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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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女子会 4

皆様、新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


今年初の更新になります。今年は頑張ります。


長くなりそうなので、二分割にしてます。

「……ふぎっ、ふぎっ、ふぎーっ……」


 横スクロールアクションのゲームを、ふぎふぎ言いながら攻略していく詩の横で、春花はぴたりと詩の隣に座って画面を覗き込み「今のアイテム、取らなくて良いんですか?」だったり、「回復アイテムは使わないんですか?」と気になる事を聞く。


「……アレは、回復、アイテム、ふぎぃぃぃっ……」


 かちゃかちゃかちゃとボタンを連打して何とか相手の攻撃を回避する詩。


「……HP、満タンだから、取らない……」


「そうなんですね」


 春花はこの手のゲームはやった事が無い。そもそもゲームも全然やらない。家にゲーム機すらない。唯と一がゲームしている時も、少しだけ興味を示してたまに覗き込んだりしている。と言っても菓子谷家でテレビゲームをしている時に二人の後ろで見ているだけだ。今みたいに、隣に座ってゲーム画面を見る事は無い。


 唯と一は春花が見ていると分かると、あれこれ説明をしてくれる。やれ此処がショートカットだとか、やれ此処が難所だとか。敵に負けると二人して「んがーっ!!」と声を上げて頭を抱えたり形容しがたい動きをする事もあるけれど、二人共楽しそうにゲームをしているのでゲームとはそういうモノなのだろうと思っている。実際、詩も先程からふぎふぎ言っているし。


 因みに、春花が詩のゲーム画面を覗き込んでいるのは、詩が『……俺の、華麗なプレイ、見さらせい……』と言ったので遠慮無く見ている。本来なら大画面でやっていない限りは人の携帯ゲーム機を覗き込みはしない。


 ふぎふぎ言いながらゲームをしている詩を見守っていると――


「た、ただいま~って、ちょ、ちょっと近くないかな!?」


 ――着替えやら何やらを持って戻って来たみのりが、肩をぴたりとくっ付けて詩のやっているゲームを覗き込んでいる春花を見て慌てて声を上げる。


「……苦しゅうない、近う寄れ……」


 肩が当たっている事に気付いた春花が、詩に謝るよりも前に詩がゲームをする手を止めて春花の肩を抱き寄せる。


「だ、ダメだよぅ!! は、離れてよぅ!!」


 肩を抱く詩を見て、荷物を放り出して詩を引き剥がそうとする。


「……げへへへへへ……」


 下衆な笑いを浮かべながら、飛び掛かるみのりを脚で止める詩。


「こ、このっ! あ、脚を退けてよぅ!!」


「……らぶらぶ、いちゃいちゃ、たいむ。邪魔は、させんぞ……」


「ら、らぶらぶ!? ら、らぶらぶしてたの有栖川くん!?」


「してないよ」


「い、いちゃいちゃはしてたの!?」


「してないよ」


「し、してないじゃない!! 嘘吐き!!」


 迷う事無く詩の言った事を否定する春花を見て、詩に矛先を戻すみのり。


「……照れてるのさ……」


「て、照れてるの!?」


「照れてないよ」


「……それは、自信、無くすぜ……」


 これだけ密着をしているのに照れ一つ無いのは、流石に女子として自信を無くす。猫背で分かりにくいけれど、詩のプロポーションは悪くはない。何なら、さっきから胸が当たっている。


 けれど、春花の表情は常と変わらない。女子らしさの欠片も無い詩だけれど、微かに残った女の子の部分が敗北の白旗を上げている。


「……それは、ともかく……」


 敗北したけれど、特に引きずる事は無い。女子力で勝負をしていない詩からすれば、損耗は軽微である。


 そんな事よりも、詩は一点だけ気になる事がある。


「……なんで、もう、パジャマ……?」


 みのりの恰好を見て、詩はこくりと首を傾げて訊ねる。


 最初から気にはなっていたけれど、からかう気持ちが勝ってしまったので先延ばしにしていた。


「……しかも、お揃い……」


 みのりは童話のカフェテリアに入って来た時から部屋着を着ていた。しかも、春花の着ている部屋着とまったく同じデザインのモノである。因みに、ブランドも同じである。


 詩が春花とみのりを交互に見て訊ねれば、みのりはえへえへと笑いながら答える。


「せ、せっかくだから、お揃いにしちゃったんだよね。えへ……お、お揃いの方が、仲良しなお泊り女子会っぽいから、さ?」


「そなんだ」


 春花は女子会というモノを知らないので、みのりが言っている事を鵜呑みにする。


 実際、部屋着を合わせて女子会をする事もあるだろう。そこはみのりの言っている事は正しい。だが、動機は正確ではない。


 普通に、春花とお揃いにしたかっただけだ。それ以外の動機は無い。


「……ふーん。じゃ、私も……」


 そう言って、詩は自身の荷物を漁る。


 そして、荷物の中から二人とまったく同じデザインの部屋着を取り出す。因みに、ブランドも同じである。



「な、なんで持ってるのかな!?」


「……このデザイン、人気……」


 詩は部屋着を持って二階に上がっていく。


「む、無理に着替えなくても、い、良いんじゃないかな?」


 春花とお揃いが良いのであって、他の皆とお揃いにしたい訳ではない。詩とお揃いが嫌な訳では無く、春花とだけお揃いである状況が崩れるのが嫌なのだ。春花がからまなければ、普通にお揃いでお泊り女子会は嬉しい。


 だが、今じゃない。


 それとなく止めようとするも、詩はそそくさーっと二階に上がって、ぱぱっと着替えて降りて来る。


「……ばばーん……」


 謎の効果音と共に降りて来た詩。デザインは同じだけれど、多色展開なので三人共色は違う。


「ただいま~。あら~? あらあらあら~?」


 丁度良く、笑良が荷物を持って戻って来る。そして、部屋に入るなり三人を見て嬉しそうに頬を緩める。


お揃い(・・・)じゃな~い。ワタシもよ~」


 カフェテリアに入って来た笑良もまた、三人と同じデザインの部屋着に身を包んでいた。因みに、ブランドも以下略。


「あ、あはは……お、お揃い、だね……」


 お揃いが四人になってしまった事で、みのりは思わず苦笑いを浮かべてしまう。好きな人と合法的にお揃いの服を着られるという完璧な計画が一瞬にして二人によって打ち砕かれてしまったのだ。苦笑いも出る。


 だが、みのりの悲劇はこれで終わりでは無かった。


「戻ったわ。……って、あら。もしかして、皆考える事は同じ?」


 荷物を持って戻って来た白奈を見て、みのり以外の三人はおぉっと感嘆の声を上げる。


白奈もまた、四人と同じ服を着ていたのだった。


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