いて来ているようだ。


私達の存在に気付いたようで、国王は顔を上げ手招きをする。

「待たせたかな?」

優しく声を掛けてくれるのだが、声に……声に張りがない。 胸が痛くなる。


断りを入れて、国王の手を取る。

(まだ、毒の気配がある)

ヴィオラは『完全中和』を(ほどこ)しながら、アンジェリカを見た。 私の意図に気づいたようで、隣にいる国王の護衛に耳打ちしていた。


その後アンジェリカが『絶対治癒』を(ほどこ)し、死神に微かな抵抗を示した。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