お茶会 4
棒を変えて、第二回が始まる。
「みのりは最後ね」
「な、なんで!?」
「当たり前でしょ。アンタずるしたんだから」
「し、してないよ! してないったら!」
ぶんぶんっと手を振って否定をするみのり。
「疑わしいからダメ。さ、みのり以外は引いて」
「なんでぇ~!」
納得いかない様子のみのりだけれど、全員が無視をして棒を引く。
「あ、王様アタシだ」
二回目の王様は朱里だった。
「んじゃ、八番がメイド服着て」
「八番、自分ッス!」
勢いよく挙手をする瑠奈莉愛。
「そ。じゃあ、アリス衣装チェンジして」
「分かった」
ぱちんっとアリスが指を弾いて鳴らせば、一瞬で瑠奈莉愛の服がメイド服に変わる。
「うわぁっ!! 可愛い服ッス!!」
一瞬でメイド服になった事に驚きながらも、立ち上がってくるりと回る瑠奈莉愛。
ふわふわでふりふりのメイド服を着てご満悦の瑠奈莉愛を見て、ほっこりとする面々。
「みのり。これが王様ゲームってやつよ」
「そうよ。自分の欲望を満たすだけのゲームじゃ無いのよ」
「う、うぅ……わ、わたしには無い眩しさが……っ」
満面の笑みを浮かべる瑠奈莉愛を見て、眩しそうに目をすぼめるみのり。
「終わったんなら次。さくさく行こ」
つまらなそうな珠緒の言葉に促されるまま、第三回。
「王様」
「一がキング」
ででーんっと王様の書かれた棒を掲げる一。
「九番が一番にあーんする」
「九番、アタシ」
「一番、あたし」
「あ?」
「は?」
九番が朱里で、一番が珠緒。最悪の組み合わせが爆誕してしまった。
「「チェンジ」」
「そういうシステムじゃ無いでしょうに……」
「こういう時だけ息ぴったりね」
呆れる笑良と白奈。
チェンジが出来ないと分かると、朱里は諦めたように溜息を吐く。
「はぁ……分かった。嫌だけどやってあげるわ。仕方ない」
「は? 嫌なのはこっちなんだけど」
「は?」
「あ?」
バチバチと睨み合う二人。
「これが、陽キャのゲーム……」
「いつも通りの二人だよ」
納得するアリスにツッコミを入れる笑良。
「アリス!!」
「なに?」
「熱々のおでん出して」
朱里が何をしようとしたのか直ぐに分かった珠緒は即座に止めに入る。
「は? お菓子あんだからお菓子で良いだろうが」
「分かった」
「アリスも分かんな。絶対おでん出すなよ?」
「アリス、おでん出しな。面白いもの見せてあげるから」
「面白いもの……」
「アリスもそこに惹かれんな!! いいから絶対出すなよ!!」
「はいはい喧嘩しないの。朱里ちゃんも、お菓子でやってあげて」
話が進まないと判断した笑良が仲裁に入る。
「チッ、ほらよ」
手に持った一口サイズのチョコレートを雑に放り投げる朱里。
珠緒は放り投げられたチョコレートを上手に口でキャッチし、顔を顰めながら飲み込む。
「甘っ……」
チョコレートを選んだのは甘い物が苦手な珠緒に対する嫌がらせだ。投げやすかったからというのもある。
「今のは、あーんに入る?」
「甘さが足りないけど、まぁ良し」
唯と一のジャッジはオーケー判定。
「次行けクソが」
珠緒が不機嫌そうに言って、四回目が始まる。
「王様自分ッス!!」
四回目の王様は瑠奈莉愛だった。
ててーんっと王様の棒を掲げる瑠奈莉愛。
「で、命令は?」
「二番と三番がバニーガール姿になるッス!!」
「「アタシ(あたし)だ。いやなんでだよ!!」」
声を揃えてツッコミを入れるのは朱里と珠緒の不仲組だった。
「アリス先輩、衣装チェンジッス!!」
「分かった」
「「いや分かるな!!」」
しかし、二人の抵抗も虚しく、アリスによって二人は立派なバニーガールにされてしまう。
「似合ってる」
