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魔法少女異譚【書籍化決定】  作者: 槻白倫
第8章 ■■の魔道使い

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突撃! ドキドキルームツアー! 2

インフルでぶっ倒れてました。

あと、プロットやらなんやらかんやらで。

ゆっくりと更新していきます。

 朱里に連れられ向かった先は、一軒のマンションだった。


「ハイ到着~」


 春花には覚えの無いマンションだけれど、朱里は慣れた様子でエントランスに入ってインターフォンを押す。


 ややあって、インターフォンから聞き覚えのある声が聞こえて来てエントランスのドアが開く。


「さ、行きましょう」


「うん」


 朱里に促され、春花は朱里と一緒にマンション内へと入る。


 エレベーターで上へ上がり、とある部屋の前まで行く。そこでインターフォンを鳴らせば、ややあってから扉が開いた。


「いらっしゃい。さぁ、上がって」


 二人を迎えたのは私服姿の白奈だった。


 部屋着ではないのであろう事は一目で分かるくらいに、白奈の服装はしっかりしていた。二人が来ると分かったから着替えたのだろう。


「おじゃましまーす」


「おじゃまします」


 白奈に促され、二人は姫雪家に上がる。


「それにしても、急だったからびっくりしたわよ。急いで片付けたんだから」


「アンタの部屋は別に散らかってないでしょうよ」


「それでも、人を迎えるってなったら掃除くらいします。それに、朱里ならともかく、有栖川くんの部屋作りの参考ってことなら尚更ね」


 白奈の言葉を聞いて、ようやく春花は得心する。


 何せ、此処まで何も聞かされずにつれて来られたのだ。ルームツアーと言うから、そういう展示会にでも行くのかと思っていた。


「そう言えば、ご家族は? アンタ一人?」


「ええ。お父さんは会社の人と出掛けてるわ」


「そう……」


 ノリと勢いで白奈の家に連れて来たは良いものの、姫雪家と春花の確執をすっかり失念していたので内心で安堵する。


 仲良くはしているけれど、二人の関係は奇妙で複雑だ。軽々に家に押し掛けるべきではなかったと反省する。


「ねぇ、美奈ちゃんにお線香あげても良い?」


 ともあれ、来たからには礼儀は尽くす。


 黒奈の事は良く知らないけれど、美奈は餡子を庇って亡くなった。朱里が白奈と春花の事情をある程度とは言え知っている。とは言え、朱里が春花と白奈の事情を知っていると、春花は知らない。加えて言えば、白奈が春花がアリスである事に気付いている事も知らない。


