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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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女子会 2

 春花達が二階で映画を観ている間、一階では少女達がゆったりと穏やかな時間を過ごしていた。


 紅茶を飲み、クッキーなどのお菓子を食べてお喋りに興じる。


中国(こっち)も被害大変ヨ。地面ぱっかーんだもんネ」


「イギリスも同じだよ。とはいえ、こちらは脚先くらいだからね。他の国に比べれば、損害は軽微だ」


「軽微って言っても、大地が割れてる訳だからね。復興するにも時間は掛かるわよね」


 何処の国もかなり消耗している。復興計画の為の下見やら予算の計算などなど。復興に向けてやる事は多い。


「おまえ等、せっかくの休みなんだから仕事の話すんなよな」


 ソファでだらけながら、イェーガーが嫌そうな顔で言う。


「喋って」


「無いで」


「お菓子」


「食いな」


 唯と一もお菓子を食えと喋っている全員にお菓子を押し付ける。


「そうよね~。暗い話ばっかりしてても仕方ないし、楽しい話をしましょ~」


 ここ最近は色々あった。暗い話が苦手な子達も居るだろう。珠緒の言う通り、今は休暇中だ。休んでる時まで仕事の話をする必要も無い。


 笑良はぱちんっと手を叩いて、話題転換をする。


「楽しい話って、具体的に何よ?」


「それは~……」


 朱里に言われ、笑良は顎に人差し指を当てて考える。


「最近楽しかった事とか~?」


「楽しかった事?」


「嬉しかった事とかでも良いわよ~。ていうか~もうこうなったら、女子会してもいいんじゃな~い?」


「女子会……とても興味深い響きだ」


 笑良の女子会という言葉に一番反応を示したのはレクシーであった。


 王子様のような見た目をしているレクシーは、女子会と言ったきゃっきゃうふふとした会に参加した事が無い。いや、ある事にはあるのだけれど、日本で言う女子が集まって楽しく過ごす女子会では無く、花嫁が独身最後の夜を楽しむ為の女子会(パーティー)であるバチェロレッテパーティーには参加した事がある。


 バチェロレッテパーティーの様式は様々だけれど、レクシーが参加したのはドレスコードが指定されており、おしゃれなレンタルスペースでおしゃれな食事にお酒を楽しんだ。確かに、バチェロレッテパーティーは楽しかったし、お酒も入っていたのでくだらない話で盛り上がったりも出来たけれど、レクシーが憧れるいわゆる女子会と言われるモノとは程遠かった。


 仲の良い友人同士で集まり、部屋着やダル着、パジャマなんかを着て、お菓子やらジュースやらを大量に買い込んでわいわい盛り上がる。というお泊り会のような女子会をしてみたかったのだ。


「女子会って言うけどさ、あたし達いつもとやってる事変わらないんじゃね?」


 レクシーの期待とは裏腹に、珠緒は思っていた事を口にする。


 女子が集まってお菓子を食べてお喋りするのが女子会であれば、いつもとやっている事は変わらない。


 このままでは女子会開催が危ぶまれると危惧したレクシーだったが、珠緒の言葉に笑良が柔らかく反論する。


「違うわよ~。いつもは~訓練の合間とかにお喋りしてるだけでしょ~? お喋りをするために集まる。それが女子会なのよ~」


「でもやってる事変わんないじゃん」


「やってる事が変わらなくても、女子会は『女子会』と銘打って開催するから女子会なのよ~。普段のお喋りとはぜ~んぜん違うわよ~」


「……つまり違うのって名前だけじゃね?」


「細かい事は良いのよ~。皆お菓子食べて~、ジュース飲んで~、楽しく盛り上がれれば良いの~」


「あ、そう。ま、暗い話にならなきゃ別にいーわ。辛気臭いのが嫌なだけだし」


 女子会っていつもとやってる事変わらなくね? とふと疑問に思って聞いてみただけだ。女子会の開催が嫌な訳ではない。


 順調に女子会が開催の流れになって、内心でほっと胸を撫で下ろすレクシー。しかして、朱里や白奈にはばっちり気付かれていた。女子っぽい事をあまりした事が無いと聞いていたので、レクシーは女子会を開催したいだろうと思い少しだけ注意を払っていたので気付く事が出来た。他の者は特に気付いた様子も無いので、わざわざ言う必要も無いだろう。


