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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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女子会 8

 ようやっと開催されたお泊り女子会。少女達は年相応のはしゃぎようを見せながら、楽しそうに語らいあう。


「レクシーちゃんって、良い人いたりしないの~?」


「居ない居ない! まぁ、ボーイフレンドだったり、結婚だったりは、興味はあるけれど……」


「でも、レクシーは異性より、同性にモテそうよね」


「あー……モテるのは嬉しいんだがな……」


 白奈の言葉に、困った様子で微笑むレクシー。


 白奈の言った通り、レクシーは異性よりも同性にモテる。同性からの告白は幾度もあったけれど、異性からとなると片手で数えられる程である。


 レクシーの恋愛対象は異性なので、女の子達からの告白は丁重にお断りした。傷付けないように優しく言ったけれど、断った後に涙を流された事は少なくない。同性愛に理解が深まっている現代でも、やはり同性への告白には勇気がいるのだろう。まぁ、意中の相手に思いを告げるのだ。どちらにせよ勇気はいる。


「そういう、君達はどうなんだ? ボーイフレンドが欲しいとか思わないのかい?」


「アタシは別に。今は自分の事で手一杯だし」


「私も、特にそういうのは無いかな」


「ワタシは将来素敵なお嫁さんになるのが夢よ~」


 朱里と白奈は特に欲しいとは思わず、笑良は将来の夢はお嫁さんだけれど、現状で特に彼氏が欲しいとは思っていない様子。


「うっ……若いって良いな……」


 三人の様子にしょぼんと肩を落とすレクシー。


「レクシーだってまだ二十代でしょ? それに、こんなに素敵なんだから引く手あまただと思うけど」


「二十代の一年って、君達よりもずっと早いんだよ……」


 現在九月末だけれど、レクシーの体感的にはまだ春を過ぎた程度。もう年始から半年も経っている事に恐怖すら覚える。


「それに、さっき言った通りさ。女性からのお誘いは多いけれど、男性からとなるとからっきしだ」


「レクシーちゃんから誘ってみれば~?」


「受けに回ってはいけないと思い、私も誘おうかと思ったんだが……」


「だが?」


 レクシーは難しい顔をして、飲み物を一口飲む。


「……誰が好みだか、全然分からないんだ」


「「「あー」」」


 レクシーの言葉に、三人は納得の声を漏らす。


「好意を向けられた事はあるんだが、好意を向けた事が無い。私も十代の頃は魔法少女の活動に専念したいと思っていたから、色恋は避けていたのだ……その結果、自分の好みすら分からない人間になってしまった……」


 肩を落とし、ずーんと落ち込んだ様子でクッションを抱くレクシー。


「この性格の人だと落ち着くとか、この顔の人好みとか、そういうのも無いの?」


「うーん……分からん。だが、強いて言えば、優しい人が良い」


「誰だって優しくない人なんて嫌でしょ」


「朱里、茶々入れない。他には何か無いの?」


 ぐびぐびっと飲み物を呷るレクシー。


「あー……顔は、別に気にしない。お金だって、私が稼いでるし……でも、家でずっとなまけられても嫌だ。働いて欲しい」


「まぁ、ヒモなんて嫌よね~」


「家に居るなら、家の事は任せておきたいわよね」


「じゃ、家事全般が出来る人ね」


「お金にだらしない人も嫌だ。私が頑張って稼いだお金で好き勝手されるのは(はらわた)が煮えくり返る」


「専業でやるなら、相談とかして欲しいわよね~。後は、お小遣い制にするとか~?」


「うん。そうだな。お小遣いの範疇であれば好きにしてくれて構わない」


「お金にだらしない人もNGって訳ね。ま、そりゃそうだわね」


 喋り過ぎて喉が渇いたのか、ぐびぐびっと飲み物を呷るレクシー。


「この調子でどんどん言ってきましょう。そうすれば、最終的に自分が求めている人のタイプが分かるでしょうし」


「そうね。じゃあ、もっと細かく詰めていきましょうか」


 今は彼氏などに興味は無いけれど、三人共この手の話が嫌いな訳ではない。お菓子を摘まみながら話を続ける。


「身長とかって気にするタイプ~?」


「小さくても良い。背の高い男性に憧れが無いわけではないが……私の背が高いからなぁ……」


 レクシーの身長は178センチ。女性にしては身長はかなり高い部類に入る。レクシー以上となるとそうそう居ないだろう。


「確かに、レクシー以上ってなると限られるわよね……あ、でも、イギリスではそうでも無いのかしら?」


「うろ覚えだが、男性の平均身長の数字にそんなに差が無かったような……」


「でも、身長は小さくても良いんでしょ? ならそんなに気にしないでも良いんじゃない?」


「憧れはあるんだから、ちょっとは要素として入れておいても良いでしょ」


 やいのやいのと少女達は姦しくお喋りに興じる。


 楽しそうにお喋りをする少女達を見て、思わず頬が緩むレクシー。やはり、こうやって年相応にはしゃいでいる方がずっと健全だ。


 ぐび、ぐびびっと飲み物を飲む。


 ふと、視界の端に映る少年に意識が向く。


 春花はチェウォンの隣に座り、タブレット端末で映画を観ている。


「うふふ~。これだけ楽しいんだから、アリスちゃんも来られれば良かったのに~」


「誘ったんだけどね。所用があって抜けられないんだとか」


 アリスが春花である事を知っているのは、朱里と白奈のみ。故に、この場に春花(アリス)が居るだなんて知るはずも無い。


 アリスはどうしても外せない用事があって今回は不参加だと、白奈とは口裏を合わせて在る。他の面々に説明もしたし、特に疑問も抱かなかった。最近は付き合いが良いアリスだけれど、元々の付き合いが悪いので、来られなくとも仕方がないとは思われている。一緒に女子会が出来なくて残念ではあるけれど。


「用事があるなら仕方が無いわよ。次の機会にでも……どうしたの、レクシー?」


 三人が盛り上がっていると、不意にふらふらっとレクシーが立ち上がる。


 レクシーは白奈の言葉に返事をせず、迷う事無く春花の元へ向かう。


 春花もレクシーの接近に気付き、自分に何か用でもあるのかとレクシーを見る。


「どうかしましたか?」


 小首を傾げて春花が訊ねれば、映画の再生を止めたチェウォンもレクシーを見る。


「春花くん」


「はい」


 レクシーは真っ直ぐに春花を見て、頬を朱に染めてしっかりとした口振りで言った。


「私と、結婚しよう」


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― 新着の感想 ―
いきなりすぎるw
まあなんか飲んでる描写があったあたり酒に酔ってるんだろうなとは思うがいきなりぶっ込んできたな… まあ春花ちゃんは優良物件だよね 優しく人当たりがいい、顔もいい、しっかり働いて稼いでいて物欲も少ない、き…
こいつ……いきなりぶっ込みやがった……!! いいぞ!もっと荒らせ!!
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