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魔法少女異譚【書籍化決定】  作者: 槻白倫
第8章 ■■の魔道使い

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異譚87 ラストダンス

あぁ、長い……

マジで年内には終わるように頑張ります

 燃える三眼を前に、ロデスコは冷静に構える。


 体力も魔力も限界だけれど、戦わない理由は無い。生き残った皆を護る為にも、逃げるという選択肢は無い。


 先手必勝。四肢に力を入れたその時、待ったをかけるように声が上がる。


「ちょっと待ちたまえ!!」


 いざ勝負が始まるという時に、クレーターの縁からエイボンが割って入る。


 待ったをかけられたところで燃える三眼が止まる訳も無いと思っていたけれど、意外にも燃える三眼はエイボンの待ったの声を聞き入れた。


『何かな、エイボン』


「君の参加は越権行為だろう!? 主催者が盤上を荒らしてどうするんだ!?」


「あぁ……そう言えば、アンタ前そんな事言ってたわね」


 以前、エイボンは燃える三眼を監視と管理の存在だと言った。


 目の前の存在が黒幕の一人であり、世界中で異譚を頻発させている張本人でもある。


「アンタが諸悪の根源なら、やっぱり此処で戦うのもやぶさかじゃ無いわね」


 どちらにしろ、いずれ倒そうとは思っていた相手だ。それが遅いか早いかの違いでしかない。


「馬鹿か君は!? いや、君は馬鹿だ!!」


「うるっさいボケッ!! 邪魔すんならすっこんでなさい!!」


「邪魔するさ!! 満身創痍の君が勝てる訳が無いだろう!? 少し考えれば分かる事じゃないか!!」


「だからってアタシにアイツ等見捨てて逃げろって!? はっ、馬鹿にすんなつぅの!!」


「あぁ、くそっ!! 減らず口ばかり!! なら無理矢理にでも――」


『おっと、それは禁止だよ』


「ぐっ」


 エイボンが何かをしようとしたけれど、それを燃える三眼が止める。帯状の魔法陣がエイボンを縛り付け、強制的にその場に膝を付かせる。


『エイボン。本来であれば、この世界の部外者である君は異譚に関与してはいけない。君のおいた(・・・)には多少目を瞑っていたけれど、プレイヤーに直接関与するようであれば、私も対策をしなければいけなくなる』


「くっ、このぉ……っ」


 膝を付き、苦しそうに顔を顰めるエイボン。ただの拘束では無く、それ以外の負荷がかかっているようだ。


 ロデスコからすればエイボンがどうなろうと知った事では無いので、エイボンが苦しそうにしていてもどうでも良い。


「なら、君の越権行為も問題だろう……? 君自身も、罰するべきじゃないかい……?」


『私のこれは越権行為では無いよ。御存じの通り、本来の私は旧支配者。つまり、参加者としての資格も持ち合わせているのさ。加えて言えば、この身体は転生体。既に異譚支配者として転生している以上、なんら問題は無いのさ』


「だが、君程の存在が好きな時に手を下せる状況はゲームバランスの破綻だろう!」


『それは主催者としての特権ってやつさ。それに、私はゲームの参加回数を制限している。私の鍵を使える回数は三回までとね。残り本数は一本しか残っていないのさ』


 一本は自身が自由に世界を動けるように。一本は瑠奈莉愛を異譚支配者にするのに使用してしまった。なので、燃える三眼が異譚支配者として顕現出来るのはあと一回。


 燃える三眼を倒しさえすれば、その残機を減らす事が出来るのだ。


 その事実を知り、俄然やる気を漲らせるロデスコ。


「……ていうか、なんで異譚支配者なのにアンタは異譚を持って無いわけ?」


 燃える三眼は異譚を展開していない。この異譚はアフーム=ザーのモノであり、前回出現した時も安姫女(アンジェ)の異譚に前触れも無く出現した。赤いドレスの女と燃える三眼が同一存在である以上、赤いドレスの女も異譚支配者である事に変わりはない。


 にもかかわらず、燃える三眼の異譚は展開されていなかった。


 思えば、海上都市の時もそうだ。海上都市には暗幕が無かった。現象としては、燃える三眼と同じように思える。


 ふとした疑問を燃える三眼に投げかければ、燃える三眼は出来の悪い生徒に言い聞かせるような口調で返す。


『おや、案外頭が固いようだね』


「あ?」


 馬鹿にしたような口調の燃える三眼に、思わず額に青筋を浮かべるロデスコ。


『アリスに次ぐ戦歴の割に頭が固いようだねと言ったんだよ』


「あぁ、もう良いわ。アンタに聞いたアタシが馬鹿だったわ。よく考えれば、アンタの謎とかどーでも良いわ」


 言って、ドンッと地面を踏み鳴らす。たった一度踏み鳴らしただけで、放射状に亀裂が走る。


「アタシが、残りのアンタの残機含めて全部蹴り殺せばそれで解決だものね」


『あぁ……いやだいやだ。脳味噌まで炎で出来てるみたいだ。我が障害としては、もう少し知的であって欲しいものだよ』


 嘆かわしいとばかりに目を伏せる燃える三眼。見た目は化物のはずなのに、妙に人間臭い仕草をする。


『まぁ、少しヒントを出そう。そうだね。あえて言うなら、間借りというやつさ』


「間借り?」


『ああ。とは言え、答えが出るころには、君はすでにこの世に居ないかもしれないけれどね』


 言って、ぱちりとエイボンを見る目を瞑れば、エイボンの姿が一瞬にして消える。


『さて、邪魔者は消えた。今度こそ、始めようか』


「上等よ。アンタを蹴り殺して、吠え面かかせた後でベストアンサーを叩き付けてやるわ」


 言い終わるか終わらないかで、ロデスコは加速する。


 これが、この異譚での正真正銘最後の戦い。全てを出し切る。力も、気持ちも、何もかも。


 絶対に、春花の元に帰る為に。


「ラストダンス、踊り切ってやろうじゃないッ!!」


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