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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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女子会 6

まだ、女子会が、始まらない……!!

誰がどんな服装で登場するかなんて分かり切ってるのに……まだ始まらない……!!

もはやSSとは言えないかもですが、満足するまで書きます。

「あら~、珠緒ちゃ~ん。ちゃんと着て来てくれたのね~」


 珠緒の服装を見て、嬉しそうに頬を緩める笑良。


「まあ、別にこだわりとか無いから」


 笑良にお願いされて、珠緒は笑良の指定した部屋着を持って来た。因みに、珠緒が着ている服は笑良が珠緒に上げたものだ。なんでも、間違えたサイズの物を買ってしまったらしく、丁度サイズがぴったりだった珠緒に譲渡したのだ。


「てか、あたしは言われたから着て来たけど……どうしてあんた達はお揃なわけ?」


 みのりの横に座りながら、珠緒が訊ねる。


「ママンと」


「パパンと」


「お揃が」


「良い」


「まあ、お前等はそうだろうな」


 双子が春花に懐いている事なんて見ていれば分かる事だ。懐いている相手とお揃いの服を持っているのであれば着てくるのも当然と言えるだろう。


「……私は、空気を、読んだ……」


「そういや、あたしが出る時そんな恰好じゃ無かったもんな」


『春花先輩が可愛かったので、お揃いにしました!!』


「お前、お揃いにしてるのが二人だけだったらどうしてたんだよ……」


 春花と餡子の二人だけがお揃いにしていたのであれば、要らぬ誤解を招いたかもしれない。少女のように見えるけれど、実際は男だ。そういう仲だと疑われても仕方が無いだろう。


 まぁ、有栖川春花という人物を知れば、それも無いとは分かるけれど、当事者となってしまえば少しだけ気恥ずかしい思いをするには違いなかった。


 珠緒に指摘されて遅まきながら気付いたのか、えへへと恥ずかしそうに頬を赤らめる餡子。


「で、あんたは……」


「わ、わたし? わたしは……ふつーに?」


「ふつーにってなんだよ」


「ふ、ふつーには、ふつーにだよ!」


「……まぁ、あんたクソ兎と似てる所あるからな」


「そ、そんな納得の仕方は嫌かな!?」


 はぐらかそうとするみのりに対し、珠緒は勝手に納得をするけれど、みのりは心外だとばかりに声を上げる。


「あ、やられた……」


 六人が話している間に、頑張ってゲームを進めていた春花であったけれど、頑張りも虚しくゲームオーバーとなってしまった。ティウンティウンっと爆散するキャラクターを見て、どうしようといった様子で眉尻を下げる。


「……りとらい……」


 詩がそのまま続行をするように言えば、春花は素直にゲームを続ける。


 かち、かちっと覚束ない手付きでキャラクターを操作する。


「あんたゲームなんて珍しいね」


「うん」


 珠緒の言葉に、ゲームに集中してしまっている春花はうんとしか答えない。アリスとして戦っている時の春花は会話をしながらでも戦えるけれど、戦うための気持ちに切り替わっていないのでゲームをするのに精一杯になってしまっている。


 その様子を斜め前から見ていた珠緒は、目の前の餡子の膝の上に腕を置いて身体を預け、春花の操るゲーム画面を覗き込む。


 肘置きにされているけれど、餡子は特に気にした様子も無く夢中になってゲーム画面を覗いている。


「待たせたネ!! 我、帰還せりヨ~!!」


 ばーんっと扉を開けて、凛風が帰って来る。


 一瞬だけ春花以外の全員の視線が凛風に向くけれど、直ぐに視線を戻す。


「お帰り~とか、言って欲しいんだヨ!?」


 凛風がそう言えば、ほぼ全員から「お帰り~」とおざなりな返事が返って来る。遅まきながら、餡子がスケッチブックに『お帰りなさい』と書いて凛風に見せる。餡子は凛風が帰って来てお帰りなさいと言いたかったけれど、文字を書く必要があったので視線をスケッチブックに持っていたのだ。決して無視をした訳ではない。それ以外の者はおざなりで良いだろうと思っておざなりにした。


「うぇ~ん。酷いヨ~。優しいの、餡子だけネ~」


 ぴゅぴゅぴゅーっと餡子の背後に回り込み、後ろから餡子に抱き着く凛風。


 凛風に抱き着かれ、照れ臭そうに笑みを浮かべる餡子。


「てか、お前も同じ恰好かよ」


「そうネ! この服、我元々好きヨ!」


 例に漏れず、凛風も皆と同じ服を着ていた。凛風はそもそもこの服が好きなので、家にも数着置いてある。別段、狙ってお揃いにした訳ではない。


「というか、どうして皆でゲーム見てるカ?」


「……見守り隊……」


「後方」


「師匠面」


「ああ、あるほどネ」


 要は春花がゲームしている所を見守っているだけである。難しい話ではない。


「戻ったわよ~……って、うわ……全員同じ? まじ?」


 荷物を持って戻って来た朱里が、カフェテリア内の光景を見て引いたように声を出す。


「そーいう朱里も同じネ」


「流石に男子一人じゃ仲間外れ感あるでしょ? 恰好同じにすれば少しは紛れるかと思ったけど……アンタ等も同じ考えだったとはね」


 感心したように言う朱里だけれど、その実、理由なんてまちまちである。まあ、春花とお揃いにしたいと言う者が多いのは否定しないけれど。


 それに、どんな理由があれ、同じ服装であれば疎外感は薄れるだろう。スポーツチームのユニフォームや文化祭などで着るクラスTシャツみたいなものである。ようは、この集団に居て違和感がないと少しでも思えれば良いのだ。


 春花から自分も参加なのかとメッセージを貰い、当たり前とだけ返したけれど、返信した後にそういやアイツ男だったなと気付いた。


 いや、分かっているつもりなのだ。正しく理解もしているし、念頭に置いて考えても居る。


 だが、どうしてもたまに頭から抜け落ちてしまう。気の置けない関係になっているから、信頼度が増しているのが理由かもしれないけれど、どうにも一緒に居て当たり前という認識が強くなっているように思う。


 後は、朱里自身が春花の性別を気にする事無く接しているからかもしれない。よくよく考えれば、性別を気にせず接しているのは朱里くらいのものかもしれない。そう考えると、春花に居心地の悪い思いをさせてきてしまったのではと思ってしまう。


 そう考え、少しばかり反省して同じ服を持って来たのだけれど……どうやら杞憂だったようで少し安心する朱里であった。


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