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魔法少女異譚【書籍化決定】  作者: 槻白倫
第6章 ■■■■と■■■■■■

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シャーロット・ウェストウッドの一日

 シャーロットの一日は早――


「シャーロット!! さっさと起きろ!! 今何時だと思ってるんだ!!」


 ――くはない。


 アリスのイラストがプリントされた布団に身をくるみ、アリスの三等身程のぬいぐるみを抱いて眠るシャーロット。


 その布団を容赦無く剥ぎ取り、シャーロットの手の届かないところに放り投げるレクシー。


 布団をはぎ取られたシャーロットは身体を丸めて眠る。因みに、服もアリスのイラストがプリントされている。もう少し詳しく言うのであれば、日本で買った子供用の服でもある。珠緒と同じく、身長の低いシャーロットは子供用の服でも着る事が出来る。


「……今、何時?」


「君を起こしに来なかったら、今頃私は優雅なランチタイムだっただろう時間だよ!」


「……つまり、ぐっもーにん……」


「ランチだって言ってるだろう!! さっさと起きて準備をしろ!!」


「今日、休日……まだ、寝る……」


 ずぼらでいい加減なシャーロットだけれど、流石に出勤時間に遅刻する事は無い。


「そうだ休日だ!! 私と映画を観に行く約束をした休日だとも!!」


「……そだっけ?」


「そうだ!! 分かってると思うが、約束の時間はとーっくに過ぎてるからな!!」


 未だベッドに横たわるシャーロットを起き上がらせ、ふわふわの髪の毛にブラシを通して寝癖を直す。


「今日はもう諦め……」


「ふざけるなバカ! お前から誘ったんだろうが! 意地でも映画に行くからな! ランチにも行けなかったからディナーにも行くぞ!」


「うぅ……酷い……」


「酷いのはお前だ!!」


 濡らしたタオルで顔を拭い、クローゼットから空色のエプロンドレスを取り出して着替えさせる。レクシーが居てもお構いなしに着替えるので、がっつり下着が見えるけれども、そちらもしっかり空色である。


「思うんだが、他に服は無いのか? いつもそれだろう? 映画を観終わった後に、ショッピングでもするか?」


 シャーロットのクローゼットには空色のエプロンドレスしか入っていない。一応、下の方にシャツやらパジャマ、礼服など入っているけれど、正装以外は全てアリス関連の服のみとなっている。


 部屋の中もアリスグッズで一杯だ。アリスのぬいぐるみ、ポスター、フィギュアにコラボ食器等々。アリス一色に染められた部屋は、本人が見れば嫌な顔をしそうな程の濃さである。


「いらね」


 着替え終わり、香水を付ける。香水はアリスをイメージした有名企業とのタイアップ香水であり、アリスが認知している数少ないコラボグッズでもある。表には出していないけれど、このタイアップで得た金銭は全て異譚復興の支援団体に寄付されている。勿論、対策軍と連携した公式の支援団体である。


 シャーロットはこの香水をダース単位で買っているので、暫くは持たせる事が出来る。有名ブランドとのコラボ香水なので一つ数万円はするのだけれど、実力派魔法少女であるシャーロットには関係の無い話である。そもそも、推しに出すお金は惜しまない。


「準備、でけた」


「なら行くぞ」


「うい」


 シャーロットを連れて、レクシーは映画館へと向かう。


 現地集合だったのでレクシーは車で来ていた。シザースドアタイプのスポーツカーで、色は白。王子様のように凛々しい顔立ちをしているので、スポーツカーがとても良く似合っていると同僚の間では好評である。


 ただ、車の値段を知っているだけに、一度助手席に乗せて貰った後はあまり乗りたがらない者が多い。何か傷付けてしまってもレクシーは気にしないけれど、傷を付けてしまった方が気にしてしまう。


 それに、人によっては高級車で送迎をして貰う事に気を良くして、頻繁に頼みだす者もいる。レクシーの周りは人が出来ている者が多いので、そう言った者に今まで現れていないけれど、本人達が何とも思っていなくとも周囲がやっかみを含めて悪く言う事もあるだろう。実際、本人達にその気はないけれど、周りから悪いように言われてしまった者もいる。


