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セレスティナ 中編

 それから数日後。

 アリシア・ソルは異世界転生漫画のヒドインの定番どおり、殿下達を篭絡するため本格的にからんでくる。その予想は大きく外れました。

 彼女は学園の入学式を欠席したかと思うと、退学届を提出してきたのです。

 私は耳を疑いました。

 彼女はただの生徒ではありません。貧しい平民ゆえ、貴族の厚意で援助を受けて入学した奨学生です(彼女を後見する大神殿長が貴族です。これこそノブリス・オブリージュでしょう)。

 それなのに一日も通うことなく退学だなんて。後見人の面子を潰す行為です。

 アリシア・ソルはなにを考えているのでしょう。漫画でわかっていましたが、やはり厚顔無恥で自己中心的な人間のようです。

 私と殿下と三人の子息達は学園長室に呼び出され、入学式の出来事に対する説明を求められました。「アリシア・ソルを大勢の前で責めたのは事実か」と。


「ソル奨学生は『ノベーラ国民として、未来の国王夫妻の不興を買ってしまった以上、なにもなかったように顔を出すことはできない』と主張しているそうですが――――」


 殿下が真っ先に進み出てお答えになりました。


「たしかにアリシア・ソルを責める形になったが、それは彼女が、平民でありながら王太子である私や、私の友人達にとりいろうと企む不心得者だったため、注意をしただけのこと。気が急いてあのような形になってしまったが、けして理由なくしたわけではない」


 すると、同席していた大神殿長が渋い表情でため息をつきました。


「アリシア・ソルがとりいろうとした。そう、おっしゃいますが。彼女が具体的にいつ、どこでそのような行動に出たのか、お教えいただけますか? 私が見てきた限り、アリシア・ソルは真面目で貞淑な娘です。なにより殿下や他の方々も、アリシア・ソルとは入学式が初対面と伺っております。なにを根拠に、そう判断されたのでしょう?」


「王太子である私個人の内情に関わるため、明かすことはできない。ただ、アリシア・ソルには、そうされるだけの根拠があった。そこは断言しよう。大神殿長が知る一面だけではなかった、としか言いようがない」


 殿下は堂々と断言されました。

 そう。アリシア・ソルは男達を手玉にとる、この漫画最大の悪女。

 それはこの世界(漫画)において、絶対の真実。

 彼女をけん制したレオ様の判断は、けして間違ってはいません。


(でも…………今は、それを他者に説明することはできない――――)


 説明するなら、私が転生してきた存在であることまで明らかにせねばならず、確実に正気を疑われるでしょう。

 けっきょく、この件はうやむやなまま終わりました。

 大神殿長や学園長は、私や殿下達の予定やアリシア・ソルの時間割を工夫することで彼女を学園に通わせようと考えたようですが、アリシア・ソル自身が登校を拒んだと聞いています。

 あるいは不登校をよそおって「殿下達に苛められました」と同情を買う作戦だったのかもしれません。あの傾国の悪女なら、その程度は考えるでしょう。

 この件をきっかけに、私の殿下への気持ちは一気に深まりました。

 これまでは「いずれ私を捨てる方だから」と抑えていたけれど、殿下が目の前できっぱりとアリシア・ソルを拒絶したことで、私の心は抑えがなくなったのです。


「くりかえすが、私の心は君のものだ、ティナ。どんな脅威が迫ろうと、私が必ず君を守る。だから不安がらず、どうか笑っていてくれ、愛しい君」


 王宮の殿下の私的空間(プライベートスペース)で定期的に開いている、個人的なお茶会で。殿下は私が持参したケーキを召し上がり、私が淹れた紅茶を飲みながら、そう約束してくださいました。


「抜け駆けなさらないでいただきたい、レオポルド殿下。セレス嬢には我々も忠誠を誓っている。いかなる魔女や魔性が襲って来ようとも即、返り討ちにして見せます」


 燃えるような赤毛のロドルフォ――――騎士団長の子息が身を乗り出せば、眼鏡をかけた宰相の子息、ニコラスと水色にちかい金髪をした大神官長の子息、イサークもうなずきます。