 春花としては黒奈や美奈に線香だけでも上げたいところだろうけれど、どちらも切り出す事は難しいだろう。なにせ、関係性が無いのだから。


 だから朱里から切り出した。美奈とは直接の面識は無いが関りはある。お線香を上げたいと言い出すのは不自然ではないし、朱里の意をくめない程白奈は察しが悪くない。


「えぇ、あの子も喜ぶと思うわ」


 白奈は笑みを浮かべ、仏壇へと案内する。


 朱里と春花は黒奈と美奈の仏壇に線香を上げる。この間、春花は何も言わなかった。それでも、熱心に手を合わせているのは見て分かった。


 朱里よりも春花の方が『思い』があるのは明白だ。熱心な春花に気付かないふりをして、二人は不自然にならないような声音で白奈の部屋へと向かう。


「さ、部屋に行きましょうか」


「そうね。後も詰まってる事だし」


 白奈は二人を部屋へと案内し、自室の扉を開ける。


「どうぞ」


 促され、春花は白奈の部屋に入る。


「やっぱ綺麗じゃない」


 朱里の言う通り、白奈の部屋は綺麗であった。


 白を基調として家具や小物が統一されており、一見シンプルだけれど女の子らしい小物やぬいぐるみも置かれている。


 ベッド、ローテーブル、デスクとチェアに本や小物が収納された棚。ベッドサイドに置かれているサイドテーブルには優しい香りのルームフレグランスが置かれている。


 春花のように生活感が無い訳では無く、おしゃれで綺麗にまとまっている印象だ。


「アンタ、こういう部屋を真似したら良いんじゃない? シンプルだけど生活感もちゃんとあるし」


「うん。おしゃれ」


「なんだか照れるわね……」


 素直に褒められて照れたようにはにかむ白奈。


 物で溢れておらず、さりとて簡素でもない。春花としても目指しやすい部屋と言えよう。


「最初から正解引き当てたわね。これなら、他の部屋行かなくても良いかしら?」


「それだと他の子達が泣くわよ。とくに、みのりとか」


「アイツは泣かしときゃ良いのよ」


「と言うか、誰の家にお邪魔するつもりなの? 僕、何も知らないんだけど」


 ルームツアーと言う事は何人かの家を巡るのであろう事は理解できる。だが、誰の部屋にお邪魔するのかはまったく聞いていない。春花の交友関係的に童話の魔法少女達の部屋であろう事は察しが付くけれど。


「ひとまず童話の全員の部屋ね」


「なるほど。なら、菓子谷姉妹の部屋は除外で良いよ」


「あぁ、アンタ、アイツらん家の掃除とかやってるもんね。見た事あるか」


「見た事あると言うか、見るまでも無いと言うか……」


 唯と一の部屋を思い出して眉を寄せる春花。


 唯と一の部屋の掃除をした事もあれば、一緒に川の字で寝た事もある。春花が一番入った事のある女子の部屋と言っても過言ではないだろう。


 ただ、あの部屋を真似しようとは思えない。デザイン的にも、状態的にも。


「真弓達も部屋を作ったんでしょ? なら、そっちも見に行きましょうよ」


「あぁ、そうだね。ちゃんと掃除してるか見に行かないと……」


 そう言うと、春花の目が一瞬、子供達の暮らしぶりを抜き打ちチェックする母親のような目になるけれど、本人は気付いていない。


 ただ、真弓達の家の惨状を知っている身としては、定期的に厳しくチェックをしなければいけないと思ってしまうのだ。お婆さんが居るとはいえ、腰を痛めているお婆さんはあまり二階には上がらない。チェックが甘いのを良い事にだらしない部屋になっている可能性はある。


「完全に保護者目線ね」


「私も少しは汚しておくべきだったかしら?」


 春花が来るからと気合を入れて綺麗にしたけれど、少し汚れていた方が構って貰えたかもと思ってしまう白奈。


「やめときなさい。異性に部屋を掃除されるって、本来乙女としてあっちゃいけない事なんだから」


「それもそうね」


 朱里の言う通り、自身の部屋を異性に掃除されるというのは本来年頃の女子として推奨されない状況だろう。部屋の掃除どころか、下着の洗濯すら受け入れている唯と一が異常なのだ。感覚が麻痺していると言うよりも、完全に甘えて良い対象と思っているからだろうけれど。


「さて、それじゃあ白奈の部屋は何点かしら?」


「点数付けるの?」


「ええ。その方が面白いでしょ」


「貴女、人の家に押し掛けて点数を付けるだなんて……」


「数値化した方が参考にしやすいでしょ。さ、何点? 因みに、十点満点ね。忖度無しで良いわよ」


「それ、言うとしたら私でしょう……」


「いーから! はい、点数どん!」


「えぇ……」


 朱里に促され、困ったような顔をしながらも、春花は今一度白奈の部屋を見回してから答える。


「じゃあ、十点かな」


「その心は?」


「掃除しやすそうだから」


「アンタらしいわね……」


「でも、部屋作りには重要な要素じゃないかしら? 私も小物とかは飾らないで仕舞ってる物もあるしね」


 春花の点数を聞き機嫌良さそうに笑みを浮かべる白奈を見て、呆れたような顔を向ける朱里。


「良い点数でご満悦って感じね」


「褒められて悪い気はしないもの」


「はいはいそーですか。それじゃあ、次の部屋に行きましょ」


「あら、お茶くらい飲んで行けば良いのに」


「後が押してんのよ。なんかさっきからすっごい催促のメッセージ届くし……」


 朱里の携帯端末に先程から数分おきにメッセージが届いている。あまり待たせても面倒臭いので、そちらを早く終わらせたいのだ。


「そう。今度は普通に遊びに来てね。美味しいお茶とお菓子、用意しておくから」


「はーい。んじゃ、お邪魔しましたー」


「うん。今度はお菓子とか持って来るね」


「えぇ、待ってるわ」


 玄関で白奈に見送られ、二人は姫雪家を後にした。


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地獄の本編の後に、この平和な日常… 整うな
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