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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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異譚15 部屋割り

 一通り遊園地で遊んだ春花達は、遊園地を後にして今夜泊るホテルへと向かった。


 四人部屋を二部屋、三人部屋を二部屋、一人部屋を一部屋。朱里は確かに、全員が泊れるように部屋を予約した。


「はぁ!? 一人部屋を用意できない!?」


 だが、いざフロントまで行けば、朱里が予約したはずの部屋が用意できないと言われてしまった。


 ホテルのフロントスタッフは申し訳無さそうに頭を下げる。


「申し訳ございません。こちらの不手際で、ダブルブッキングしてしまっていたようで……。先程、そちらのお客様もチェックインしてしまっておりまして……」


「どうしてそんな事に……」


「システムエラーを起こしてしまったようでして……普段はこんな事は無いのですが……」


「……じゃあ、二人部屋とか空いて無いですか?」


「そちらも、満室となっておりまして……四人部屋であればご用意できますので、三人部屋から四人部屋への変更でいかがでしょうか?」


 なんて提案をしてくるフロントスタッフだけれど、そんな事出来ようはずも無い。ぱっと見では全員女性の集団だけれど、一人だけ男子なのだ。春花の事情を全て知っている朱里は、春花と同室でも構わないけれど、他の面々はそうはいかない。いや、白奈だけは事情を知っているので、三人部屋でも大丈夫だろうけれど、周りからの目というモノがある。


 この場に居る全員――星の面々には遊ぶ前に説明済み――春花が男の子である事を知っている。だからこそ、朱里の苦悩に納得もしているし、フロントで揉めてしまっている事にも理解を示している。


 だが、この状況を良く思っていない者もいる。


「東雲さん。僕、別の所でホテル取ってみるよ」


 自分のせいで全員がホテルにチェックインできていない状況を春花が良く思うはずも無い。例えそれが自分の非でなかったとしても、自分が原因である事には変わりないのだから。


「ホテル取れなかったらどうすんのよ」


 春花の提案に、朱里が怒ったように返す。


「……野宿?」


「馬鹿言わないの! アンタが外で寝てたら、直ぐに良からぬ事考えてる連中に攫われるっての!!」


「それは、どうだろうか……」


 朱里の極端な言葉に、思わず苦笑してしまう春花。


 だが、春花が思っている以上に、朱里の言葉は大袈裟なものでは無いと春花以外の全員が思っている。


 危機感が薄い春花を見て、星の面々も絶対に一人で別のホテルを探させてはいけないと確信する。


 ぽやんぽやんと危機感の薄い雰囲気を漂わせている春花を見て、朱里は渋面を作ると、やがて諦めたように溜息を吐いて白奈の方を見た。


「……はぁ……白奈。アンタとアタシなら良いでしょ」


「まぁ、あんまりよくは無いけど、今回ばかりはしょうがないわね」


 二人が何を話しているのか分からない他の面々は頭上に疑問符を浮かべているけれど、朱里は他の面々は放っておいてフロントスタッフに向き直る。


「じゃあ、四人部屋三つ、三人部屋一つにして貰えます?」


「かしこまりました。この度は大変ご迷惑をおかけいたしまして、まことに申し訳ございません。お詫びと言ってはなんですが、お値引きの方させていただきますので」


 至極申し訳無さそうに頭を下げるフロントスタッフに疲れたように返事をしてからチェックインを済ませ、朱里達はルームキーを受け取って部屋へと向かう。


「三人部屋はアタシ達が使うから、四人部屋はアンタ達で上手く割り振って」


「わ、わたしは有栖川くんと四人部屋でも良いよ!」


「三人部屋はアタシ達が使うつってんでしょうが。とにかく、そっちはそっちで部屋割りしといて」


「了解よ~」


 残り三部屋のルームキーを笑良に渡してから、朱里、春花、白奈の三人は三人部屋へと入っていく。


「まぁ、致し方ないですね。全員、他言無用ですよ。余計なトラブルは無いに越した事は無いんですから」


 微風が全員に釘を刺す。


「言われなくても分かってるっつーの。しゃーないわな。一人でほっぽる訳にもいかねぇし」


「……うむ。見た目、美少女……」


「朱里ちゃんと白奈ちゃんなら問題無いわよ~。春花ちゃんの保護者みたいなところあるもの~」


「「違う」」


「え~、何が~?」


「春ちゃんは」


「花ちゃんは」


「唯の」


「一の」


「「ママ。故に、春花ちゃんはママ。それ以外は有り得ない。春花ちゃんは至高のママ。春花ちゃんが至高のママ」」


「なに言ってんだお前等」


 ふんすと鼻息荒く熱弁する唯と一。二人にとっては、春花はママでありパパ。見た目はママだけれど性別はパパ。だがその包容力は本物で、二人は春花と居るとついついいつも以上に甘えてしまう。


 そんな双子に呆れたように返す珠緒。


「ともかく、私達は私達で部屋割りをしましょう! 真昼先輩! 同室になりませんか!?」


「ええ、良いわよ。なら、詩も一緒の部屋にする?」


「……うぃ……」


「ほな、うちも一緒の部屋にしよか」


「なら、午前中に一緒だったメンバーで固めるか?」


「それで良いだろう。唯、一、荷物を置いて寛ぐとしよう」


「りょー」


「かーい」


「では、私もそちらに行きましょう」


「にょ! にゃら、こっちは笑良ちん、珠ちゃん、みのりんの四人だにぇ!!」


「そうだな。荷物置いて少し寛ぐか」


「そうね~。ちょっとゆっくりしましょうか~」


「そ、そうだね……」


 少しだけ不満そうなみのりだけれど、ひとまず部屋割りは決まった。


 思う所はあるだろうけれど、一旦部屋で寛ぐ事にした一行はそれぞれの部屋に入る。みのりだけは、最後まで春花の入っていった部屋を羨ましそうに見ていたけれど。


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[一言] さすがままぁぱぱぁです。
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