 今はそれぞれに見目麗しく頼もしく成長した、三人の子息達。

 彼らの瞳には私へのたしかな思慕がのぞき、私は入学式の日にそろってアリシア・ソルを糾弾した彼らに対しても、頼もしさを感じるようになっていました。


(とはいえ、完全に安心してはいられないわ)


 いっそ、今の内に密かに将来の禍根をとりのぞいてしまえないか。

 今ならアリシア・ソルは一介の平民。

 王太子や重臣の子息達なら、どうにでもできる身分です。

 気がかりは彼女の持つ聖魔法ですが、これはいずれセレスティナ(わたくし)に移る設定ですから、心配は無用でしょう。

 どうにかして彼女の悪事を暴き、悪しき本性を周囲に伝えられれば。

 そう思いましたが、事態はさらに思わぬ方向に進みます。

 二ヶ月後。各地の領主と親交を結んで将来の即位に備えるため、私と殿下の国内視察がはじまりました。

 漫画では、ロドルフォをうまくたぶらかしたアリシア・ソルが、彼を利用して無理やり視察団に加わり、道中で殿下にとりいるエピソードでしたが、彼女の姿は影も形もありません。

 私と殿下、それに騎士団長の子息であるロドルフォと宰相の子息であるニコラスは、何週間もかけて王都と地方を往復し、合間を縫って学園に顔を出しては、それぞれの勉強はむろん、お茶会や舞踏会等にもできるだけ出席して、息つく間もない日々を送りましたが、その間、アリシア・ソルが私達の前に現れることは一度もなく、気づけば二年の月日が過ぎていました。






 ある日の午後。私は手ずから焼いた殿下お気に入りのフルーツタルトを持参して、殿下とニコラス達の五人で、久々にゆったりとお茶会を楽しんでいました。

 この二年間、視察で各地をまわっていた私達ですが、大神官長の子息であるイサークは王都の大神殿に残り、修行と、父親である大神官長の補佐に明け暮れていました。

 そのため自然と、話題は各地での出来事と王都で起きた事件となります。

 私はここで久々に例の悪女、アリシア・ソルの近況を知ったのです。

 イサークによれば、なんと彼女はこの二年間、毎日のように神殿に訪れる人々を聖魔法で癒しつづけて、世間では『聖女』と呼ばれるようになっている、とのことでした。


「どういうことだ? セレス嬢の夢のお告げでは、アリシア・ソルは魔女なのだろう?」


 ロドルフォが険しい表情で身を乗り出します。


「形だけですよ」


 カップを手にしたイサークが冷ややかに断定しました。


「機会があったので、私も彼女に会ってみました。たしかに多くの患者を癒してはいましたが…………なんということはない、尊大な女です。私はてっきり、彼女が悔い改めて良き女神官に成長したのだと、認めてやるつもりだったのですが…………アリシア・ソルは拒みました。あの女は、今も昔も低俗な野心家のままです。聖女の姿は周囲をあざむく仮面でしょう。そうやって人々を油断させているのです」


「同感だ」と、ニコラス。


「私も先日、彼女と会いました。彼女が出資する新しい大学や図書館の建設が、王宮との共同事業になっており、実務の一部を父から任されていたためですが…………アリシア・ソルは、彼女を信用して協力を申し出た私の手も拒みました。後ろ暗いところがある証拠でしょう」


「まあ…………」


「なるほど。ではやはり、アリシア・ソルは魔女か」


 ロドルフォがうなずき、レオ様の表情もひきしまります。

 二人の話を聞いて、私も確信しました。

 アリシア・ソルは、やはり魔女。この漫画の悪役令嬢(主人公)セレスティナの最大の敵にして、最悪の悪女(ヒドイン)

