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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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女子会 3

 春花がチェウォンと映画を観ている間に女子会が開催される事が決定してしまった。


 女子会、すなわち、女子だけの会。つまり、春花に参加する権限は無いはずだ。なにせ、春花は男の子なのだから。


 朱里達は家から荷物を持ってくるために対策軍を後にし、レクシー達もお菓子やらジュースやらを買いにカフェテリアから出ている。一応、近辺のスーパーは営業を再開しているので、お菓子等を買う事は出来るだろう。


 全体的に見れば被害は大きかったけれど、直接の被害地域に比べれば被害は軽微。それでも、営業できないお店もあれば、商品を卸す事が出来ない工場もある。食品類はスーパーに並んでいるとは思うけれど、平時程の潤沢さは無いだろう。


 少女達が女子会を開く分にはお菓子の在庫はあるはずだ。生菓子は流石に置いていないかもしれないけれど。まぁ、女子会に参加しない春花には関係の無い事だ。


「じゃあ、僕はこれで」


 チェウォンに挨拶をして、春花はカフェテリアを後にしようとする。


「え、待ってください。貴方も女子会に参加するのでは?」


「……女子会ですよ?」


「ええ、女子会です」


女子(・・)、会、ですよ?」


「ええ、分かっています」


 女子という部分を強調して言ってみたけれど、チェウォンは春花が何を言いたいのかさっぱり分からないと言った顔をする。


「……僕、男の子なんですけど」


 春花がそう言えば、チェウォンは一瞬だけ視線を逸らした後、直ぐに春花に視線を合わせて何食わぬ顔で春花に言う。


「ええ、分かっていますよ。私が言いたいのは、今更そんな事を気にする必要も無いのでは? という事です。女子会と銘打ってはいるみたいですが、貴方を仲間外れにするつもりは毛頭無いでしょう。そうですよね、詩さん」


「……うい……」


 家に帰る事無く、ソファでだらだらとゲームをしていた詩は唐突にチェウォンに水を向けられたものの、迷う素振りも見せずにぐっと親指を立ててチェウォンの言葉を肯定する。


 詩は既に着ぐるみパジャマを着ており、お泊りの準備は万端だ。ヴルトゥーム戦の時に使ったお泊りセットを持ち帰っていなかったので、詩は家に帰る必要が無いのだ。


「それに、もし貴方を仲間外れにするつもりなら、わざわざ目の前で女子会するだなんて言いませんよ。女子会するって言った時、朱里さんがっつり私達の目を見て言ってましたから、はなから仲間外れにするつもりなんて無いと思いますよ」


 確かに、朱里に『お泊り女子会するわよ』と言われた時、ばっちり春花の方も見ていた。何かの間違いだろうと思ってこのままプライベートルームに引っ込もうと思っていたけれども、もし居なかったらプライベートルームにまで突撃してきそうなので、一応確認をしておく事にする。


「ちょっと確認してみます」


「どうぞどうぞ」


 春花は携帯端末を操作し、朱里にメッセージを送る。


『女子会って、僕も参加?』


 短くそうメッセージを打って直ぐ、朱里から返事が返って来る。


『当たり前』


 たったそれだけしか返って来なかったけれど、答えには十分だ。


「参加だって」


「ほら、言ったじゃないですか」


 朱里からの返事を見せた春花に、チェウォンは得意げに返す。


「……てか、お泊り女子会、した、よね……?」


 今更じゃない? といった表情で春花に言う詩。


 詩が言っているのは遊園地に泊まりで遊びに行った時の事だろう。だが、あれは不可抗力だ。それに、途中ですやぴよと眠ってしまったので殆ど記憶が無い。


「お泊り女子会した事在るんですか?」


 春花が言い訳をする前に、チェウォンが食い気味に春花に訊ねる。


「まぁ、はい……皆で遊園地に遊びに行った時に」


「じょ、女性と同じお部屋に泊ったんですか!?」


「あー……不可抗力で」


 春花がこくりと頷けば、チェウォンはわなわなと顔を赤くして小刻みに震える。


「な、なんて破廉恥な……!!」


「……でも、チェウォン、お泊り女子会、する、でしょ……?」


「し、しますけど! こ、こう……対策軍であれば不埒な事は出来ないでしょう? で、ですが、出先ではそうもいきませんし……監視の目とかも無いですし……」


 ごにょごにょと口の中で話すチェウォン。


 ごにょごにょ言っているので、何を言っているのかは定かではないけれど、どうやら不満がある事だけは分かる。


「……エロい事、考えてる……?」


「か、考えてません!! ふ、不純異性交遊なんて、私は認めませんからね!!」


 詩の言葉にかぁっと顔を真っ赤にして声を荒げるチェウォン。


「別に、何も無かったですよ? 東雲さんが僕に一人部屋で予約してくれていたんですけど、システムエラーか何かでブッキングしちゃったらしくて、それで仕方なく東雲さん達と同じ部屋に泊っただけです。それに、僕は途中で眠っちゃいましたし」


 不純異性交遊だなんて疑惑を掛けられれば、年頃の男子は慌てて否定するか、どぎまぎして上手く言い訳出来ないかだけれど、春花はすらすらとその時の状況を説明する。


「……つまり、故意に同室になった訳ではない、と?」


「はい。ブッキングしたって分かった時、僕は別のホテルに泊まろうとしてましたし、ホテルに泊まれなかったら野宿でも良いかなって思ってたんですけど、東雲さんに絶対ダメだって言われて……」


「当然です。野宿は駄目です絶対に。朱里さんのその判断は間違えてません。朱里さんグッジョブと言いたいところです」


 なるほどなるほどとチェウォンは頷く。


 出先でお泊り女子会をしたと聞いて、一瞬だけ(・・・・)不純なイメージが頭の中に浮かんでしまったけれど、そういう事情であれば仕方がない。


「ともあれ、春花さんはお泊り女子会に参加してください。こういう機会でもないと、皆で楽しく夜通しお喋りなんて出来ないですから」


「まぁ、そう言う事なら……」


 確かに、海外組がこうして一度に集まる事は滅多にない。


「では、此処で詩さんと良い子に待っていてください。私も私で、準備をしてきますので」


 それでは、と足早にカフェテリアを後にするチェウォン。心なしか足取りが軽く見えたのは、きっと女子会が楽しみだからだろう。


「……隣、かもーん……」


 ぽんぽんっと自身の隣を叩く詩。


 特にやることも無いので、春花は詩の隣に座って詩のやっているゲームを覗き込んで皆が揃うのを待った。


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― 新着の感想 ―
この空気感好き……ずっとこんな平和だったら良いのになぁ。
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