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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第6章 ■■■■と■■■■■■

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004 ワタシはママじゃありませ~ん!

 放課後。少女達は、対策軍のカフェテリアに集まる。


 それはいつもの事だが、カフェテリアに毎日全員が集まるわけではない。用事がある者、訓練室に(こも)る者、休暇として休む者。皆、何らかの理由でカフェテリアに集まらない事もある。


 特に、詩のように広報活動を頻繁に行っている者は時期によっては長期間カフェテリアに立ち寄らない事はざらである。


 また、朱里や笑良は広報活動を行っているため、立ち寄らない事もある。


 今日も、全員が揃っている訳では無い。


 訓練に出ているのがアリス、朱里、白奈、珠緒、餡子。カフェテリアで寛いでいるのが詩、みのり、笑良。来ていないのが唯と一と瑠奈莉愛だ。


「そう言えば、瑠奈莉愛ちゃんが来てないの珍しいわね」


「そ、そうだね。毎日お菓子食べに来てるのに……」


 瑠奈莉愛の家ではお菓子は滅多に買わない。いや、買わないというより、買えないと言った方が良いだろう。


 幾ら瑠奈莉愛が魔法少女として活動をしていても、九人家族を(まかな)える程の給料を貰える訳では無い。少し余裕は出て来たけれど、それでも贅沢を出来る程では無い。貯金もしなければいけないし、給食費や修学旅行の積立金も用意しなければいけない。


 お金は幾ら貰っても足りないのが上狼塚家の懐事情だ。なので、瑠奈莉愛は対策軍の経費で買っているお菓子をたらふく食べに来ているのである。本人は隠しているつもりなのだろうけれど、ばくばくと毎日一杯頬張って、瑠奈莉愛の家庭事情を知っていれば自ずと行き着く答えではある。


 因みに、余らせてしまっては勿体無いからと、袋を開けた物は瑠奈莉愛に持ち帰らせている。家にいる姉弟達が食べられていないのに、自分だけ十分に食べている事に引け目を感じてしまっている瑠奈莉愛が引け目を感じないようにするためだ。


 お菓子を開けないで持ち帰るのは経費で買っているので流石に駄目だろうけれど、開けてしまって残して駄目にしてしまうくらいなら持ち帰って方が良い、という建前である。


 因みに、流石に毎日ともなると経費の無駄遣いだと怒られてしまうので、週の五日間分のお菓子をアリスが補填している。勿論、アリスの自腹であり、瑠奈莉愛はその事を知らない。


 ともあれ、瑠奈莉愛はお菓子を食べに毎日来ている。食べるだけではなく訓練もしているけれど、目的としては『お菓子と訓練』である。


 そんな瑠奈莉愛が来ないなんて事はかなり珍しい。同じ理由で、唯と一が来ない事もまた珍しい。双子もお菓子は大好きなので、タダ菓子(・・・・)を食べるために来ている。


「何かあったのかしら?」


「……休む、とだけ連絡……」


「三人共?」


「……うい……」


 ソファにうつ伏せに寝転がり、ぴこぴことゲームをしながら答える詩。


「……というか、メッセ、来てる……」


「あれ、本当?」


「あ、ほ、本当だ」


 みのりが携帯端末で確認すれば、童話の魔法少女のみの連絡アプリに三人から今日は行かないという連絡が来ていた。


「……少し文が固いような?」


「そ、そうかな? 事務連絡だし、これくらいじゃない?」


 文面がいつもより固いような気がするけれど、事務的な連絡であれば普通ではある。


 ただ、少しの違和間。


「……笑良、お茶……」


「あぁ、はいはい。今準備しますよ~」


 お茶を所望する詩に、笑良は文句も言わずお茶の準備をする。


 詩がお茶を所望する事はいつもの事だし、笑良がお茶の用意などをするのもいつもの事だ。


「はいどうぞ~」


「……あんがちょ……」


 ゲームを一時中断して、お茶を飲んでお菓子を食べる詩。


 ゲームをしながらお菓子を食べるとママ(笑良)に怒られるのだ。


 三人でお菓子を食べてゆっくりしていると、カフェテリアの扉が開いて髪を濡らしたままの珠緒が部屋に入る。


「あー、つっかれた……笑良ー、髪拭いてー」


「も~、ちゃんと拭いてから来てよね~」


 珠緒の髪を拭く前に、笑良は雑巾を持って珠緒が落として来た水を拭いてくる。


「あたしの髪拭いてけよー……じゃ、みのりで良いや。拭いて」


「い、良いよ」


 珠緒はみのりの前に座り、みのりはタオルで珠緒の髪を拭く。


「ドライヤーもよろしくー」


 手に持っていたドライヤーをみのりに渡せば、みのりはコンセントを挿してドライヤーで珠緒の髪を乾かす。


「やっぱ人にやって貰うのが一番だわー。あ、お茶貰うわ」


「……それ、私の……」


 詩の言葉はドライヤーの音で聞こえないのか、珠緒は詩のお茶を飲む。


「もう~、シャワー室からずっと滴ってたわよ! ちゃんと拭てこないとダメでしょ~?」


 ぷんぷん怒った様子でカフェテリアに戻って来る笑良。


「ドライヤーの音で聞こえなーい」


「聞こえてるでしょ~? まったく……」


「……笑良、私のお茶、飲まれた……」


「はいはい。用意しますよ。まったく、ワタシは皆のお母さんじゃないんだからね~?」


 ぷんすかと文句を言いながら、詩のお茶と珠緒の飲み物を用意する笑良。珠緒は訓練の後なので、温かいお茶よりも経口補水液の方が良いだろうと、冷蔵庫からペットボトルの経口補水液を取り出す。


「はいどうぞ」


 二人の前に飲み物を置き、笑良は自分のお茶を飲んでのんびりする。


「は、はい。終わったよ」


「ありがと」


 お礼を言って、みのりの前から退き、別の所に座り直す珠緒。


 みのりはドライヤーを片付け、後で戻しておこうと自身の隣に置く。


「ねぇ、珠緒ちゃん」


「んぁ? なに?」


 せんべいをばりぼり食べながら答える珠緒。


「瑠奈莉愛ちゃんと唯ちゃんと一ちゃん、今日何か言ってなかった?」


「んや、今日は会って無いから分かんない。なんかあったん?」


「ううん。何も無いんだけど……ちょっと、気に掛けて欲しいかなって」


 何があった訳では無いけれど、少しだけ違和感がある。三人以外の中学生は珠緒と餡子だけだ。となれば、珠緒に気に掛けるように頼むのは自然な流れだろう。


「ふーん……ま、別に良いけど」


「ありがとう」


 何があったか分からないけれど、様子を見るくらいなら別に大した事では無い。


 特に何も考えずに了承し、ばりぼりとせんべいを食べる珠緒。


「あ~、ほら、テーブルの上で食べて。ぽろぽろこぼれてる~」


 ぽろぽろと食べカスを零す珠緒に、笑良は珠緒を注意しながら食べカスが落ちた場所をカーペットクリーナーをころころと転がして掃除する。


 自分の代わりに掃除をしてくれる笑良に珠緒はお礼を言う。


「ありがと、ママ」


「ワタシはママじゃありませ~ん!」


 珠緒の言葉にぷんすかと怒る笑良。けれど、世話を焼く事を止める事は無かった。


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