 レクシーは実力もあり、そのルックスも相まって人気ではあるけれど、それを良く思わない相手からのやっかみも多い。


 なので、レクシーは自身の車に人を乗せる事はあまり無い。レクシーとて、好んで送迎をしたい訳では無いけれど、友人の送り迎えを渋る程狭量では無い。


 有名になるのも面倒だなと、たまに思ってしまう。


「よろ~」


 だが、シャーロットは気にした様子も無く車に乗り込む。そして、レクシーが買っておいたコーヒーを勝手に飲み、朝食兼昼食代わりのビタミンバーを食べ始める。


「食べカスはこぼすなよ」


「うぃー」


 だからという訳では無いけれど、こうして気にした様子も無く車に乗り込んで、勝手気ままに飲み食いするシャーロットと一緒にドライブをするのは気が楽である。


 因みに、シャーロットも車は持っているけれど、アリスの写真がプリントされた痛車である。


 車を走らせ、映画館に向かい、元々見る予定だった映画を観る。話題の恋愛映画であり、感動要素もある。レクシーはとても感動して涙ぐんでいたけれど、シャーロットは終始ほけーっとした顔でポップコーンを食べていた。


 上映が終わり、二人はシアタールームを後にする。


「良い映画だったな……」


「そだな」


 ほけーっとして見ていたけれど、シャーロット的にも満足できる映画だった。


「禁断の恋……良いよなぁ。別に、ドラマティックな恋愛がしたい訳では無いが……こう、一応女子として憧れるモノがある」


 凛々しい王子様のような見た目のレクシーだけれど、その趣味は少女的な物が多かったりする。日本の少女漫画が好きだったり、恋愛映画が好きだったり、ぬいぐるみが好きだったり。シャーロットに言わせるならば、こてこてのギャップ萌え系女子なのだとか。


「ワシ、アリスとの遠距離で禁断の恋しとる」


「……君に関しては遠距離で良かったと思うよ、本当に……」


 同じ国、同じ地域に産まれていたら、きっとストーカーのように付け回すに違いない。アリスは気にしないだろうけれど、歯止めが利かなくなって警察のお世話になる未来が見える。


「会えない時間が、二人の愛を強くする」


「多分君だけだよ、強くなってるの」


 その後、二人は少しだけ買い物をしてからお昼ご飯を食べていないので早めにディナーに向かった。


「美味しいか?」


「うめうめ」


「なら良かった」


 ステーキを頬張るシャーロットを見て、満足そうに笑みを浮かべるレクシー。


 ディナーを終え、レクシーはシャーロットを家まで送る。


「ありがと」


「ああ。次は寝坊するなよ」


「うい。頑張る」


 ぐっと親指を立てるシャーロットを見て、次も寝坊するなと何故か確信するレクシー。


 家に帰り、シャーロットはそのままだらだらと過ごす。動画を見ながら、日本の友人達にメッセージを送る。


 SNSに今日観た映画の感想を載せ、ステーキを食べるレクシーの写真を載せていいねを荒稼ぎする。それで承認欲求が満たされる訳では無いけれど、自慢の友人が世間に好かれるのは悪い気がしない。


 レクシーの方も、ステーキを頬張るシャーロットの写真を載せているので、互いに互いの写真を載せる事にいちいち確認を取ったりはしない。水着等、恥ずかしがりそうだなという写真は確認するけれど、これくらいであれば許容範囲内だ。


 シャーロットの乗せた写真に、リプライで写真が送り付けられる。


 そのリプライには、ステーキを食べるアリスの写真が載っており、コメントには『おそろいね』と書かれていた。


 リプライしたのは朱里であり、朝一番に確認して送って来たのだろう。


新しいアリスの写真に歓喜しながら、即座にデータとして送って欲しいと朱里にメッセージを飛ばす。


「ふふふ。コレクション、増えた」


 ニヤニヤと嬉しそうに笑うシャーロット。


 その後、SNSを巡回し、早朝からゲームにログインしている詩と一緒に眠くなるまでゲームをする。


 そうして疲れ切った身体をベッドに投げ出し、夢の中へと旅立つ。


「明日、シャワー浴びよ……」


 これが、シャーロットの休日。自堕落的で、何処までも自分に甘い一日だけれど、休日なんだから良いよねと本人は思っている。


 レクシーは大幅に予定を狂わされているけれど、それはいつもの事なのでもう諦めている。シャーロットと一緒に居て予定通りにならないのは、いつもの事なのだから。


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