前編
(あ、これ前世で見た光景だ)
そんな、ありきたりの一言と共に思い出した。
目の前には王立学園の白の制服を着た銀髪美少女と、彼女を囲むように並び立って、こちらをにらみつけてくる、同じく白い制服を着た様々なタイプのイケメン達。
真ん中のひときわオーラのある金髪イケメンは、この国の王太子、レオポルド王子。
隣の銀髪美少女は彼の婚約者である公爵令嬢、セレスティナ嬢。
他のイケメン達も、宰相の息子だの騎士団長の息子だの大神官長の息子だの、良家のご子息ばかりだったはずだ。
対する私は平民の奨学生、アリシア・ソル。貴族ですらない。ちなみに制服は、奨学生の証である焦げ茶色。
レオポルド王太子はセレスティナ嬢に確認した。
「ティナ、彼女だね?」
「はい、レオ様。あのストロベリーブロンドにミントグリーンの瞳…………間違いありませんわ」
「そうか」
王太子、それから他のイケメン達もうなずき合う。
いっせいにこちらを見た。
色とりどりだが、一様に敵意を放つ瞳が私に集中する。
「さっそくだが、アリシア・ソル。私が愛しているのは、セレスティナただ一人。このデラクルス公爵令嬢セレスティナ・デラクルスこそが、私の認めた唯一の婚約者であり、正統な次期王太子妃、未来の王妃だ。君がいかなる卑怯な手練手管を用いようと、私の心はけしてゆらがない。今後いっさい、私にもセレスティナにも近づかないでくれ。もし君がわずかでもセレスティナを傷つけたと判明した時は、追放などでは済まない報いをうけさせると宣言しよう」
王太子は長台詞を一息に言ってのけると、愛する婚約者を抱き寄せた。
「行こう、ティナ。私の心は君のものだ、心配しないで」
「レオ様…………嬉しいです」
銀髪の少女は頬を染め、王太子と共に私に背を向け、すたすたと去っていく。
「おい、待て」とイケメン達も慌ててあとを追おうとしたが、私に釘を刺していくことも忘れない。
「わかったらセレス嬢に近づくなよ、尻軽女。セレス嬢はお前のような性格ブスとは違うんだ」
と、赤毛の髪の大柄な青年(少年というより青年の体格)。
「まったく、愚鈍な平民の奨学生風情が我々を篭絡しようとは、舐められたものだ。なにかあれば即報告するよう、生徒達には命じてある。君の愚劣な工作など、我々には通じない。くれぐれも行動には気をつけることだ。セレス嬢には指一本、触れさせないぞ」
これは眼鏡をかけた理知的な顔立ちの黒髪の少年。
「なにゆえ、神はこのような低俗な人間に聖魔法を与えたのか…………聖魔法は神の祝福。貴女も神に選ばれたなら、下劣な野心など捨て、精進することです。学園は婚活の場ではありません。セレス嬢の聡明さと清廉さを見習いなさい」
こちらは水色っぽい金髪の、繊細そうな雰囲気の少年の台詞。
イケメン達はそれぞれに捨て台詞を残すと、王太子と公爵令嬢を追って行った。
あとには呆然と立ち尽くした私、アリシアと、事態を見守っていた生徒達が残される。
やがて生徒達も一人、二人と入学式の会場である大ホールへむかいだし、私は覚えのある声に肩を叩かれた。
「おはよう、アリシア。なんだか災難だったわね」
横を見れば、黒髪金瞳の大人びた美少女が立っている。
「ラウラ」
「今のって王太子殿下でしょう? あなた、知り合いだったの?」
私はぶんぶんと首をふる。
「そうよねぇ、平民と王族その他だもの。誰か別の人と勘違いされたのかしらね?」
幼なじみのラウラはかるく考えているようだが、私はとうてい軽視することはできない。
「気をとり直して、アリシア。入学式がはじまるもの、早く大ホールへ…………」
「ラウラ。私、休む」
私は友人の肩に手を置く。
「気分が悪くなったの。帰宅するわ。先生方に、そう伝えておいて。お願いね」
