アカデミーの御影(1)
“ああー、またやっちゃった──”
俺はヘッドギアを外しながらゲーミングチェアから体を起こした。
「まあたお前のせいでクリアできなかったじゃねーか!」
隣のチェアから2年先輩の伊丹さんが怒鳴った。
「なーんで同じ間違いをするかなー」
「まあまあ伊丹君、御影君をあまり責めないように。彼はまだこのゲームに慣れてないんだから。」向かいのチェアの本山さんが慰めてくれる。
「御影君はなぜ失敗したのかよく考えて、再チャレンジで活かすようにしなければね。」十三教授が優しく言ってくれた。
今日は西暦2123年5月18日。
俺がいるのは「国立日本ゲーミングアカデミー」の十三 武教授のゼミの研究室。
メンバーはプロゲーマー養成科1回生の俺、御影 真と、同じくプロゲーマー養成科3回生の伊丹 峽先輩、大学院2回生でプロゲーマー管理・育成コースの本山 恵先輩の3名だ。
俺達が研究しているのは「VRMMO戦争ゲームが及ぼす心理的影響」ていうやつ。
大雑把に言うと「バーチャル空間で戦争ゲームばっかりやってたら、どんだけ頭がおかしくなるんだ?」ていう感じ笑
そんなクソみたいなテーマを真剣に研究しているんだ。
その研究に使用されているゲームソフトは、より実戦的なシナリオに沿って進行する「FUTURE WAR FOR PEACE 3023」という宇宙戦争が題材のVRMMOゲーム。略してFWFP。
要はバーチャル空間にダイヴして、スキャンして作った自分そっくりなアバターを操作し、色んなミッションをチームでこなしていくっていうゲーム。
ウソかホントか日本自衛軍が監修しているって噂もあるんだぜ笑
そしてここ「国立日本ゲーミングアカデミー」はゲームコンテンツや人材を日本の強力な輸出産業とするべく開校した大学で、場所は茨城県つくば市にあるJAXA筑波宇宙センターの隣り。
何で宇宙センターの隣りに建てたのかって? よく分からないが学研都市だからじゃないか?笑
子供の時からゲームが大好きで、特にVRMMOゲームでは高校の時には日本ランカーにもなったから、推薦でこの大学に決まったっていうわけ笑
安直だけど特に他にやりたい事も無かったので、まあいいかーって感じ。
「けどお前、何をミスったのか少しは分かってんの?」
「いやあー、それが全然分からないんですよねえ。広域探査レーダーに切り替えたから出力不足でレーザー砲が打てなくて・・・ドカーン!! あの場面では広域探査レーダーに切り替えないと敵を発見できないと思うんですけど・・・」
「でも本山さんはそんな指示出してないぜ?」
「それはそうなんですが・・・ じゃあ伊丹さんはどうすればいいと?」
「そりゃお前・・・ なんとか見つけるのが電測員の仕事じゃねーか!」
「そんな無責任なぁー」
「まあまあ伊丹君、御影君には確かに難しい判断だと思うわ。それじゃあねー、ひとつヒントをあげましょう。敵を発見するのはレーダーだけかしら?」
「確かに敵はレーダーに反応して攻撃してくるようだから、レーダー以外で発見して接近できれば・・・」
「そういう事。あとは自分で考えてね。」
「ええー!」
「何か、2士?」
「アイアイ、マァム!」
「リアルでそう呼ぶのは止めて! 恥ずかしいから!!」
「あはははは。」
「あと、次は0255との会合地点からのスタートにしませんか? 同じセリフを何度も言うのが面倒臭くってー。」
「それはお前が何度もゲームオーバーにしてるからじゃねーか!」
「あはははは。」
“とは言ったものの、レーダー以外の探査方法か・・・”
“それと1回目のミッションでは無かった、頭に語りかけてくるような変な疑問は何だったんだ?”