 世間に見せる清い姿は偽りです。やはり今の内に、摘みとっておくべき禍根の芽なのです。

 ただ、気になるのは彼女の行動。

 私も漫画の情報すべてを思い出せたわけではありませんが、それでも彼女の動きが本来の展開とは大きく異なるのは間違いありません。

 この差は、いったい何に起因するのでしょう。

 お茶会がお開きになり、公爵家に戻ったあとも私は考えつづけ、認めざるを得ませんでした。

 この二年の間に、何度か脳裏をよぎった仮説。

 アリシア・ソルは、いえ、アリシア・ソル()また、私と同じ転生してきた存在。

 彼女もまた、漫画(運命)の展開を知る者なのです。

 私はぞっとしました。

 ただでさえ強力な魔女が、先の展開を知っているというチートな(ずるい)能力まで備えているのです。


「私…………勝てるのかしら…………?」


 アリシア・ソルの目的は明らかです。

 聖女のふりをして人々を欺きつづけ、いずれを篭絡する腹積もりでしょう。

 レオ様は本来、彼女に誘惑されて道を誤るキャラクター。

 アリシア・ソルが本気で誘惑すれば、意のままにできる可能性は高い。


「ああ…………っ」


 私は椅子の上で身をよじって呻きました。


「あんな魔女に…………殿下を奪われたくない…………っ」


 二人で地方をまわった、この二年。レオポルド殿下からの降るような愛情を一心に浴び、私の心は大きくレオ様にかたむいていました。

 セレスティナ(わたくし)はいずれ皇国の第三皇子と結ばれる運命(さだめ)と知りつつも、レオ様を手放したくない、あの方に愛されていたい、アリシア・ソルに渡したくないと、痛切に願うようになっていたのです。


『しょせん、口先だけのあざとい女です。セレス嬢の敵ではありません』


 昼間のお茶会での、ニコラスの言葉がよみがえります。

 私は久々に前世の記憶を思い出しました。


『口先だけのきれいごとしか言わない、あざといヒロインなんて嫌い。気高く上品な悪役令嬢のほうが格好いいわ』


 それは、前世での私の娘が、まだ幼かった頃に口にした一言。

 クラスで流行っているという漫画を読みながら、私の「どのキャラクターが好きなの?」という質問に答えた時の言葉でした。

 思えば、あの時の娘の言葉は、私の現状にぴたりとあてはまります。

 そう。本当に読者(人々)に慕われ、望まれるのは、薄っぺらいきれいごとばかり口にするヒロイン(アリシア・ソル)ではない。

 いくら人々を癒したところで、あの女の本性は悪女。まして彼女がふるう聖魔法は本来、セレスティナ(わたくし)の力なのですから。いずれ必ず馬脚をあらわすことでしょう。

 真に気高く高貴(ノーブル)なのは私、悪役令嬢(セレスティナ)のほうなのです。

 私は記憶の中の娘の言葉に励まされ、さらに、若かった頃の記憶もよみがえります。

 一時、私の心は前世へと飛びました。






 私は学生時代、何度か留学の経験がありました。私の立場では当然のことでしたが、それを理解できなかった、ある女に妬まれました。


『留学は、人生を左右するかもしれない大事な機会なのに。その価値を理解しない、特に目的もなくて「面倒くさい」なんて言う人が、実家が太かっただけで留学できて、本当に目的を持って留学したい人が経済的事情で叶わないなんて、不公平すぎる!』


 まわりの状況は思い出せませんが、たしか、そんな主張だったと思います。

 その女は成績こそ悪くなかったものの、家庭が貧しかったため留学を希望しても叶わず、その苛立ちを赤の他人である私にぶつけてきたのです。

 不愉快ではありました。彼女が留学できないのも、教育にお金をかけられないのも、彼女の親の責任であって、私の責任ではありません。彼女の経済力も、私があの家に生まれて来たことも、私の力ではどうにもならぬ、いわば天命のようなもの。世の中にはできないと認め、受け容れるしかない現実がいくつもあるものなのです。それが分をわきまえる、ということです。

 けれど若かった彼女はそれができず、無関係な私に八つ当たりしてきました。本当に理不尽な言いがかりでした。

 けれど私は黙っていたと思います。

 高貴な家に生まれた私にとって、この手の妬みや言いがかりは日常茶飯事であり、この手合いになにを言っても火に油を注ぐだけだと経験上、理解していたからです。

 やがて友人らしき女がやって来て、その八つ当たりの女は友人になだめられつつ、どこかに行ってしまいました。

 が、そのあと私は偶然、二人を見かけました。人のこない裏庭のような場所に並んで腰掛け、八つ当たりしてきた女は目を赤く腫らして、落ち着くまで友人が慰めていたようでした。