「良いネ、女子会! 時間を気にせず楽しく騒げるのは良い事ヨ!」


 女子会の開催には凛風も賛成だ。まぁ、凛風は女子と一緒に居られればそれで良いのだけれど。


「いっそ泊まりでやる? こういう機会中々無いし」


 朱里がそう言うと、目に見えてレクシーの目がきらきらとあどけない少女のように輝く。


 レクシーのその反応を見て、やっぱり泊りで女子会をしたかったのだと悟る。


「……罪の塊。初めから、負け戦だった……」


「業がふけーって事だす。みのり、恐ろしい」


「ち、違うよ! わ、わたし何にもしてないんだから!」


 上で春花とチェウォンの様子を盗み見ていた三人が、チェウォンに敗れて降りて来る。


 すごすご戻って来た三人を見て、白奈が呆れたように息を吐く。


「もう。静かに見てるんだから、映画の邪魔しちゃだめって言ったでしょう?」


「……みのりが、悪い……」


「みのり、バカデカ声出した」


「わ、わたしのせいじゃないよ! ふ、二人が余計な事言うからだよ!」


「……でも、声出したの、みのり……」


「おーじょーぎわ、悪し」


「そ、それに! 最初に見に行こうって言ったの、ふ、二人だからね! わ、わたしは止めたんだから!」


 一階に降りて来てもぎゃーぎゃーと騒ぐ三人。


 見苦しく責任転嫁をする三人に、白奈は再度呆れたように溜息を吐く。


「はぁ……どうでも良いけど、この後女子会開催するみたいよ。シャーロットは此処に泊るから良いとして、二人はどうする? 大きな戦いの後だったし、家でゆっくりしたいならそれでも大丈夫よ」


「……平気。泊まりで、スケベ、する……」


 詩の発言に、餡子は慌てた様子で首をばっばっと振って全員の顔を確認する。そして、慌てた様子でスケッチブックに文字を書く。


 アトラク=ナクアとの戦闘時、餡子の魔法は実現できる許容量を超えていた。その負荷が直接喉にかかり、現在声を出す事が難しい。完全に喉が潰れた訳では無いので、安静にしていればいずれ回復するそうだ。だが、その回復も時間は掛かる。それまでは、面倒だけど携帯端末やスケッチブックに文字を書いて対応せざるを得ない。


 皆もそれが分かっているので餡子を急かすような事はしない。餡子が字を書き終わるのを待つ。


 餡子は書き終わった後にバッと勢いよくスケッチブックを皆に見せる。


『エッチな事するんですか!?』


 餡子の書いた文字を見て常識人達が訂正する前に、詩が更に誤解を招く事を続ける。


「……する。それが、大人の、女子会……」


「うむ。スケベ、レディの嗜み」


 詩の言葉にシャーロットも同調すれば、餡子はあわわっと慌てた様子で顔を真っ赤にして『自分にはまだ早いです……』とスケッチブックに書いて女子会を辞退する。


「お馬鹿。からかうんじゃ無いわよ」


「え!? エッチな事しないのカ!?」


「はぁ……馬鹿がもう一人増えた……」


「する訳ねーだろ。さっきの会話の流れで分かるだろ。いつもスケベな事してるか、あたし達?」


 珠緒の言葉に、餡子ははっと何かに気付いたような顔をする。


 女子会はいつもとやっている事が変わらないと珠緒は言った。であれば、楽しくお喋りしたりゲームをしたりするだけのお泊り会だ。変な事は一切していない。少し考えれば分かる事だった。


 むうぅっと怒ったように眉尻を上げる餡子。


『騙しましたね!?』


「……嘘は、女の……」


 そこまで言って、詩はシャーロットに引き継ぐ。


 シャーロットも心得たとばかりに即座に言葉を繋げる。


「アクセラレーター」


「……違う、アクセサリー……」


「嘘で加速って、虚言癖のどうしようもない奴じゃないか……」


「てへっ」


 言い間違えちゃったとばかりに頭をこつんっと軽く叩くシャーロット。


「はぁ……とにかく、今日お泊り女子会開催ね。時間は十分あるから、参加できる人は必要な物とかがあったら自宅から持って来る事。良いわね?」


 話がだれそうだったので、白奈が溜息交じりにそう告げれば、全員から「はーい」と返事が返って来た。


「上の二人には私から言っておくから、準備開始」


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流れるように女子会に引き摺り込まれる春花ちゃん…
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