「え、ちょっ、アリシア――――!?」
ひきとめる友人の声にかまわず、私は校門へ走った。
脱兎のごとく王立学園から逃げ出す。
当然だ、命の危機が迫っている。
私は、悪役令嬢が主役の漫画に転生してしまったのだ。
それも彼女に断罪されるゲームのヒロインとして。
この世界は乙女ゲームの中の世界だ。設定ではそうなっている。
しかし私の推測が正しければ「乙女ゲームの世界の中の、悪役令嬢に転生した主人公を描いた漫画」の世界の中だろう(ややこしい)。
たしか『婚約破棄されたけど、私は皇子に溺愛されている悪役令嬢です!』みたいなタイトルの漫画で、タイトルどおり、乙女ゲーム世界の悪役令嬢に転生して、ゲームのヒロインに心変わりした王太子に婚約破棄されて断罪寸前のところで、皇国の第三皇子に求愛され、王太子と国を捨てて皇国へ~という、定番の筋書きだったと思う。
私は、この「王太子が心変わりした相手、ゲームのヒロイン・アリシア」に転生したようだが…………このアリシアが、いわゆる典型的『ヒドイン』で、自分が乙女ゲームのヒロインである自覚と記憶があるため、最初から逆ハーレムエンドを狙って次々攻略対象達を篭絡していき、ついには王太子をも虜にして悪役令嬢との婚約を破棄させ、彼女を冤罪で処刑して、自分が王妃の座に就こうとするような、自己中の権化のようなキャラクターだった。
居並ぶ悪役令嬢+攻略対象、というカバーイラストどおりの光景を目の当たりにして、断片的によみがえった記憶だが、たぶん間違いない…………と思う。たぶん。
私はあの野心と自己顕示欲と愛され欲求が肥大したヒドインに転生してしまったのだ。
「あ゛~…………」と肩を落とす。
学園の入学式をすっぽかして帰宅したあと、私は質素な自室のベッドに座り、昨日までの記憶をさらってみた。
客観的に見て昨日までの私、そんなにひどい人間だったろうか?
たしかに幼い頃に両親を亡くして孤児院で育ったせいか、少々寂しがりやな傾向はあると思うが、イケメンに囲まれたいというほどではない。
聖魔法の才能が開花したおかげで、王立学園の奨学生になれた時は「殿下とお近づきになれるかも」と妄想したりしたが、それも学園に通う女生徒なら誰もが一度は夢見る範囲だと思う。
むしろ、初っ端から複数人でガン飛ばされて一気に冷めた。自分に集中する大勢の視線って怖い。
とにかく、記憶にある漫画のアリシアと今の自分は、けっこう違うと思うのだ。たぶん。
「私は、本当のアリシアじゃないってこと? それとも…………間違っているのは、漫画のほう…………? あるいは、漫画によく似た別の世界とか…………」
仮説を立ててみるが、証明の術はない。少なくとも今は。
「さしあたって、今すべきは…………」
バッドエンド回避、これ一択だ。
ゲームのヒロイン・アリシアには、本当に悲惨な未来が待っている。
王太子レオポルドを篭絡し、彼のとり巻きである攻略対象達(たぶん、学園で彼と一緒にいたイケメン達)をも虜にしたアリシアは、レオポルド達と共にセレスティナの冤罪をでっちあげ、彼女を処刑しようとする。
それを逆に第三皇子に断罪され、レオポルドは王位継承権剥奪のうえ、厳しい監視のもと一生、遠い荒れ地での神殿暮らし。
アリシアに至っては、顔に大きな傷をつけられたうえで、最下級の娼婦として下層の娼館行き。そこで病を移され、苦しみながら死んでいく…………みたいな感じの結末だった。
そうしてアリシアから離れた神の祝福こと聖魔法は、高貴で高潔な悪役令嬢セレスティナへと移り、彼女は新たな聖女として覚醒する~というような展開だったと思う。
なにぶん、完璧に思い出せたわけではないので細部には自信がないが、とにかくアリシアがひどい目に遭うのはたしかだったと思うし、そこは全力で回避しなければならない。