『私達、まだ大学生よ? 人生はこれから。この先何度も、逆転のチャンスはあるはずよ』


『がんばって結果を出しましょう。そして神様や偉い人達に「こっちの子にチャンスをあげておいたほうが有意義だった」って、後悔させてやればいいの。あなたならできる』


『うまく言えないけれど、あなたにはその力があると思うの。私のこういう勘は、けっこう当たるのよ、あきらめないで。あなたはきっと、誰より高く遠くに飛べる人――――』


 友人の女は屈託なく笑い、黙ったままの八つ当たり女を励ましていました。

 私は何故か、私に直接八つ当たりしてきた女より、彼女を励ます女のほうの笑顔と言葉が無性に癇に障りました。

 あとで聞くと、私の友人の中にも彼女を知る者がいました。


『意識高い系っていうの? 「卒業したら、海外で困っている人達の役に立つ仕事をしたいの~」って、本気で言っちゃってるの』


『偽善っぽいよね。いい子ぶってるっていうか、「私、あなた達とは違うのよ?」感があって。まあ庶民じゃあ、けっきょく、そんなところで自己主張するしかないものねぇ』


 友人達の言葉に私も納得します。

 そう、あれはただの強がり。

 私達のように選ばれた存在でない彼女らは、そうやって自分達の身の上を慰め合うしかないのです。弱者の傷の舐め合いです。彼女らこそ、現実というものをわかっていない。

 その後、私は人づてに、例の慰めていた女が事故によって、大学を卒業することすらなく、この世を去ったと知りました。

 むろん、夢など叶えようがありません。

 その話を聞いた時、私は肩透かしのような気分を味わい、それから確信しました。

 どれほど偉そうな言葉を並べ立てようと、あの薄っぺらいきれいごとで友人を励ましていた女は、何一つ成し遂げることなく、己の人生を終えた。

 あの女はまさに口先だけの人間、偽善者でした。

 それこそ娘の言う『口先だけのきれいごとしか言わない、あざといヒロイン』とは、あの女のためにあるような表現でしょう。

 私の中で、前世で出会った偽善者の女が今生で出会った魔女、アリシア・ソルと重なります。思えばアリシア・ソルもまた、偽りの善行で本性を隠した偽善者でした。


(アリシア・ソルには負けられない)


 私はあらためて心に誓いました。

 その矢先です。

 隣国との戦争がはじまり、アリシア・ソルも戦場に赴いたのです。

 私の聖魔法を使って聖女と崇められていたあの魔女は、さらなる名声を求め、周囲にいい顔をするため、神官達の反対を押しきって、自ら負傷兵の癒しを買って出たのです。


(この戦争は、セレスティナが聖魔法を受け継いでから起きたような…………?)


 私は首をかしげましたが、魔女の目的は予測できます。

 漫画でも聖魔法を継いだセレスティナが、その高潔さと慈悲深さから自ら戦地に赴き、負傷兵の癒しにあたって、正式に聖女として認められるエピソードがあります。アリシア・ソルはそれを真似たつもりなのでしょう。やはり、あの女は転生して来た人間に間違いありません。

 まったく、魔女らしい狡猾な計算でした。偽善者もここまでくれば、いっそ職人芸です。

 戦場で、聖魔法を持つ唯一の存在である彼女を守るため、大神殿が私兵を一隊派遣したとも聞いています。いったいあの女は自分の評価を上げるためだけに、どれほど周囲に迷惑をかければ気が済むのでしょう。人の上に立つべき高貴な人間ほど、危険時には安全な場所で守られなければならないことを理解できないあたり、彼女の性根はたしかに平民でした。

 けれど、これは好機でもありました。


(このまま、アリシア・ソルが流れ矢にでもあたって死んでくれれば…………)


