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ミーツガール(仮)

「だから先程も言ったじゃないすかー。つい先日なんすよ?難易度A以上のクエはソロ禁止ってお達しがあったのは」


 ギルド内のクエスト受付前で、突然の引退宣言をさせられた気分だった。


「今まで俺はソロでも全然平気だったんだ。なんで急に禁止になるんだ」


「そう言いますけどね…。ソロで平気なのはここいらじゃ旦那だけっすし…。なんでも犯罪抑制のためらしいすよ?事前に張り紙もしてましたし…それにギルド総会議で決まったことなんで…諦めてくだせぇ」


 なんてことだ…。

 ソロプレイヤーにPT組ませることがどれだけ大変なことか。


 オレが受けようとしているクエストの難易度はA+。

 物理、魔法、回復とバランス良い職種が必須で3人以上のPTを推奨しているクエストではある。



 オレの戦闘スタイルは、恥ずかしながら敵をちょこちょこ傷つけて立ち回る『ちまちま戦法』。

 拳ではダメージが一切通らないからだ。

 こうした戦術を持つ者ならば、通常は弓や銃などの武器を使ったりするのだが…。

 オレのように見た目からして拳一つで戦うような男が武器を持ってたら…きっと違和感しか持たれないだろう。


 そう思われないよう、ナイフ一本のみ常備している。

 それくらいなら持っていてもは問題はないはずだ。


 

 しかしそれでもオレの思想・見た目とは全く逆の戦い方だ…。

 そんな思いとは裏腹に、攻撃を喰らっても自分を2発叩くだけで全回復だ。


 自分がやられることは皆無だが、サクサク敵を討伐できるかといえばそうではない。

 そのせいか身体中傷だらけになってしまい、それがまた強そうな男たる風格を醸し出してしまう。



「そんなわけで…誰でも良いんで2人以上のPTで回ってくだせぇ。でないとこっちも処罰の対象になっちゃうんですわ」


 …非常に面倒くさい。


 今まではクエ受給→出発→討伐→周回→…という流れでやっていたものを…。

 PTになることでクエ受給→出発→討伐→戻って生存確認→クエスト再受給→…といった行程が追加される。


 しかもドロップアイテムの分配割合の算出や、ボス討伐の貢献度まで計算しなければならない。

 そう考えるとソロは気が楽だったのだ。


「旦那ァ!こちらで仲間くらい紹介しますから!はい、クエスト待ちをしている人のリストですぜ。えーと、ほら見てくださいよこのステータス!こっちは高レベヒーラー…。こっちは高火力マジシャン…。どうすか、彩り緑すよ?」


 …。

 武闘家ランキング…。

 そんなものは知らないが断言できる。

 ヒーラーのランキングがあるとするならばダントツで俺がトップということ…。


 なにせMPがいらんのだから。

 そして殴れば回復、気合いを入れれば持続回復、やったことはないがビンタをすれば…多分対象が腐っていても生き返るだろう。



 …なんで俺は、そんなものを持って生まれたのか。

 どうして素直に純粋な力を授かれなかったのだろうか。


 例えるなら…すっごい美人なのに心が男の…?

 いや、この喩えはこのご時世ご法度か。

 だが他に良い喩えはないぞ…。


 サッカーの才能があるのに本人は野球選手になりたかった…?

 …さっきの喩えの方がわかりやすいな。



 ともあれ俺には見た目の筋肉と回復能力のセンスしかないわけだ。

 これじゃあ最強の男にはなれない。

 本当に強い男は拳一つで全てを片付ける。

 今のままではその夢は叶わない。



 だが一つだけ可能性がある。

 それは、『アカシック・ライブラリ』という書庫に眠る『禁呪書』を得ることだ。

 その禁呪書を得たものは、自分の強みを失う代わりに本当に必要なものを手に入れる事ができると言われている。


 もし、それが本当ならば…。

 俺の強みである回復能力を献上し、その代償として本当の筋力を得ることが出来るはずだ!



 しかしながら…『アカシック・ライブラリ』に到達できる確率は昔よりもかなり減少しているらしい。

 禁呪書が取り尽くされていて、残された書物が減っていることが要因だそうだ。

 それが完全になくなってしまう前に…必ず見つけ出す。

 それが今の俺の目標…。


このクエストには『アカシック・ライブラリ』最短経路である希少点穴が発生しやすい統計がでている。

 もう何度もこのクエを熟していた。

 敵の種類、出現ポイント、強さ、弱点は熟知している。



「旦那…最低でも1人はPTに入れないといけないんすよ?迷ってないで選ばないと!」


 そう言って強引に見せてきたステータス表だったが…。



「ん…!?コイツは…」



「え?…あぁ、アンヘル=スティルですか。最年少のギルド員になりましたけど未熟な小娘っすよ。魔力はまぁまぁ高いのにヒーラーなんかやるから職業の恩恵も受けられない。最大MPが低いから持久力もない。それがこんな高難度のクエを受けやがるから誰からもPTに誘われないんす。寄生は嫌われますからw」


 いや…、それはどうでもいい。

 LUK 666!?

 なんだこの悪魔じみた数値は!

 


「ら…LUKがぶっ飛んでいるが…」


「んー、取るに足りないすね。旦那はLUKを重視する派ですかい?INTよりも?STRよりも?」


「…」


「まぁ確かに異常ですわ。過去、この数値はみたことないす。だけどLUKが突出しても戦闘自体になんら意味はなさないってわかりますよね?ラッキーだけで戦闘に勝てるのはマンガくらいっすよ。アッハッハ…」


「コイツとPTを組む」


「ハッハ…えぇ!?その…マジであんま強くないっすよ?」


「…数合わせだ。それくらい分かるだろ」


「…、そ、そうすね。元々ソロで余裕なんでしたもんね。呼んできます…」



 …。

 一応LUKが高ければ会心率やレアアイテムドロップ率などが上昇する。

 しかしそれは個人にのみ適応され、PTメンバーには無関係だ。

 一つだけPTメンバーにも影響するものがある。

 それが「レアリティイベント遭遇率上昇」だ。

 恐らく、希少点穴への鍵を握っているに違いない…!




「旦那ァ、連れてきやしたぜ。ホントにいいんですかねぇ」


「えーと…『アンヘル=スティル』です。よろしくおねがいします…」


 小さい女…俺の半分くらいの背か?


「ダイモン=ストレイトだ。よろしく頼む」

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