「できるだけ漫画とは違う行動をすればいいの? でも強制力とかあったら…………」
だが、さっきは入学式をサボることができた。もし強制力が存在するなら、不可能だったのではないか。
そもそも主人公のセレスティナやレオポルド達からして、初対面でヒロインを敵視するという、漫画にはなかった動きを見せているのだし。
「十中八、九、あのセレスティナも漫画のことを知っている、もと現代人よね。それで先に王太子達を攻略して、自分の味方にして…………アリシアというか私、勝ち目ないじゃない」
むこうは王太子と名門公爵令嬢。さらに良家の子息が複数。
こちらはたった一人、それも平民の奨学生。
「向こうに、こちらも漫画の記憶があって、レオポルドや他の攻略対象に近づく気はないことを伝えてみたら…………いや、無理」
最初からこちらをヒドインと決めつけ、忠告してきた連中だ。「しばらく様子をみよう」とさえ、しなかったのである(もしそうしていれば、こちらが漫画どおりの人間でないことはわかったろうに)。
下手な接触は危険だ。
逃げよう。
なにがなんでも、彼らと関わらずに済む所まで逃げ延びるのだ。
私は部屋を出た。そのまま王都の大神殿(私の住まい)の最高責任者である、大神殿長様の部屋を訪ね、面会を求める。
退学を申し出た。
「なにを藪から棒に…………」
大神殿長は戸惑ったが、私も命と貞操がかかっている。
ありったけの力を込めて訴えた。
王太子や公爵令嬢、そのとり巻きからされた仕打ち、投げつけられた台詞を説明する。
「王太子殿下と公爵令嬢は、このノベーラ王国の未来の国王と王妃。そのお二人にあそこまで嫌われては、学園に通うことはできません。さらなるお怒りや不快を買ってしまいます。せっかくの奨学生ですけれど、私は辞退します! 退学します!!」
ちなみに大神殿長は、孤児の私が学園に通うにあたって身元保証人となってくれた方だ。
そこも徹底的に突く。
「大神殿長様や大神殿を守りたいんですっ! 私のせいで、大神殿長様まで王太子殿下や王太子妃殿下に嫌われるような事態になったら、私は…………っ!!」
大げさに泣き崩れて見せ、うろたえる大神殿長から「事態を確認するから、ひとまず明日は休みなさい」という言葉を引き出す。
そのまま私は不登校の道を突き進んだ。
せっかく得た奨学生の身分や勉強の機会は本当に惜しかったけれど、やはり命には替えられない。
私は、大神殿長様が直々に王立学園に赴き、学園長達と数日間かけて話し合う間に退学届を提出し、空いた時間に自主的に大神殿の奉仕に出た。
学園を辞めたからといって、ただ飯食らいというわけにはいかない。
幸い、私の聖魔法はすでにある程度以上、自在に発揮することができる。
私は大神殿を訪れる病人や怪我人を片っ端から癒し、聖魔法を実地で鍛えてレベルアップさせ、『稀有な癒しの魔法を使える女神官』としての評価と評判、そして不登校の『実績』を積みあげた。
とにかく、漫画における『ヒドイン・アリシア』のイメージを壊すことに注力し、その手段の一つとして『善人』の評価をかき集めることに決めたのだ。
私の優位性と武器は、聖魔法。
幸か不幸か、医学の発達していないこの世界では、癒しの魔法はいくらでも需要がある。
極端な話、癒しつづけていれば『悪女』のイメージは避けられるだろうし、私の有用性をアピールしつづけることで、処刑や娼館送りといった可能性も低くなるはずだ、おそらく。
安直かもしれないが、他に方法は思いつかない。
(漫画の詳しい展開は覚えていないから、どう動けば断罪の未来を回避できるかなんて、全然わからないし…………とにかく、ひたすら治して『善人』のイメージを定着させて、悪役令嬢達とも関わらずにいるしかない!)