 戦場です。ここでアリシア・ソルが危険にでも巻き込まれて自然に退場してくれれば、魔女による災いを未然に防げたことになりますし、私も予定されていた聖魔法を穏便に継ぐことができます。

 誰にとってもいいことずくめに思えましたが、漫画ゆえの強制力でしょうか。

 私の祈りとは裏腹にアリシア・ソルはしぶとく生き残り、さらには、もっと不愉快な報告がもたらされたのです。


「ロドルフォ達が?」


「はい、レオ様。私の父と親しい騎士からの情報ですが、戦場でアリシア・ソルを追いかけ回しているそうです」


 王宮の、薔薇の咲き誇る美しい庭園で。私はレオ様にご報告しました。

 顔を近づけて小声で話し合う私達は、傍目には、ただ寄り添い合って散歩する仲睦まじい恋人同士にしか見えないでしょう。


「ロドルフォだけではありません。王都にいたニコラスやイサークも戦場に駆けつけ、三人でアリシア・ソルを奪い合っているとか…………あれほど私に忠誠を誓っていた友人なのに…………やはり、魔女の魔力は絶対なのでしょうか?」


 私の声がふるえました。

 裏切りを予測しつつも、可愛がり、私の手元に置いてやっていた三人の若者達。

 中身のない愚か者ぞろいではありましたが、見目は良い男達に囲まれ、アリシア・ソルは今頃、有頂天になっているのでしょうか。「漫画どおり」と、ほくそ笑んでいるのか。


「不安です…………私、恐ろしい。やはり殿下も、このままあの女に…………」


「ティナ!!」


 レオ様は私の言葉をさえぎるように、その広い胸に力強く私を閉じ込めました。


「ありえない。私の心は未来永劫、セレスティナ・デラクルス、ただ一人のもの。魔女だろうが聖女だろうが、ティナ以上に愛しい女など、私には存在しない」


 殿下の美しい宝石のような緑の双眸が、私だけを一心に見つめます。


「信じてくれ、ティナ。私は全力で君を守る。アリシア・ソルにも他の誰にも、けして君を傷つけさせはしない。だから、そんな風に不安な顔をしないでくれ」


「レオ様…………!」


 薔薇の芳香に包まれ、私はひし、と殿下にすがりました。

 ロドルフォ達が魔女の魅了に陥落した以上、私にはもうレオポルド殿下しか、私を守る存在は残っていませんでした。

 なんという恐ろしい魔女! なんと恐ろしい漫画(運命)なのでしょう。

 このままレオ様も、あの女のものになってしまうのでしょうか。






 ほどなくして戦争が終わり、アリシア・ソルは国王陛下直々のお言葉と貴族位を授かるため、王宮を訪れました。そして、その儀式の中でレオポルド殿下はきっぱりと「私はお前(アリシア・ソル)を認めない」と宣言されたのです。

 私は公爵の父からその話を聞いて、レオ様をこのうえなく頼もしく感じました。

 レオ様は、そこらの愚民とは芯から異なる御方。あの方は王族にふさわしく、下賤な魔女の魅了になど惑わされない力をお持ちなのでしょう。さすがレオポルド様です。

 ちなみにロドルフォ達三名は、今回の事件をきっかけに王太子付きを解かれました。

 当然です。だって彼らは次代の国王の側近となるべく選ばれた人材でありながら、たかだか女一人をめぐって争う噂が、戦場どころか王宮にまで届いてしまったのですから。

 ましてアリシア・ソルはいずれ魔女となる危険人物と、私から散々忠告されていた女。救いようのない愚行です。

 ロドルフォなどは「あの女にだまされていたのです」と主張していますが、しょせんはヒドインのとり巻き。私がレオ様に「魔女に篭絡された者達をおそばに置いては危険です」と忠告すると、素直に従ってくださいました。

 もともとこうなる運命だったのです。私も殿下も、誰が悪いわけでもありません。

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まあこの子らの言い草が一生引きずる位腹立つのは、正直めちゃめちゃわかってしまうけどな。。 いや、後続の話を読めばそういうことが言いたいエピソードじゃないって分かっている、分かっている・・。 でも、価…
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