女子会 12
400話突破しちゃいましたね。そして、本当にSSが長くなってしまった。
もうそろそろ終わるとは思うのですけど……もう少々お付き合いください。
春花の良い所を言う会は春花が恥ずかしさに耐えられなくなり終了。その後、普通に映画を観ながらお喋りをしていたけれど、コメディ映画も見終わってしまった。このまま映画を観ても良いのだけれど、それではいつもとやっている事が変わらないので、珠緒の提案でテレビゲームをする事に。
「友情崩壊ゲームやろうぜ」
そうして始まった春花、チェウォン、凛風、珠緒の四人の社長による仁義無き戦い。それを、後ろでやいのやいのとシャーロットと詩が囃し立てる。
時間はまだ夕方。今日はお泊りなので時間を気にせずに騒ぐ事が出来る。
「ちょっ、貧乏神なすり付けんな!」
「ぶっ飛び遊ばせるネ!」
「あっ、やりましたね!? すっごい遠くの駅に来ちゃったじゃないですか!」
「春ちゃ、カード切る。とっきゅーしゅしゅぽぽ」
「……春ちゃん、株、買い占めろい……」
「はい」
「おぉい!! アドバイスは無しだろーが!!」
「ワシ、敏腕社長秘書」
「……私、社長秘書、兼、愛人……」
「愛人!? だ、駄目ですよそんな爛れた関係!! 春花さん、絶対に駄目ですからね!!」
「僕、何も言ってないけど……」
「というか、本命は誰ですか!? お付き合い、いえ、お友達から始める場合でも、私の面接に受かってからにしていただきたい!!」
「友達面接ってなんネ……うぇっ!? 珠緒うんちするの止めるヨ!!」
「人聞きの悪い事言うな!! 妨害カードだからコレ!! 確かにうんこだけど言い方考えろ!!」
始まって数分でわーぎゃーと騒ぎだす六人。もはや女子会とは? と言いたくなるくらいの別種の騒がしさではあるけれど、楽しそうなので良しとする。
「……そだ。良い事、思い付いた……」
「絶対良い事じゃないと思うけど聞くヨ。なんネ?」
「……最下位、罰ゲーム……」
「グッドアイディア」
「参加してないからって好き勝手言い出しましたねこの人達……」
詩とシャーロットはゲームに参加していないので、にやにやといやらしい笑顔で好き勝手に言っている。
「いや待て。お前等社長秘書なんだろ? なら、お前等も有栖川が最下位になったら罰ゲームな」
「社長、世話なったな」
「……辞表を、受理してけろ……」
「なんて早い手のひら返しネ……」
連帯責任を回避するために、即座に社長秘書を辞任するシャーロットと詩。しかし、そうはいかない。
「いえ、駄目です」
「言い出しっぺが参加しないとかありえないネ」
「死なば諸共って言うよな」
「逃げおおせられぬか……」
「……腹を、ククルカン……」
どうやら逃げられぬ様子なので、観念して受け入れるシャーロットと詩。
「ほなら、皆の衆も社長秘書を付ける」
「……チーム戦じゃあ……」
しかして、ただでは転ばない。春花が負けた時だけ三人が罰ゲームなのは割に合わない。であれば、チーム戦にしてしまえば誰が負けても数人が罰ゲームの対象になる。
言ってしまった手前罰ゲームは受け入れるけれど、ならばせめて一人でも多く道連れを作りたい。死なば諸共精神である。
「お前達、勝ち馬、選べ」
「……運命共同体、選べ……」
シャーロットと詩はゲームに参加していない者達へ声を掛ける。
「なに言ってんのアンタ達?」
「……負けた社長、罰ゲーム……」
「おめーら、今日から、社長秘書です」
「なんかよく分からないけど、嫌よ」
なぜ罰ゲームがあると分かっていて参加をしなくてはいけないのか。即座に拒否をする朱里だが、二人は朱里の元へと駆け寄ると朱里に頭をごりごり擦り付けて懇願する。
「……そこを、何とか……」
「死ねや諸共」
「鬱陶しい!! それに、死なば諸共ね!! 急に罵倒してるからそれ!!」
頭をぐりぐりしてくる二人を引き剥がそうとするけれど、二人は朱里にがっつりくっついて離れない。
乱暴に引き剥がす事は出来るけれど、怪我でもされたら気分が悪いし、楽しい雰囲気を台無しにしてしまう。どう引き剥がすかと考えていると、静観していた白奈が二人に疑問を投げかける。
「その罰ゲームって、何をするの?」
「……さぁ……?」
「決めとらん」
ぐりぐりしていた頭を止め、白奈の方を見ながら答える二人。
「それじゃ~、負けたチームがお夕飯の準備とかどうかしら~?」
「良いんじゃないか? それなら、大した手間でも無いだろう」
笑良の提案に、レクシーも賛成する。