私は毎日、癒しの奉仕をつづけた。
噂は噂を呼んで、一日ごとに訪れる患者の数は増え、最初こそ「学園長が、王太子殿下達とは離れたクラスを用意してくれるというから…………」と、婉曲的に登校を勧めていた大神殿長達も、患者が大神殿に落としていく寄付の額が増えるにつれ、何も言わなくなる。
入学式から半年も経つ頃には、かなり聖魔法も上達して、私は世間では『癒しの聖女アリシア』の二つ名で知られるようになっていた。
王立学園に通いつづける友人ラウラの話によると、入学直後は例の王太子グループの宣言のせいで、生徒間では「あれほど非難されるなんて、アリシアとやらはどれほどふしだらな女なんだ」という評価が出回り、公爵令嬢周辺から流れてくる噂がさらに拍車をかけていたらしい。
けれど、生徒の家族や親族の中から聖女アリシアに癒してもらった者が現れ出すと「そこまでひどい少女には見えなかった」「むしろ恩人だ」という話が学園にも広がり出し、「アリシア・ソルは、本当にふしだらだったのか?」という疑惑が生まれ、やがて「すべての患者を分け隔てなく癒す聖女アリシア」の噂が世間に知れ渡る頃には、学園でも「王太子殿下や公爵令嬢達は、なにを根拠にあそこまで彼女を非難したのだろう」と、いぶかしがる者が大半になっていた。
それどころか「聖女アリシアに会ってきた」「可憐だった」「神聖だった」とミーハーに騒ぐ生徒達が増え、アリシア・ソルの再入学を望む声も大きくなり、大神殿長様や王立学園長からも「王太子殿下達とは顔を合せぬよう、時間割その他を融通するから」と勧められる。
けれど私はうなずかなかった。彼らを怒っているとか嫌っている以上に、バッドエンドを回避できた確信が持てなかったからだ。
私はさらに奉仕をつづけて聖魔法を鍛え、やがて入学式から二年が過ぎる頃には、十六歳の若さですでにいっぱしの女神官だったし、『聖女アリシア』の名と評判を知らぬ者は王都にいなかった。
そしてこの頃には、聖魔法以外の分野にも力を入れるようになっていた。
聖魔法はたしかに便利で強力だが、誰にでも使える技ではない。
早い話、私一人が死ねば失われてしまう奇跡なのだ。
次の聖者がいつ現れるか、それすら判明していない。
だから私は聖魔法で人々を癒すかたわら、医学の発展にも力を注いだ。
幸い、今の私のもとには、毎日ほうぼうから贈り物が届くようになっている。
神殿への寄付ではなく、私個人への貢物だ。
若く可憐な(なにしろ乙女ゲームのヒロインだ。容姿は保証されている)聖女には、山ほどの信奉者や求婚者が集まるのである。
あとが怖いので、できる限り受けとらずにいるが、相手の身分によっては拒否するのが難しかったり、何度注意しても神官達が勝手に預かってきて、送り主が分からなくなっていることもしばしばだ。
そこで、そういった品々を『寄付』や『援助』という形であちこちの大学や図書館にばらまき、医学の研究を進めてくれるよう、学長や館長達にお願いしてまわった。
さらに顔見知りとなった商人達にも片っ端から声をかけ、国内外から様々な薬や薬草、医学書を取り寄せてもらい、それらを研究材料として大学に送り届けていく。
周囲の人々は「聖魔法が使えるのに何故?」と不思議そうに私を見たが、私は「聖魔法がいつまで使えるか、私がいつまで生きられるか、わからないから」と答えて、さらなる協力を求めた。
悪役令嬢グループはというと、王立学園の卒業も近づき、それぞれの進路へむかって本格的に進み出しているようだ。
私が暮らす大神殿でも、国内すべての神官を束ねる大神官長の息子が、父親の仕事の補佐をするようになり、廊下で私とばったり顔を合わせる機会があった。
