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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第7章 蜘蛛の巣
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異譚12 お化け屋敷 1

「ね、ねぇ……ほ、本当に此処に入るの……?」


「ええ。面白そうじゃない」


「うにゅうにゅ! ゆーめーらしいし、絶対入ゆ~!」


「あ、あたしも、別に入っても良いけど?」


「というか、もうチケット買っちゃったしね。入る以外の選択肢は無いわよ」


「列にも並んでゆし~」


 珠緒、真弓、白奈、みのりの四人が並んでいるのは、この遊園地の目玉アトラクションの一つである病院が舞台のお化け屋敷である。


 一日どのアトラクションでも遊べるフリーパスを買ったけれど、このお化け屋敷は別料金。そこそこ値が張る金額であるけれど、四人で割り勘すれば大した金額にはならない。


 時間指定なので、一番早く入れる時間のチケットを取り、早速やって来たのだ。


「外観、雰囲気あるわね」


「にぇ~。あっ、中から悲鳴が聞こえゆ~」


「あらほんとだ。ふふっ、結構皆大きい声で叫んでるわね。そんなに怖いのかしら?」


「お化け屋敷なんだから、怖ければ怖い程良いよにぇ~」


 白奈と真弓は呑気にお化け屋敷の外観を眺めながらお喋りをする。


「――っ。ひ、悲鳴が聞こえるわね……ま、まぁ? そんなに怖い事は? 無いでしょうけど……」


「そ、そそそそ、そうだよね! だ、だだだって、わたし達、幽霊より怖い相手といつも戦ってるもんね?」


「そ、そう! その通り! い、異譚の敵の方が怖ぇんだから! 全然大丈夫! 大丈夫ったら大丈夫!」


 珠緒とみのりは中から微かに聞いている悲鳴にびくっと身を震わせながら、強がるように怖くないと言い張る。


 強がる二人の会話を聞いて、白奈と真弓は顔を見合わせてふふっと楽しそうに笑みを浮かべる。


 四人がお喋りをしながら順番を待っていると、スタッフが前に並んでいるグループを中に案内する。


 五組程案内したあと、一番近くに居た白奈にスタッフが声を掛ける。


「何名ですか?」


「四名です」


「チケット拝見します。……はい。では中へどうぞ」


 スタッフに案内され、四人はお化け屋敷の中へと脚を踏み入れる。


 白奈達を合わせて六グループが一度に通される上限のようだ。


 入り口を通り、真っ暗な部屋に通される。部屋は異様な程薄暗いけれど、病院に置いてあるような長椅子が幾つか置かれている事から、そこが病院のロビーである事は理解できた。


 ロビーに案内されたグループはそれぞれグループごとに長椅子に座る。


 長椅子に座ると、投影機がスクリーンに画像を写し、お化け屋敷の注意事項をスタッフが説明する。


 その後、このお化け屋敷のコンセプトを説明するための映像が流れる。


「あわ……あわわ……」


 スクリーンに映されるのは、廃病院となった経緯と病院が行って来たその所業。病院では非道な人体実験が行われており、患者や医師達の末路までが語られた。


 映像が終わると、一番最初に案内されたグループから懐中電灯を渡されてアトラクションスタートとなった。


「中の雰囲気も良いわね。デティールにも拘ってるみたいだし」


「にぇ~。わくわくだよ~」


「み、みのり……あ、あんた怖いんでしょう? し、仕方ないから、て、手ぇつないであげる」


「べ、べべ、別に怖くないけど……た、珠緒ちゃんが、わたしと手を繋ぎたいなら、つ、つないであげるよ」


「あ、そ、そう? た、たまには、仲良くするのも……良いわよね?」


「い、良いと思う! な、仲良くするのは、悪いことじゃ無いからね!」


 始まる前から恐怖に震えている二人は、取り繕いながら手をつなぐ。互いに手汗が凄い事になっているけれど、そんな事を気にしている余裕は無い。


 着々とグループは案内され、最後のグループである四人が案内される。


「懐中電灯です。では、進んでください」


「はい」


「はぁ~い」


「……っ」


「うにゅぅ……っ」


 懐中電灯を受け取った白奈は躊躇う事無く先頭を歩く。その後ろを真弓、珠緒とみのりが続く。


「結構暗いわね」


「空気もひんやりしてゆ~」


「お、おいみのり。押すなよ」


「お、押して無いよ! た、珠緒ちゃんこそ押さないでよ!」


「押してねぇって! こ、怖くねぇんだから、押す訳ねぇじゃんか!」


「あらそう? なら先頭交替する?」


 珠緒の強がりに白奈が意地悪く言えば、珠緒は慌てたように返す。


「いや別に良い! お前達も楽しみたいだろ!? 譲ってやるよしゃーねーから!」


「遠慮しなくて良いのよ? 私は皆が楽しんでるのを見るのも好きだから」


「その意見にはあたしも激しく同意だなぁ! だからお前が先頭で良い! 遠慮しないで楽しんでくれ!」


「そう? 代わりたくなったらいつでも言ってね」


「お、おおう!! 分かった!! 任せとけ!!」


 虚勢を張る珠緒に、白奈は声を殺して笑う。


 普段は見られない珠緒の様子がおかしくて仕方が無いのだ。


 序盤の段階でこの怖がり様であれば、本格的に驚かしフェーズになればもっと面白い事になるに違いない。


 珠緒とみのりが少しだけ可哀想だけれど、入ると言ったのは二人である。勿論、白奈は二人が強がって言った事を理解している確信犯であり、止めなかった白奈も悪い。


 心中でにこにこしながら、白奈は止まる事なく先へ進む。白奈の意地悪な心中を知らぬまま、珠緒とみのりの二人は白奈と真弓を盾にしながら後に続いた。


戦慄する迷宮です。

アトラクション内の細かい描写はかなり省いてます。気になる方は是非行ってみてください。

面白かったです。

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[良い点] 日常過ぎて逆に怖くなる
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