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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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異譚21 三班編成

 世界に亀裂が走った。これは、決して比喩表現では無い。


 世界に、いや、地球に亀裂が広がっている。目視では底が確認できない程の亀裂が、地球全土に広がっている。勿論、日本にもその亀裂は広がっている。


 突如走った亀裂による被害は甚大で、建造物や人的被害は計り知れない。死者、行方不明者多数。とある地方では避難所も亀裂に巻き込まれ、別の避難所まで距離があるために避難は難航している。


 なにせ、異譚よりも規模が大きいのだ。全容はまだ見えていないけれど、一気に避難出来る人数では無い。


「これが異譚であるか、また別の天変地異の類いであるかどうかは目下調査中だ。だが、異譚に酷似した魔力反応と、亀裂の奥に糸のような物が複数確認されている。自然発生するものとは思えない事から、異譚、もしくは、以前のヴルトゥームのような存在が関与している可能性がある」


 ヴルトゥーム。その単語に、朱里は思わずぴくりと眉を動かすけれど、それに気付いた者は誰も居ない。全員、今回起きた異変に釘付けなのだ。それこそ、誰の顔色を窺う余裕も無いくらいに。


「この亀裂は日本のみならず、世界各地で確認されている。世界中でこのような事が起こっている以上、対策軍としては情報の収集と事態の解決に向けて全てのリソースを割くつもりだ。お前達にも可能な限り調査を行って貰う。どんな小さなことでも報告をしてくれ」


 話に区切りをつけ、沙友里は投影機(プロジェクター)の電源を切り、スクリーンを上げる。


「亀裂の底は見えない。今回は、空を飛べる者が調査を行う。メンバーは、アリス、朱里、唯と一、そして詩の五人だ」


「み、道下さん。わ、わたしも空を飛べますよ?」


 名前の挙がらなかったみのりが挙手をしながら空を飛べますアピールをする。サンベリーナ自身に飛行能力は無いけれど、魔法で燕を出す事が出来る。燕の背に乗れば、サンベリーナも空を自由に飛ぶ事が出来るのだ。そうでなくとも、サンベリーナであれば持ち運びは簡単だ。付いて行く事にデメリットは無いはずである。


 その事について沙友里が思い当たらなかった訳では無い。だが、必要なのは亀裂の調査だけでは無い。


「みのりと笑良には一般人の治療を受け持って貰いたい。幸い、詩も治療系の魔法は使える」


「……ちょびっと、だけだけど……」


「そのちょびっとが役に立つ。今回のメンバーは機動力が抜群だ。そうそう被弾する事も無い。それに、魔法少女はある程度であれば自然治癒でカバー出来る。だが、一般人はそうはいかない」


 亀裂と共に発生した地震の影響で、崩れた家屋も少なくない。家の下敷きになった者も居れば、工事現場の足場が崩れて地面に叩き付けられた者もいる。最早、医療機関だけでは手が足らない。


「医療機関だけでは手が足りない以上、みのりと笑良には一般人の治療を最優先に行って貰う。調査も大事だが、人命も大事だ。頼んだぞ、二人共」


「了解です~」


「りょ、了解です」


 アリスと一緒に行動出来ない事は不満だけれど、人命救助も大切な仕事だ。割り切る他無い。


「餡子、珠緒、白奈の三人は被害地域にて救助活動を行ってくれ。取り残された者や、瓦礫の下敷きになってしまっている者が居るかもしれない。三人は星や花の魔法少女達と合同での救助活動になる。やれるか?」


 童話以外の魔法少女との合同活動。沙友里としては、心配があるのはただ一人だけだったけれど、そんな事とはつゆ知らず、餡子は元気良く返事をする。


「大丈夫です! お任せください!」


「汎用性の高い氷使える白奈と、鼻が利く餡子は良いとして……あたしそんなに出来る事無いと思うけど?」


 以前の珠緒であれば、先の言葉を面倒臭そうに言ってのけていた事だろう。他人なんて自分には関係無い。自分の出番が無いのであれば行く意味は無いのでは? という否定的なニュアンスで言っていたはずだ。


 だが、今の珠緒の発言は、自分に出来る事を正確に理解しての言葉だった。珠緒の魔法は戦闘向きであり、人命救助には一切と言って良いほど向いていない。行っても、救助の役には立てそうも無い。


 救助に前向きだからこそ、自分の至らぬ点を問題として挙げたのだ。


 珠緒の精神的な成長に驚愕と喜びを覚えながらも、それを覚られないように沙友里は真剣な表情で珠緒に返す。


「もし亀裂が異譚であれば、異譚生命体との交戦の可能性もある。そうなった場合、遠距離から敵を倒せる珠緒の力は絶対に必要になる。それに、虎の子の銀の弾列(ナンバーズ・シルバー)の弾数も増えたのだろう? 仮に異譚支配者が出て来たとて、今の珠緒であれば任せられる。その点を踏まえて、珠緒は救助活動の護衛を行って欲しい」


「そういう事なら了解。出番があれば、きっちり撃ち抜いてやるわよ」


 沙友里の説明に納得と了解を示す珠緒。


「それでは、ブリーフィングを終了する。各自、準備が整い次第現場に向かってくれ。調査班には担当区域の地図を送信する。救護班は現着した後、指揮官に指示を仰いでくれ。治療班は手の足りない病院へ移動を開始してくれ。各班、状況次第では現場や役割に変更が生じる場合もあるが……まぁ童話(うち)ではいつもの事だ。いつも通り、臨機応変に頼むぞ」


「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」


 ブリーフィングを切り上げ、少女達はそれぞれの現場へと急行した。


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― 新着の感想 ―
この世界、この調子で大災害が起こってたらまじで人類が存続できない可能性あるのコワスンギ。
ワクワクドキドキ
ああ、不穏、ああ不穏だ
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