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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第8章 ■■の魔道使い
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異譚25 見違えるにぇ~

すみません。風邪でぶっ倒れてました。

調子戻って来たので更新再開します。

 ファミレスから帰って来た七人は、午前中にできなかった分を取り戻すように熱心に掃除に取り組む。ごみを捨て、汚れを落とし、整理整頓をして小物を整える。


 お喋りをしながらも手を止める事無く掃除を続け、夕方にはリビングは見違える程綺麗になっていた。


「見違えるにぇ~」


「我が家とは思えないですよ!」


 綺麗になったリビングを見て、感嘆の声を上げる真弓と千弦。


 しかし、喜ぶ二人とは対照的に、掃除を手伝った五人は疲れた表情を浮かべている。夕方まで掃除をしてようやくリビングが片付いたのだ。真弓と千弦の部屋、廊下、洗面台等々、まだまだ掃除をしなければいけない場所はある。


 だが、二人の部屋は二人とその友人達でして貰えば良い。一応、廊下や玄関等は春花も掃除を手伝うけれど、あくまで春花のメインは掃除では無く真弓に料理を教える事だ。リビングとキッチンの掃除を終えたのでその下地は整えられただろう。


 今日はもう遅いので此処で料理をしていては朱美のお夕飯を準備出来ないので、料理を教えるのは明日以降となる。


「皆、あいあと~! 今日はまゆぴーがご馳走すゆよ~! ピザ頼も~!!」


「あ、僕はもうお(いとま)しますね。帰ってお夕飯作らなくちゃいけないので」


 朱美の分のお昼ご飯は作ったけれど、お夕飯は作っていない。一応、お婆さんから貰った漬物や日持ちする料理も冷蔵庫にはあるけれど、おかずにするには物足りないだろう。


 それに、帰って来たら朱美と話をすると約束した。あんまり遅くなると話をする時間も無くなってしまうかもしれない。


「にぇ~? 帰っちゃうの~?」


「また来ますよ。廊下や玄関の掃除が終わって無いので」


 実際の理由はそれだけではないけれど、こう言っておいた方が自然だろう。


「ちぇ~。皆でわいわい出来ゆと思ったのに~」


 不満そうに頬を膨らませる真弓の頬を、うさぎがぷすりと突く。


「あんまし我が儘言うもんやないよ。春花ちゃんにも事情あるんやから」


「ぶ~。分かってゆ~」


 春花にも事情があるのは分かっている。それでも、仲良くなった春花と一緒にご飯を食べる事が出来ないのは、ちょっとだけ不満なのだ。


「また今度一緒に食べましょう。そうだ。最近本を読んで知ったのですが、たこ焼きパーティーなる物を友人宅で行うそうじゃないですか。手間で無ければ、今度やりませんか?」


 掃除をしている間にこの家にたこ焼き専用プレート付きのホットプレートがあるのは既に把握している。たこ焼き作りも一、二回手順を踏めば要領は掴めるだろう。


「にゅ! やるやる~! 久し振りにたこパする~!」


「良いですね、やりましょやりましょ!」


 春花の提案に諸手を上げて喜ぶ真弓と千弦。


「分かりました。たこ焼きの作り方を勉強しておきますね」


そう言いながら、割烹着を脱いで綺麗に畳み、バッグの中に仕舞う。


「では、僕はこれで失礼しますね。皆さんも、お掃除を手伝ってくださってありがとうございます」


「平気ですよ。二人の部屋を掃除するのは慣れているので」


「そーそ。何回招集された事か……」


「って、もう外暗いやんな。飲み物買いに行くついでに送ったるわ」


「それなら、私も付いて行こう」


「いえ、お気になさらず」


「まあまあ。飲み物を買いに行くついでだ。どうせ出るんだから、送って行ったって大した手間にはならないさ」


 そう言って、春花の背を押す李衣菜。


「私達は春花くんを送って来た後、飲み物を買って来るよ。その間に、好きに注文しておいてくれ」


「うぃー! りょうかーい!」


「女神様、また来てくださいねー!」


「う、うん。お邪魔しました」


 李衣菜に背を押されながら矢羽々家を後にする春花。


 マンションを出て、三人並んで歩いて駅まで向かう。


「それで、どうして春花くんが真弓の部屋を掃除していたんだ?」


「それもうウチが聞いたわ。諸事情あるんやって」


「そうなのか?」


「はい。……まぁ、なんとなく理由は分かったような気がしますが」


 掃除をしている時に、春花はある物を見付けた。それは料理と関係のある内容の物で、うっすらと真弓と千弦の家庭事情が伺えるのと、二人の仲良さげな雰囲気を見て何となくは察する事が出来た。


「まゆぴーが迷惑をかけているようだったら、遠慮なく言ってくれ。たまに突拍子も無い事を言うんだ、あの子は……」


「いえ、大丈夫です。お願いされた事も、僕に出来る範疇の事だったので」


「せやったら、まゆぴーの事よろしゅう頼むわ。あの子の家庭事情もなかなか複雑やから」


「はい、分かりました」


 春花から聞ける事は少ないと分かった二人は、その後は駅まで他愛のない会話をした。二人が春花を送ると言ったのは、飲み物を買いに行くという目的もあっただろうけれど、半分以上春花が家にお呼ばれした事を聞くためだったのだろう。


 そりゃ、最近仲良くなった友人を招いて汚部屋を掃除しているのだ。あの汚部屋に招くにはあまりに春花と真弓の関係が浅すぎる。何かあったのかと思っても仕方がないだろう。


 厄介事であれば真弓のチームメイトとして力になろうと考えていたけれど、春花からはそんな気配は微塵も感じない。


 ひとまず真弓に事情を聞くか、何も話さなかったら様子見に回ろうと決めた。


「ここまでで大丈夫です。ありがとうございます」


「いえいえ。こちらこそだよ」


「ありがとなぁ。あんな汚部屋掃除してくれて」


 春花は家の近くのコンビニまで送ってもらい、お礼を言ってから二人と別れた。


 お夕飯の材料は家に残っている。このまま帰っても問題は無いだろう。


 帰ったら朱美とお話をしなければいけないけれど、まだ何を話すべきなのか考えはまとまっていない。


 とりあえず朱美が落ち着いた様子でお話をしてくれれば話をしやすいのだけれど、あの様子ではどうなるか分からない。


 頭の中でシミュレーションをしながら、春花は残りの帰路を辿った。春花の制裁によって怒り心頭の同居人の事など、この時はすっかり忘れ去っていた。


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