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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第6章 ■■■■と■■■■■■
330/489

異譚68 リボルビングライフル

クライマックスですね。頑張ります。

 溢れ出す魔力の奔流が迫る触手を押し返す。


 イェーガーの体内から放出された魔力は八つの弾丸となり、触手を撃ち抜いた後でイェーガーを撃ち抜く。


 八つの弾丸は一つずつイェーガーを撃ち抜く。


 その度にイェーガーの服装が変わる。


 白のフリルの付いたシャツ。金の刺繍が入った黒のベスト。黒のフリル付きのスカートに焦げ茶色のブーツ。革のグローブに、青の宝石が埋め込まれた赤色のリボン。腰には古めかしい大振りのナイフが下がっている。


 全ての衣装が変わる中、変わらないのは赤いフード付きのポンチョ。これだけは、変えられない。あの日貰った強くなるための一歩だから。


 迫る最後の一発。


「っらぁッ!!」


 その一発を思い切りぶん殴る。


 ぶん殴った弾丸は弾け、散った魔力は再度凝縮してイェーガーの手に収まる。


 凝縮された魔力が形を変え、一丁の長銃が姿を現す。


 見た目はイェーガーが普段使っている長銃と殆ど変わらない、アンティーク調の古めかしい長銃。だが、一点。誰が見ても明確に違う部分が存在する。


 それは、銃身に埋め込まれた八発の銃弾が込められた回転式弾倉(リボルバー)だ。


 イェーガーの持つ長銃はリボルビングライフルと言い、回転式弾倉を採用している銃だ。


 右手にリボルビングライフル。左手にいつもの長銃。二丁の長銃を携えたイェーガーは、目の前の狼を悠然と見やる。


「……行くぞ、ヴォルフ。(おまえ)を狩るのが狩人(あたし)の仕事だからな」


 そう言い放った直後、イェーガーはリボルビングライフルで狼――ヴォルフを撃ち抜く。


 目にも止まらぬ速射に、ヴォルフはまったく反応が出来ていなかった。


 たった一発の弾丸。けれど、それは――


『ガァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!?』


 ――魔を射殺す銀の弾丸。


 銀の弾丸に撃ち抜かれたヴォルフは痛みに悶えるようにのたうち回る。


虹空(にあ)


 イェーガーのリボルビングライフルには八発の弾が装填されており、その一発一発が致命の威力を誇る銀の弾列(ナンバーズシルバー)となっている。


 今までは異譚攻略中に二発生成出来れば御の字であった銀の弾列(ナンバーズシルバー)が、リボルビングライフルを顕現させるだけで八発も装填されている。属性は一発ずつ替える事が出来る上に、その場その場に合わせて即座に変更する事も可能だ。


 また、一発撃てば即座に再生成が開始される。時間は掛かるけれど、今までよりも早く銀の弾列(ナンバーズシルバー)の生成が可能となった。


 撃ち漏らした時の事を考えて虎の子として温存するのではなく、銀の弾列(ナンバーズシルバー)を様子見で使えるようになった。それと同時に、連続で畳みかける事も可能となった。


 様子見は無い。遠くから見ていて分かった。ロデスコの攻撃(ほのお)が一番効いている。八発の弾丸は全て炎属性に設定してある。後は、イェーガーが狙い違わず撃ち抜けば良いだけだ。


 迷いは無い。狙いを外す事も無い。もう二度と見失わない。


 左手の長銃で邪魔な触手を撃ち抜き、二発目を放つために自ら隙を作っていく。


 だが、ヴォルフも痛みに悶えながら即座にイェーガーから逃れようと回避行動に移る。


「させるかっての!!」


「やらせにゃーい!!」


 イェーガーが放った弾が銀の弾列(ナンバーズシルバー)だと悟ったロデスコとまゆぴーはヴォルフの行動を限定させるために邪魔をする。


 普段はここぞという時にしか使わない銀の弾列(ナンバーズシルバー)を初弾から撃ったという事は、次の準備が既に出来ていると言う事。それに、自分の時と同じように姿が変わり、見た事の無い長銃を手に持っているのであれば、そこから何かしらの打開策を見出したのだと考える事が出来る。


「出来んのね!?」


 ロデスコの問いには二つの意味合いが込められている。


 『倒す事が出来るのか?』『倒す覚悟が出来たのか?』短い一言に、二つの思いを込めて訊ねれば、イェーガーは短く返した。


「ったりめーだ」


 答えた直後に有言実行。二発目の銀の弾列(ナンバーズシルバー)を撃ち込む。


『グウゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウッ!!』


 狙い違わず、一発目と同じ個所を撃ち抜く。


 全身を焼かれたような痛みに耐えながら、ヴォルフはイェーガーを止めようと触手を伸ばしながらイェーガーに肉薄する。


或叶(あると)


 迫るヴォルフから距離を取りながら、左手の長銃で牽制する。


「全員、イェーガーを援護!! 全力で足止めしなさい!!」


「りょっぴー!!」


「了解です!!」


「分かったわ!!」


「了の!!」


「解!!」


現状、ロデスコ達よりもイェーガーの方がヴォルフとの相性が良い。イェーガーは触手の嵐を掻い潜り、致命の一発をヴォルフに打ち込む事が出来るのだから。


 本当は、自分で片を付けたい。けれど、先程とは違ってイェーガーが確かな覚悟を持っている事も分かる。


 イェーガーに覚悟が無いのであれば、何が何でも自分で片を付けるつもりでいた。泥を被るのは先輩の役目だ。重荷()を背負うのもまた同じくだ。その考えは変わらない。


 だが、イェーガーの覚悟を軽んじるつもりも無い。それだけの覚悟を持たなければ、あの覚醒は無かったはずだ。


 本気でヴォルフを止める覚悟がある。本気でヴォルフを思っている。その覚悟と思いをヴォルフに届けるために、ロデスコ達は奮戦しなければならない。


「自由にやりなさい!! アタシ達がアンタのステップに合わせて上げる!!」


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幸運を、(SAN値が)死にゆく者より敬礼を。
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