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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第8章 ■■の魔道使い
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異譚82 う”ん”っ!!

短いです。これなら、前の時にくっ付けて書けば良かったと、ちょっと後悔。

 役者は揃った。後は勝つだけだ。


 ヘンゼルとグレーテルは完璧なる菓子細工と共に閃光キャンディを撃ちまくる。


ミサイルの形をしたキャンディがファンシーな煙を上げて渦巻く闇に飛来する。


 今までのヘンゼルとグレーテルであれば用途によって形の変更はしなかっただろう。二人がイメージしやすいのはお菓子であり、イメージが威力に繋がる魔法少女にとってはイメージのしやすさも重視される部分にはなる。


 だから、発動する効果が違っても爆弾の時はただのキャンディしかイメージをしなかった。


 けれど覚醒した今は違う。今までは朧気だったイメージが、鮮明なイメージとなって頭の中に沸き上がり、イメージの通りに魔法が形成される。


 今なら何でも作れそうな気がする程の万能感に酔いしれそうになるけれど、自分達の万能がアリスよりも劣っている事を知っているため、覚醒した自分達の力を過信する事は無い。


 それでも今まで以上に戦いやすい。魔法がスムーズに展開でき、出力も上がっている。


「ぼんぼん!!」


「びゅんびゅん!!」


 四人分の閃光弾の弾幕が渦巻く闇に接近して炸裂する。


 眩い光に襲われ、悲鳴を上げながらのたうち回る渦巻く闇。


 こうなってしまえば、決着は容易い。


 悠然と氷の鹿に運ばれながら、スノーホワイトは渦巻く闇に接近する。


 逃げようにも渦巻く闇の逃げ場を塞ぐように、ヘンゼルとグレーテルは閃光弾を撃ち続ける。明らかに過剰な弾幕だけれど、此処で出し惜しみをして負けたのでは意味が無い。


 だから、全部出し切る。


「ええ、そうよね。此処がクライマックスだものね」


 いつの間に渦巻く闇の傍らまで接近していたスノーホワイトだけれど、渦巻く闇はそれに気付かない。気付ける程の余裕を欠いていた。


 渦巻く闇に右手を向ける。


絶対零度(アブソリュート・ゼロ)


 囁くようにその魔法を口にした瞬間、一瞬にして渦巻く闇は凍結する。まるで長時間氷点下にされされたように表面には霜が張り、蠢動していたその瞬間を切り取ったかのように綺麗に固まっている。


 外も、内も、何もかも、一切の例外無く、満遍なく氷結する。


「えいっ」


 完全に凍り付いた渦巻く闇を、スノーホワイトは気の抜けた声と共に指で弾く。


 すると、ガラガラと渦巻く闇の氷像は音を立てて崩れ落ちていき、崩れた破片は粒子となる。


 あれだけ膨大だった魔力もまた宙に溶けて消えていき、異譚を覆う暗幕も徐々に消え去っていく。


「呆気無い幕引きね……」


 とは言うけれど、相手の弱点さえ分かれば倒すのは簡単だった。それに、三人共が覚醒を果たしたのも大きいだろう。


 ヘンゼルとグレーテルもさることながら、スノーホワイトの力の上がり幅がかなり大きかった。それこそ、通常攻撃では手も足も出なかった相手に、通常攻撃で対応が出来る程に力を付けたのだ。


 その上、氷の侵食能力も上がった。あまり気にしてはいなかったけれど、氷の領域から動物が出て来る事なんて今まで一度も無かった上に、アリスの魔法のように自動的に動く魔法なんて行使出来なかった。


 以前よりも出来る事が増えた。ただ、もう少し早くそう成りたかった。もう少し早くそうなっていれば、あんなに大勢を失う事も無かったのだから。


「……はぁ。たらればね」


「「スノー!!」」


 渦巻く闇が完全に霧散するのと、異譚を覆う暗幕の大部分が消えた事を確認したヘンゼルとグレーテルが降りて来る。


 二人はスノーホワイトの前に降り立つと、勢いよくスノーホワイトに抱き着く。


「っとと……危ないわよ、二人共」


 あまりに勢いが良かったのでバランスを崩しかけるけれど、数歩下がってなんとか耐える。


 傷が治った訳では無いので、二人にぎゅっと抱きしめられると正直かなり痛いのだけれど、痩せ我慢でなんとかする。


「生きてて」


「良かった」


 ぐすんと鼻を啜るヘンゼルとグレーテル。


 スノーホワイトが二人が死んだと思っていたように、ヘンゼルとグレーテルもまたスノーホワイトが死んでしまったのだと思っていた。


 何せ、氷の壁は破られ、ダメージを受けていないような状態で追いついて来たのだ。スノーホワイトが死んでしまったと考えても仕方が無いだろう。


「……それは私も同じよ」


 涙を流しそうになるけれど、二人の手前必死にこらえる。


 瓦礫の中に、ヘンゼルの作り出した完璧なる菓子細工パーフェクト・スカルプチャーの頭部を見た時は心臓が痛い程に締め付けられた。それから、暗い怒りと復讐心を抱えたまま渦巻く闇を追った。まさか、その先でヘンゼルとグレーテルに出会えるだなんて思っても居なかった。


「二人が無事で良かったわ。生きててくれて、ありがとう」


「「う“ん”っ!!」」


 ずびびっと鼻を啜りながら頷くヘンゼルとグレーテル。


 スノーホワイトはヘンゼルとグレーテルを抱きしめながら頭を撫でる。左手に感触が返って来ない事を残念に思いながらも、スノーホワイトは二人を宥めるように優しく頭を撫で続ける。


 その後、撫でている間に気が抜けてしまって気を失ってしまうスノーホワイトが死んでしまったと思い、泣きながら回復魔法を使える魔法少女の元へと運んだと知らされたのは、全ての異譚が終わった後の事だった。


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