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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第5章 ■■■■

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プール 5

 水上アスレチックを頑張って進み、楽しそうに笑顔を浮かべながら遊んでいる瑠奈莉愛と餡子に追い付く。


 追い付いたは良いものの、二人はどう声を掛けるか分からずにいた。


「貴方、声を掛けてください」


「こういうのは、自分から行くのが良いんですよ」


「何のための協力ですか。それに、貴方は面識があるのですから、声を掛けるくらいなんて事無いはずです」


「僕から声を掛けた事は殆どありません」


「なら今が良い機会です。さぁ、どうぞ」


「僕は今後も機会がありますので、お譲りします」


「貴方は私の協力者でしょう? なら四の五の言わずに声を掛けてください」


「話題提供とかは頑張るので、ファーストコンタクトは頑張ってください」


 お互いに声を掛ける役目を押し付け合う春花とチェウォン。


 二人がまごついていると――


「ややっ、お二人共楽しんでおりますか?」


「自分達はめちゃくちゃ楽しんでるッス~!」


 ――追い付いた春花とチェウォンに気付いた瑠奈莉愛と餡子は眩しい笑顔で二人に声を掛けて来る。


「くっ、これがコミュニケーション強者――コミュ強の力ですか……!!」


「僕達には真似できないですね」


 恐れ(おのの)いた様子のチェウォンと、冷静に二人のコミュニケーション能力の高さに感心する春花。


「コミュ……強……ですか??」


「これくらい、普通っスよね?」


「そうですよね?」


 不思議そうな顔をする瑠奈莉愛と餡子。礼儀正しく物怖じしない餡子と、底抜けに明るく分け隔て無い瑠奈莉愛。二人にとって知り合いに声を掛けるのは普通であり、仲良くなりたいと思う相手に声を掛けるのもまた普通の事である。


「どうやら、我々とは違う人種のようですね」


「陽キャって言うらしいですよ」


「なるほど、勉強になります」


「それよりも、カムさん」


 つんっと肘で突いて、お喋りをするように促す春花。


「あ、ああ、そうでした。……おほんっ。お、お二人は……」


 言いかけて、チェウォンは春花に顔を寄せる。


「何を話せば良いんですか?」


「二人の趣味、とか……?」


「じゃあ二人の趣味を教えてください」


「僕が知ってる訳ないじゃないですか」


「じゃあなんで言ったんですか……!!」


 こそこそと二人で相談(コント)をしていると、瑠奈莉愛と餡子は小首を傾げながら訊ねる。


「お二人はとても仲良しさんですね」


「いつの間にそんなに仲良くなったッスか?」


 不意に仲良しと言われ、二人は思わず顔を見合わせる。


「仲良し、ですか……?」


「僕とカムさんが?」


「はい!」


「お友達のような距離感ッス!」


 強く頷く瑠奈莉愛と餡子。


 お友達のような距離感だと言われても、春花とチェウォンはあまりぴんと来た様子が無い。


「自分もカムさんとお近付きになりたいッス!」


「私もです! カムさんのスタイルの秘訣聞きたいです!」


「す、スタイルですか? そう、ですね……」


 思わず話題を提供され、チェウォンは少し戸惑いながらも会話を続ける。


「まず、様々な格闘術を身に付けます」


「ほうほう」


「そして数多くの戦闘をこなします。これは、実戦も訓練も同じです。とにかく、数多くこなす事が重要です」


「なるほどッス」


 チェウォンの話を真剣に聞く瑠奈莉愛と餡子。


 だが、春花だけはチェウォンの言葉に違和感を覚え始める。


「戦いをこなしていく内に、自然と身体に沁みついて行くのです。頭では無く身体が戦い方を憶えるのです。そうして昇華されていった物が、今の――」


「カムさん」


「――何ですか。私は今お二人に説明を」


「多分、そのスタイルの事じゃないです」


「は?」


 春花に言われ、チェウォンはぽかんとした表情を浮かべる。


「戦闘スタイルの事じゃ無くて、体型的な意味でのスタイルの秘訣だと思います」


 言いながら、確認のために春花が二人を見やれば、二人はこくこくと頷く。


「カムさんの引き締まった体型の秘訣を知りたいのです。後、出来れば身長とお胸の方も……」


「自分は細いっスけど、カムさんはちゃんと筋肉(にく)が付いてて羨ましいッス! だから、その秘訣をしりたいッス!」


 二人の言葉を聞いて、ようやく自分の勘違いに気が付いたチェウォンは恥ずかしそうに顔を赤らめる。


「す、すみません。私ったら、つい勘違いを……!」


「いえ、戦いの方も勉強になるッス!」


「私も戦いの事も聞きたいです!」


「そ、そうですか……なら、良かったです」


 勘違いをして話してしまったけれど、瑠奈莉愛と餡子は呆れも怒りもせずに笑顔を浮かべて話しを続けてくれるので、チェウォンは安堵で肩の力が抜ける。


「それで、どうやってそんなに筋肉(にく)を付けたッスか? やっぱり、筋トレとか食生活とかこだわってるッスか?」


「私はどうしたら身長が伸びるのか気になります! カムさん、身長お高いですよねぇ……スタイルも抜群ですし」


「確かにッス! 自分と身長同じくらいあるッスよね?」


「そうですね。……えっと――」


「背の高い女の子が上狼塚瑠奈莉愛さんで、隣の子が猫屋敷餡子さんです」


 チェウォンが言葉に詰まって、そう言えばチェウォンは二人の名前を知らないなと思い、さっと二人の名前を教える春花。


「ありがとうございます。……上狼塚さんとだいたい同じくらいですかね。少し、私の方が大きいでしょうか」


「自分167ッス!」


「それでは、私の方が少し大きいですね。私が169ですので」


「三人共背が高くて羨ましいですぅ……。私、153しか無いです……」


 餡子は羨ましそうな顔で三人を見る。


「僕は小さい方だよ。クラスメイトも大体170超えてるからね」


 身長が160cmしかない春花は男の子にしては小さい方である。それでも、餡子からしたら160cmは羨ましいのだろう。何せ、魔法少女は何処まで成長して、何処で成長が止まるか分からない。


 このまま成長が止まるかもしれないし、期待通りに成長するかもしれない。早いうちに成長して背が高くなってくれた方が安心できる。


「でも、羨ましいです! 後27㎝欲しいです!」


「180cmって、レクシーさんよりも大きいですね。彼女178cmですし」


「バレーボール選手にでもなるッスか?」


「バスケットボール選手かも」


「違います! 皆さんのようにモデル体型になりたいんです! 背が小さいと格好良い服がどうにも似合わなくてですね……」


「逆もまた然りですよ。私は可愛い服が似合わないですし」


「自分はどっちも似合わないッスねぇ。ジャージとか、ラフな格好なら似あうッスけど」


「その点、貴方ならどっちも似合いそうですね」


「そうですか? 普段着がラフな格好ばかりなので、あんまりイメージ出来ないです」


 四人はわいのわいのと服や体型、普段気を遣っている事ややっているトレーニングなどの話で盛り上がる。


 お喋りを楽しみながら、『折角だから流されながら話しましょう!』と餡子が言って、流れるプールに歩いて行く。何が折角なのかは分からないけれど、三人は特に何も言わずにそのまま移動した。


 その様子を見守っていた朱里達四人とジアンとユナは、うんうんと頷いた後、お互いに見守っていた事に気付いて笑みを漏らすのだった。


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