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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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異譚14 お昼ご飯

 思い思いにアトラクションを楽しんでいた一行だけれど、時刻は既に十二時半。遊ぶ事に一区切り付けて全員が昼食を食べるために集まる。


「フードコートがあるみたいだけど、出店もあるみたいよ。どうする?」


「どっちに行きたいかで良いのでは? 食べたい物も皆違うだろうし」


「じゃあ、二手に別れましょうか~」


 フードコートと出店で出ている食べ物が違うので、二手に別れる事に。


「アンタは何食べたい?」


「なんでも」


「そ。なら、アタシと出店回りましょう。色々食べたいから半分こね」


「うん」


 朱里の提案に、こくりと頷く春花。


「じゃあ、ワタシも二人に付いて行こうかしら~」


 二人の動向が気になって仕方が無い笑良は、特に食べたい物も無いので二人に付いて行く事にする。


「色々話も聞きたいから、星は星で固まりますか?」


「うちはそれでもええけど……詩ちゃんと餡子ちゃんはどないしはる?」


「……付いてく……屋内、入りて……」


「私もせっかくなので付いて行かせて頂きます!」


 瀬里奈の言葉に、詩と餡子も付いて行く事にする。


 二人が付いて来ると分かると、真昼は嬉しそうに口角を上げている。本人はクールに振舞っているつもりだけれど、表情豊かなのでバレバレである。


「唯も行く」


「一も行く」


 唯と一は李衣菜に懐いたのか、李衣菜とずっと手を繋いでいる。


「ああ、良いぞ。フードコートでも良いか?」


「もち」


「ろん」


「そうか。なら、私達もフードコートにしよう」


「「おう」」


「あ、乙倉さん」


 唯と一が別行動だと分かると、春花は李衣菜に声を掛ける。


「うん、なんだ?」


「二人が甘い物ばかり食べないか、見張って……監視……見守っていて貰っても良いですか? 目を離すと直ぐに甘い物だけしか食べなくなっちゃうので」


「見張ってって言った」


「監視とも言った」


「分かった。ちゃんとご飯を食べさせるよ」


「ありがとうございます」


「ママが口煩い」


「パパが教育熱心」


「ご飯ちゃんと食べれば、甘い物食べても良いから。しっかりご飯は食べてね?」


「「はーい」」


 春花の言葉に、空いた手を上げて答える双子。


「あんた、本当にママみたいだな」


 感心したような、呆れたような顔で春花を見る珠緒。


「まぁ、二人のお婆さんに頼まれてるから。それに、目を離すと直ぐに甘い物食べちゃうから……」


 菓子谷家でご飯を作っている間に、二人は隠し持っていたお菓子を食べてしまう事がままあるので、時折見張っていなければいけないのだ。


「あんたも大変だな」


「そうでも無いよ」


 別段、二人のお世話を大変だと思った事は無い。


 ともあれ、出店とフードコートの二手に別れて昼食を食べる事になった。


 星の魔法少女五人と詩、餡子、唯と一はフードコートへ。


 春花、朱里、白奈、みのり、笑良、珠緒は出店へ。


「色々あるわね」


「ピザ、バーガー、ポテトにフルーツ飴もあるわ~」


「ど、どれ食べようか?」


「皆で食えるもん何個か買えばよくねぇか?」


「食べきれる量を買わないとね。残すの勿体無いから」


 様々な出店があるので、目移りしながら歩いてしまう。


 春花もきょろきょろしながら出店のメニューが載った看板や人々が持つ食べ物を見てしまう。


 そんな風に歩いていたからだろう。不意に、春花は女性とぶつかってしまう。


「きゃっ」


「あっ……すみません。大丈夫ですか?」


「え、ええ……あぁ、申し訳ございませんわ。お洋服が……」


 ぶつかってしまった女性に言われ、女性の持っていたアイスクリームが服に付いてしまっている。


「いえ、大丈夫です。こっちこそごめんなさい。アイス、ダメにしちゃって……」


「お気になさらないでください。アイスよりも、お洋服の方が大事ですわ。せっかくお似合いですのに……」


「本当に気にしないでください」


「ですが……」


「なに、何かあったの?」


 春花が付いて来ていない事に気付いた朱里が、春花の元へやって来る。一瞬ナンパされたのかと思ったけれど、春花はぱっと見女性であるため、女性からナンパされる可能性は殆ど無いだろう。


 困った様子の二人と、春花の服に付いたアイスの汚れを見て全てを察した朱里は、ポケットからハンカチを取り出して春花の服に付いた汚れを拭う。


「ぶつかっちゃったの? 大丈夫?」


「うん。でも、アイスが……」


「いえ、それよりもお洋服ですわ」


「服は良いわ。気にしないで。アイスはアタシが買い直すわ」


 二人共、互いの被害を気にして話がまとまらないと判断し、解決策を提案する朱里。


「いえ、それには及びませんわ。食べられない訳ではございませんので」


「なら、こっちも気にしないで。洗濯すれば大丈夫だから。それでこの話はお終い。良いわね?」


「はい。そちらが、よろしいのでしたら……」


「僕は大丈夫です。こちらこそ、本当にごめんなさい」


「いえ、わたくしもよそ見をしていましたので。本当に、申し訳ございませんわ」


 最後にぺこりと頭を下げて、向こうの方から離れていく。


 連れらしき人達の元へ歩く彼女を見送ってから、朱里は春花に向き直る。


「アンタ気を付けなさいよ? ただでさえぼーっとして……って、大丈夫? 汗凄いけど」


「え?」


「てか、顔色も悪い。大丈夫? 具合悪く無い?」


 心配そうに春花の顔を覗き込み、アイスを拭いた方と逆の方で春花の汗を拭う朱里。


 春花に自覚は無いけれど、朱里がこうして心配しているという事は、相当顔色が悪いのだろう。


 だが、体調が悪い感じは無い。眩暈もしなければ、頭痛も無い。気持ち悪さだって特には無い。


「ううん。大丈夫。……なんでだろう?」


「無理はしないでよ? ダメそうなら、アタシ達だけ先にホテルにチェックインしても良いんだからね?」


「ううん。大丈夫……って、ホテル?」


「え? アレ……言ったわよね、アタシ? ちょっと遠いから一泊二日だって……」


「……そうだっけ?」


 小首を傾げる春花を見て、朱里は呆れたように溜息を吐いた。因みに、微風と李衣菜がレンタカーを借りて車二台で来ているので、荷物は車の中にある。


「はぁ……やけに荷物少ないと思ったら、そういう事……」


「ごめん。すっかり忘れてた……」


「……まぁ良いわ。ホテルに浴衣とかあるみたいだし。一応アンタも男だから、アンタは一人部屋で予約取ってるしね。もし不便なら、どっかで服でも買いましょ」


「うん」


「じゃ、体調が大丈夫なら行きましょ。でも、無理はしないでよ? 体調悪かったら言いなさいね? アンタが無理してたら、皆も楽しめないんだから」


「うん、分かった」


「よし。じゃ行きましょう」


「うん」


 春花の体調が悪い訳では無いと分かれば問題は無い。今の春花であれば、体調が悪い事を隠す事はしないはずだ。


 朱里は春花を連れて皆の元へ戻る。その背中を見詰める視線には、気付く事はなかった。


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― 新着の感想 ―
きゃっ、だって。女子やんw
[気になる点] しっかり茶々入れに来たか……? 多分おとひめだよな?
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