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ひきこもモゴモゴ…(仮)

「おい、アン…。これってどういうことだ?」


 そう言ってオレのステータスをアンに見せる。


「え、え?」


 全くわかっていないような顔と困った顔…その2つが丁度半々に混じり合っている。


「お前のLUKが666だということはわかっていた。だが、なんでオレのRESまで666になっているんだ?」


「しらない…そんなのわからない…」


 オレの問い詰めるような言葉に先程よりも恐怖の顔が全面に出てきてしまった。


「いや、すまない。だがこの数値は明らかにおかしいんだ。RESは主に回復の数値に影響する。オレは今までその数値に影響なく回復を…、…!!!」


 しまった、つい隠れヒーラーであることを話してしまうことだった!


「かいふく…?」


「あ、いや。アンの回復が効果が高すぎて気分までハイになってくるんだ!まるでお酒を飲んだようにな!」


「のみすぎよくない。かいふくへらす」


「お、おお。そうだな…」


 …気になる。

 オレは気になったら他のことに手がつかない性質なんだ。

 一度ギルドに戻って事務に聞いてみるか…。


「アン、クエストの途中だが一旦戻るぞ。用事ができた」


「え、あ、うん…」



 オレはアンを抱きかかえると急いでギルドに向かった。


 アンには再び宿に行ってるように指示する。




「だ、旦那ァ…血相を変えてどうしたんですかい?あの小娘が逃げたりしたんですかい?」


「はぁ、はぁ…。逃げてはないが…教えてくれ、アンの今までのクエスト記録…」


「は、はぁ…。まぁ逃げてないならいいんですがね。えーと、過去のクエスト記録ですかい?そんなの見てどうするのやら?あー、あと個人情報保護の観点から理由もなく記録を公開することが…」


「いいから!気になることがあるんだ早く!!」


 オレは凄い形相で事務員を睨みつけた。


「ヒッ…わ、わかりやした!はい、これがアンヘル=スティルの過去のクエスト記録です!」


オレは出されたレポートを奪い取って念入りにチェックする。



 …。

 クエスト総受注数3 難易度平均A+ クエスト成功率34% 敵撃破率0% クエスト貢献率1%

 平均PT人数2人 レアアイテム取得数0 レアイベント遭遇数1 転移魔石使用数1…  

 (小数点切り上げ)



 …。

 クエストは今までに3回しか行ってないのか。

 成功率が34%ってことは…、今回のオレら以外の2回とも失敗してるのか?

 レアイベント遭遇しているのにクエスト失敗とはならないだろう。

 レアイベントっていっても希少点穴だけじゃないしな。

 あ…でも転移魔石を使ってるってことは…一回は離脱してるってことか。



 オレの読みが外れた。

 てっきりこの娘は『アカシック・ライブラリ』に到達し、既に禁呪書を手にしているものだと思った。

 それくらい異常なことである、このRESは。



 …ふと気になり、今のオレのステータスを確認してみる。


 666だった…。


 てっきり、アンの近くにいないとダメとかPTメンバー中じゃないとダメかと思ったが…。

 アンとクエをクリアする条件とか…?

 いや、本人もわかってないんだ。

 考えようによっては無数にあるぞ、この状況。


 アンのクエスト記録を見たら何かがわかるかもしれないと思っていたが…。

 とにかく、こうなってしまったのはもう仕方がない。

 今の状況を整理しよう。



 オレは元々RESは低い方だった。

 拳での回復はRESに依存せず、ワンパンで55%の回復。

 しかしアンに出会ったことでRESが変化…急上昇して…?

 溢れ出るRESのため、武器にまで勝手に回復付与されてしまう事態である。

 …そう考えると、今後アンデッド以外の敵を倒す時…どうすればいいんだ?


 だってナイフにまで回復が付与されてるんだ。

 攻撃しても回復するんだったら…無限に終わらない。

 

 本来のヒーラーなら大喜びするはずなんだがな…。


 …あれ、アン本人のRESは変わってなかったよな。


 …。

 ヒーラーを夢見る幼女は、自身がその夢を叶えることは出来ず。

 周りの者に癒やし(RES上昇)の力を与える能力を持つ…。

 そしてオレはヒーラーを望んではいないのに飛び抜けてその力を発揮する。

 RESがなくてもやばかったのに、今ではもっと激ヤバなことに…。


 いっそのこと、マッスルを捨ててヒーラーになるか?


 いやいや、それは自害するも同然…。

 夢を捨てるということは生きがいを見失うだろう。


 …本当にどうしようもなくなったら…。

 それも視野にいれるしかないのか……。



 問題はあの幼女だ。

 どう考えても自分がヒーラーになるという素質は全くないだろう。

 それを伝えたらどうなる…?

 夢を諦めさせるのか?

 それが正しいことなのか…。

 間違いを正すことは必ずしも良いことであるとは限らない。

 あの子にとっての正しいことは「自分自身で決めること」だろう。

 他人からどうこう言われて夢を諦めるより、届かないことに気づいて自分から決断するのが自然。


 今はPTを組んだ仲間。

 見守ることこそ、オレの役目だろう…。



「だ、旦那…?」


 かなり長い時間考えていたのだろうか。

 事務員は心配そうにこちらを見ている。


「いきなりすまなかった。もう大丈夫だ」


 そう言ってアンのレポートを返した。


「も、もういいんですかい?何かわかりましたかい?」


「いや、わからなかったが一応確認は出来た。無理言って悪かった」


「そんなことないですよー!旦那は数少ない上客ですからねぇ…これからもよろしくお願いしますよ!」




 アンがいる部屋へ向かうが、足取りは重い。

 今後のことを考えると気が滅入る。


 マジでアンデッド以外の敵、どうしよう…。


 銃を使う?

 弾に回復が付与されてたら意味がない。

 アンを育てる?

 今日明日でどうなる話じゃない。

 他の誰かをPTメンバーに入れる?

 オレの回復とアンのRES…これらは出来るだけ隠したい。


 結果…、希少点穴しかない!!


 そうだ。

 禁呪書しかないんだ、この状況を変えるには。

 それ頼みになるのがなんとも言えないが…。


 今出来るのは不死山アンデッドクエの周回がベスト…!

 それしかない。


 しかし…、極度の疲労に襲われている。

 足りない脳みそをフル回転したからだろう。


 …今日はもう休もうか。

 だが金ももうあまりない。

 クエストを一回行けば2人分の宿泊費になる。

 …。


 今は寝よう。

 英気を養い、また明日から頑張ればいいか。


 オレは宿屋の店主に言付けを頼み、ベッドに潜り込んだ…。

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