「嬉しく無いんだけど」
「チッ、最悪……」
「褒めたのに……」
褒めたのに悪態を吐かれたアリスは、少しだけしょんぼりした様子を浮かべる。
「次!!」
そして、矢継ぎ早に五回目が始まる。
「王様ワッタシ~!!」
ふーっと嬉しそうに王様の棒を掲げる笑良。
「じゃあ、六番が逆バニー!」
「おいエッグい事考えんなお前!!」
「無しよ無し!! 何言ってるの貴女!?」
珠緒が声を荒げ、白奈が慌てて止めに入る。
そんな二人を見て、笑良はいたずらな笑みを浮かべる。
「ふふっ、冗談冗談~♪ 六番がワタシのほっぺにキッスでお願いね?」
「わ、私です!」
おずおずと六番の棒を上げたのは餡子だった。
「餡子ちゃん! じゃあ、お願いねっ」
とんとんっと自身の頬を人差し指で叩きながら、ぱちりと可愛らしくウィンクをする笑良。
「あ、あわわわわっ」
あわわと慌てながらも、ゆっくりと笑良の元へ行く餡子。
そして、餡子はゆっくりと近付き、緊張した面持ちで笑良の頬に軽く唇を当てた。
「こ、これで終わりです!!」
「ふふっ、ありがと」
恥ずかしがる餡子を見て、笑良はふふっと楽しそうに笑う。
「みのり、これが王様ゲームのキス」
「初々しい、可愛らしいキス」
「く、くぅ……ま、眩しくて、目が……っ!!」
唯と一に言われ、眩しいものを見るように目をすぼめるみのり。
みのりが大きなダメージを受けている中、六回目の王様ゲームが始まる。
「アタシがキングよ」
六回目の王様は朱里。
嫌な予感しかしないけれど、王様の命令は絶対である。
皆が戦々恐々としてる中、朱里が命令を口にする。
「五番が一発ギャグしなさい」
「……私……」
心底嫌そうな顔をして、五番の棒を上げるアリス。
そんなアリスを見て、朱里はぷふふと笑う。
「さ、アリス、どうぞ」
「……」
アリスは渋々といった様子で動き出す。
詩のお腹の上で座っていたチェシャ猫を抱き上げ、自身の頭の上に被せるように乗せる。
「これがほんとの猫かぶり……にゃぁ……」
アリス渾身の一発ギャグ。
しかし、誰一人として笑わなかった。
しーんっと空気が静まり返る。
馬鹿にしたように笑う朱里の笑い声だけが響く。
「キヒヒ。滑ったね」
「うるさい」
チェシャ猫がアリスを揶揄うように言う。
「あ、アリス! わ、わたしはとっても面白かったと思うな!」
「みのり、それは追い打ちよ」
「アリス、お笑いの道は険しい」
「アリス、お笑いの勉強をすべき」
「ふふっ、動画撮っちゃった~」
「万バズ間違い無しね」
「私とお揃いですね! にゃん!」
「自分もお揃いが良いッス! アリス先輩! 次は狼にするッス! 狼!」
好き放題に言う面々に、アリスの顔は段々と渋くなる。
「……アリス……」
膝の方から声が聞こえてくる。
見やれば、詩が目を覚ましており、じっとしたからアリスを見上げていた。
「……これが、陽キャのゲーム……アリスには、毒……」
詩の言葉に、アリスはこくりと頷いた。
「次に行く」
粛々と、けれど、有無を言わさぬ圧を持ってアリスが言う。
そして、最後の王様ゲームが始まる。
「私が王様」
そう言って王様の棒を上げたのはアリス。
渋い顔のまま、アリスは淡々と命令を告げる。
「王様ゲーム、終了」
「ぷふふっ、言うと思ったわ」
おかしそうに朱里が笑う。
「……アリス、良くやった……」
がくっと口で言って、詩が力尽きた。
こうして、王様ゲームは幕を閉じた。
因みに、最後までコスプレ組はコスプレ衣装のままだった。そして、他の面々も全員コスプレさせられた。
アリスなりの、小さな仕返しである。本当に、小さい小さい仕返しだけれど。
SS終わり