手作りだろうが、出前にしようが、なんにせよ、お夕飯の準備はしなければいけないのだから。
「それなら、手作り料理とか良いんじゃない? 出前だと面白味が無いし。それくらいなら、別に参加したって良いでしょ?」
提案の後の言葉は朱里に向けて投げかけられている。難色を示しているのは朱里だけだ。別段、二人に助け舟を出す訳でも無いけれど、お夕飯をどうするかはいずれ直面する問題だ。此処で当番を決められるのであれば、手間が一つ減る。
「まぁ、それくらいなら良いわよ。その代わり、料理が出来る奴は分散しましょう。流石に食べられる物が食べたいわ、アタシは」
「じゃあ、ワタシと春花ちゃんと白奈ちゃんは別チームね~」
即座に、料理が出来る三人は別々のチームに入れられる。
「後一人、料理が出来る人は~……」
「ナチュラルにアタシが出来ない判定なのムカつくんだけど? 人並みには出来ますけど?」
料理が出来る人材として名前が上がらなかった事に文句を言う朱里。春花、白奈、笑良の三人は料理が上手い。それは朱里も認めるところだ。だが、朱里だってまったく料理が出来ないわけでは無いのだ。
「レベルは合わせないといけないから、仕方ないわよ」
「は~!? アタシだってやれば出来るんですけど!? アンタ達よりおしゃれで美味しい料理作ってやるんですけど~!?」
真正面からレベルが足りないなんて馬鹿にされて黙ってはいられない。自分でも三人よりは出来ない事は認めるけれど、バカにされるのは我慢ならない。
「有栖川、白奈、笑良、アタシが分散で良いわよ!」
「おいハズレ枠作ってんじゃねぇよ!!」
「誰が外れ枠よ!!」
ゲームをしていた珠緒が文句を飛ばせば、即座に朱里が心外だと声を荒げる。
「とにかく!! 今言った四人が分散!! 後は各々付きたい社長を選べば良いでしょ!!」
言って、朱里はチェウォンの後ろに座る。どうやら、チェウォン社長に付く事に決めたらしい。
「ハズレがチェウォンを選んだネ!」
「どうして私を選んだんですか!?」
「なんで嫌そうに言ってんの!? 別に料理出来ない訳じゃ無いからね!? ていうか、その言い方だとゲームの貧乏神と同じ扱いみたいで嫌なんですけど!?」
即座にぎゃーぎゃー騒ぎだす朱里を見て、くすりと笑みをこぼす白奈。
「笑良はどうする? 珠緒か凛風か」
「じゃあ、珠緒社長にしようかしら~」
「なら、私は凛風社長ね。レクシーは?」
「私も料理の心得はあるからな。朱里の補佐をする事にしよう」
三人は付くべき社長を決めると、ゲームをしている春花達の方へと集まる。
朱里が移動した段階で、ボードゲームをやっている四人の方へ行き事情を説明したシャーロットと詩。
「此処に社長が四人おるじゃろ。好きな社長を選ぶんじゃ」
「……目指せ、社長秘書マスター……」
最後に良く分からない事を言って、誰に付くかを選ばせる二人。
「ママンの料理食べたい」
「でも料理はしたくない」
「「勝ち馬を選ぶ」」
言って、唯と一は珠緒社長の方へと行った。
「じゃ、みのりは凛風社長」
「ど、どうしてわたしは選べないのかな!?」
「……餡子に、選択権、あげるべし……」
現在、凛風のチームは二人。四人が二チーム、三人が二チームになるので、必然的にどちらかは凛風のチームに入らなければいけない。となると、最年少の餡子に選択権を与えるべきだろう。
「くっ、な、なら、仕方ないね……」
大人の判断を前に駄々をこねる訳もいかないので、渋々諦めるみのり。本当は春花のチームが良かったけれど。良かったけれど!!
「好きな会社、選べー?」
「……誰の、愛人なる……?」
因みに、別段五人になったところで問題は無い。最低人数を三人で揃えたかったからみのりは強制的に凛風のチームに入れられただけだ。
二人に問われ、餡子は迷う事無くスケッチブックに名前を書き、二人に見せる。
『春花社長です!』
「なるほろ」
「……春ちゃんの、愛人か……」
「……っ!!」
愛人と言われ、顔を赤くしてぶんぶんと首を振って否定する餡子。
そんな餡子を見て、二人にはによによと笑みを浮かべる。
「愛い奴め」
「……初心よの……」
二人は妹を可愛がるように餡子の頭を優しく撫でる。餡子は気恥ずかしそうに顔を赤らめるけれど、決して嫌そうな素振りは無かった。
こうして、組み分けは決まった。
春花、シャーロット、詩、餡子。
珠緒、笑良、唯、一。
凛風、白奈、みのり。
チェウォン、朱里、レクシー。
四人の社長と社長秘書達による罰ゲームを掛けた熾烈な戦いが幕を開けた。