例の入学式の日に、
『なにゆえ、神はこのような低俗な人間に聖魔法を与えたのか…………聖魔法は神の祝福。貴女も神に選ばれたなら、下劣な野心など捨て、精進することです。学園は婚活の場ではありません。セレス嬢の聡明さと清廉さを見習いなさい』
と忠告してきた、水色っぽい金髪の繊細そうな雰囲気の少年である。
いや、二年経った今はだいぶん背が伸び、華奢だった体格もしっかりして、繊細な雰囲気を残しつつも神秘的な印象を与える大人びた顔立ちに成長している。
「久しぶりです、アリシア・ソル。入学式以来ですね」
私のストロベリーブロンドとミントグリーンの瞳を見て正体に気づいたらしい、未来の大神官長様は満足そうな笑みを浮かべて歩み寄ってくる。
「報告は聞いています。あの俗物な野心家だった貴女が、よくぞここまで悔い改め、敬虔な女神官へ成長しました。神もさぞや安堵されたことでしょう。私も今の貴方なら、認めることができます」
己を、下位の者に恵みを与える存在と信じて疑わぬ笑顔に、私は淡々と返した。
「私は、私のしたいようにやっているだけです。あなたに認めてもらう必要はありません」
言い捨て、彼の脇を通りすぎる。
未来の大神官長様はぽかんと立ち尽くし、共にいた神官があわあわと焦るのが見えたが、かまわずその場を立ち去った。
似たような出来事は、ふたたび起きた。
宰相の息子だ。
将来の宰相閣下は、卒業前から王宮に伺候して、父親である宰相付き補佐官の一人となっており、正式に文官になった時の予行演習だろう、いくつかの小規模な政策を父から任されていた。
その中に、医学専門の大学と、新たな図書館と薬草園の設立事業があったのだ。
これらは最初、私が大神殿側に働きかけて模索していた事業だったが、話を知った王宮側が「いっそ共同事業に」と協力を申し出てきたため、私も(王宮の後ろ盾や財力があれば、なにかと都合良さそう)と計算して、了承した案件だった。
私は確認や相談の席で見かける宰相の跡継ぎ息子に対し、必要な時以外は関わらない態度を貫いていたのだが、何度目かの報告や確認のあと、廊下で他に人がいないのを見計らって、彼のほうから私に声をかけてきた。
例の入学式で、私に
『愚鈍な平民の奨学生風情が我々を篭絡しようとは、舐められたものだ。なにかあれば即報告するよう、生徒達には命じてある。君の愚劣な工作など、我々には通じない。くれぐれも行動には気をつけることだ。セレス嬢には指一本、触れさせないぞ』
と言い捨てた、眼鏡をかけた黒髪の青年である。
こちらも背が伸び、あの時よりもさらに理知的な、大人っぽい艶のある美形に成長していた。
「評判は聞いている、アリシア・ソル。分け隔てなく人々に癒しを与えて慕われ、図書館や医学大学の新設に奔走していると。無学な平民の身で、よくここまでたどり着いたものだ」
青年はさらに一歩、こちらに踏み出してくる。
「セレス嬢の言葉がある。正直、私は今も完全に君の誠心を信じたわけではないが…………その努力と献身に免じて、これからも精進することを誓うなら、私も君を信用して、良き協力者となることを誓おう」
差し出されてきた手に、けれど私は自分の手を重ねなかった。
「無学な平民に、将来の宰相閣下の協力者は務まりません。神殿には私より優れた方がいくらでもおりますので、どうぞ、その方々とご協力ください」
言い捨て、ぽかんと目を丸くした未来の宰相をその場に置き去る。
脳裏に、少し前の大神官長の息子の台詞がよみがえって、
(類は友を呼ぶんだなぁ)
と、つくづく思った。