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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣

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異譚29 同時攻撃

「分布の作成が完了したぞ」


 そう言って、童話のカフェテリアのスクリーンを下ろす沙友里。


 ソファですやすやと眠っていた唯と一、餡子の三人を優しく起こす笑良と白奈。


 他の眠っていた者も沙友里の声で起き、眠たそうに欠伸をしたり、ぱしぱしと頬を叩いて眠気を払おうとする。


 二度目の襲撃から時間は経過し、時刻は夜中の二時。ずっと起きていても体力を消耗するばかりなので身体を休めるためにも睡眠をとっていた。笑良と白奈はまだ眠く無かったので起きており、アリスはずっとタブレット端末と睨めっこしていた。因みに、チェシャ猫は餡子がずっと抱きしめながら寝ていた。


「休んでいる時にすまんな」


 ぽやぽやと眠そうな顔を向ける少女達を見て、沙友里は申し訳無さそうに言う。沙友里だって寝てないけれど、自分と同じ苦労を少女達に強いるつもりは無いし、眠っていない事を主張(アピール)するつもりも無い。


「平気。状況は一刻を争う」


 タブレット端末を膝に置き、直ぐに話を聞く態勢を取るアリス。


「さっさと終わらせればその分休めるしね……ふぁ~あっ」


 言った後に、眠たそうに大きな欠伸をする朱里。


「そうか。だが、手早くブリーフィングを済ませよう。幸い、決まった事の説明だけだからな」


 スクリーンに画像を映し、沙友里はブリーフィングを開始する。


「灰色の蜘蛛の出現数をざっくりとだが分布で表した。結果、八か所だけ異常に数が多い地点が見つかった」


 沙友里の表示した世界地図には、灰色の蜘蛛の出現数の多少が赤色のグラデーションで記されていた。赤く濃い地点の出現数が多く、薄くなっていくにつれて数は少なくなっている。


「この八か所には日本も含まれている。正確な位置は分からないが、後は実地調査にはなってしまうがな」


「はい!」


「どうした、餡子?」


「この八か所の何処かにアトラク=ナクアが居ると言う事でしょうか?」


 びしっと綺麗に挙手をしたまま、餡子は疑問を口にする。


「アトラク=ナクアが居るかどうかは分からない。居たとして、確率は八分の一。日本(うち)が当たるとも限らない」


「運が良ければかち合うって事ね」


「運が悪ければの間違いでは……?」


「決定力の問題よ。一番決定力があるチームがアトラク=ナクアと戦うべきだもの。ウチなら決定力として申し分無いわ。他のチームがアトラク=ナクアに当たった場合、対処にかかる時間も増えるし、国を跨いでる以上、アタシ達も容易に援護に向かえないからね」


「なるほどです」


 朱里の説明に、納得したように頷く餡子。


「だが、この八か所の何処にも居ない可能性も勿論ある」


「この八か所が、灰色の蜘蛛を増やすだけの巣の可能性もあるって事ですね」


「ああ。だとしても、巣を壊せば相手の戦力を大幅に減らす事が出来るだろう。アトラク=ナクアを倒す前にある程度相手の戦力を減らしておけば、決戦の時に楽になるだろうしな」


 無限にも思える数の雑魚を気に掛けながら旧支配者であるアトラク=ナクアを相手にするのは面倒極まる。例え今回の作戦でアトラク=ナクアを倒す事が出来なくとも、次の作戦を遂行しやすくなるための前準備だと思えば無駄では無い。


 もっとも、あの数の敵を生み出す巣を破壊するのも容易ではないけれど。


「アトラク=ナクアは巣を護る事に執着している。こちらから仕掛ければ、そのタイミングで反撃を行って来る。その反撃が何処まで波及するか分からない。遠い地の襲撃の影響がこちらまで波及する可能性も十分にある」


「前回はどっかが先走ったとか?」


「それは分からない。分かったとて、不要な不和を生む情報だからな。悪いが伝える事は出来ない」


「へーい。ま、頭が痛くなりそうな話だってのは分かったわ」


 何処かが先走って攻撃を仕掛け、その反撃がその場所だけは無く世界中で同時に行われたのだとしたら、その先走って攻撃した国へ非難の声が向かう事は必至だ。


 力を合わせてこの窮地を脱しなければいけない以上、余計な不和を生みかねない情報を下の者に回す必要は無い。上層部で把握と処理を行えば良い。


 とはいえ、実際に分かってはいない。襲撃に遭った時間が一番早かった場所を探し出せばすぐに分かるだろうけれど、そんな事をしている余裕は無い。


 現状すべき事では無い。今は、目の前の危機に集中する。


「もし仮に一部の攻撃への反撃が世界中に波及するのだとしたら、タイミングを合わせた方がこちらも動きやすい。よって、全世界で同時攻撃を仕掛ける事が決定した」


「……ワールド、ミッション……!」


 全世界同時攻撃という言葉に少しだけテンションを上げる詩。不謹慎ながらも、コミックのような展開に反応してしまう。


「対象攻撃、遊撃、防衛の三チームに別れて貰う。対象地点を攻撃するのはアリス、朱里、みのりの三人。遊撃には唯と一、詩の三人。防衛には白奈、珠緒、笑良、餡子の四人だ」


 攻撃班は突破力、殲滅力、索敵力を重視している。サンベリーナであれば、持ち運びも楽だし、アシェンプテル程とはいかなくとも正確で緻密な索敵が可能だ。それに、何かあった時に回復も出来る。


 遊撃には範囲攻撃を得意とする唯と一、詩の三人。今まで通り雑魚ばかりであれば、この三人で充分である。


 防衛には白奈、珠緒、笑良、餡子の四人。この四人は空を飛ぶ事が出来ないので、必然的に防衛に回される。


「今回はあまりにも規模が大きい。よって、花と星と合同で動いてもらう事になる。ヴルトゥーム戦を乗り越え、更に成長をしているお前達だ。きっと、今回も大丈夫だと私は思っている」


 沙友里は全員の顔を見やる。


 以前と比べて、随分と逞しくなった。時間も時間なので、若干眠そうではあるけれど。


「作戦開始は三時間後だ。それまで、ゆっくり休んでくれ」


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