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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第5章 ■■■■
254/489

プール 4

SSのつもりで書いたのに長くなりそうです。ごめんなさい。

 困った様子で眉尻を下げる春花。


 先程の発言と、今の春花の様子を見てチェウォンも春花がとても高いコミュニケーション能力を持っている訳では無い事に気付く。


「とてもコミュニケーション能力が高い訳では無いのですか?」


「はい」


「それなのに自然と皆が仲良くしてくださるのですか?」


「はい」


「もしかして私と同じで、周りの方々が仲良くしてくださるために距離を縮めてくださっているのですか?」


「仲良くするためかどうかは分からないですけど、僕から距離を縮めようとした事は無いですね……」


「それじゃあ私と同じじゃ無いですか!」


 がっくしと肩を落とすチェウォン。


「それじゃあ、仲良くなる秘訣が分からないじゃ無いですかぁ……」


「なんか、ごめんなさい」


「……いいえ、失礼な物言いでしたね。貴方は悪くありません」


 思い返せば、春花の方から積極的にコミュニケーションを取ろうとしている様子は無かった。少し考えれば分かる事だった。


「アンタ達! お喋りしてないでさっさと跳びなさいよ!」


 既に春花とチェウォン以外は浮島を渡り終えており、春花とチェウォンを待っているようだ。


「行きましょうか」


「そうですね」


 皆が二人を待っているのであれば、待たせるのは申し訳ない。


 二人は皆に追い付くべく浮島に跳び乗る。


「因みにですけど、誰と仲良くなりたいんですか?」


 ぴょんっと跳び乗りながら、春花はチェウォンに訊ねる。


「特定の誰かという訳では無いです。出来れば、皆と仲良くしたいのです」


 とは言うけれど、本心としては朱里と仲良くなるのはマストである。何せ、自分の憧れなのだから。後は、ちゃんと謝れれば良いと思っている。今まで色々失礼な事を言ってしまったから。


「分かりました」


「?」


 春花はぴょんぴょんっと浮島を渡る。


 そして、辿り着いた先で春花は朱里の傍による。


「東雲さん」


「何よ?」


「カムさんが仲良くなりたいって言ってる」


「sこがうたぼgじゃおいhmsぁgじゃ!?」


 まさかの春花の行動に、チェウォンは驚いて足を滑らせてプールに落ちてしまう。


 春花はチェウォンが落ちた事に気付いて振り返る。


 プールに落ちたチェウォンは慌てながらも見事な動きで水面へと復帰し、綺麗な泳ぎで春花の元へとやってこようとする。


「こら、ずるしない。最初からやり直しだよ、チェウォン」


 しかし、アーサーがチェウォンを注意する。


 確かに、チェウォンは途中で落ちてしまった。ゲーム性を考えるのであれば最初からやり直しが妥当だろう。


 チェウォンからすれば春花が急に言ってほしく無い事を口走り始めたのを止めなければいけない。だが、こういう時でもチェウォンは真面目であった。


 アーサーの注意がしっかりと耳に入っていたチェウォンは水中でターンをして、スタート地点に戻る。


 綺麗なフォームでスタート地点に戻るチェウォンを見送り、春花は朱里に向き直る。


「仲良くなりたいって、誰と?」


「皆とって言ってたよ。でも、仲良くなる方法が分からないって言ってた」


 ばしゃーんっと背後から誰かが水に落ちる音が聞こえてくる。


 振り向いて見やれば、またしてもチェウォンが水に落ちていた。


 何度も水に落ちるチェウォンに、春花は小首を傾げる。


 チェウォンは運動神経は悪くないはずだ。これくらいの遊具であれば難無くこなせるはずだ。


「ふーん、アイツ仲良くなりたいんだ。それで声かけて来たのね」


「確かに、チェウォンにしてはらしくない様子だったわよね」


「いつもより静かだったものね。噛み付いてくる事も無かったし」


「体調でも悪いのかと思ってたけど、悩んでただけだったのね。良かったわ」


 納得したように頷く朱里と白奈。


「周りの人に恵まれてきたから、自分から仲良くなる方法が分から無いんだって」


「赤裸々に全部語らないでくだしゃぁっ!?」


 言葉の途中で水に落ちるチェウォン。声が近かったのでゴール目前で落ちてしまったらしい。律義で真面目なチェウォンはまたしても綺麗なフォームでスタート地点へと戻っていく。


「だからってアンタに相談しても意味無いでしょ。アンタもアタシ達以外に友達居ないんだから」


「こら。失礼な事言わないの」


「ううん、僕もそう思う。だから、友達多そうな東雲さんに協力して欲しいなって。そうすれば、カムさんも皆と仲良くなれると思うし」


 春花がチェウォンに皆と仲良くなりたいと言われて白奈ではなく朱里を選んだのは、朱里がクラスメイト達とよく話をしているのを見かけるからだ。


それに、朱里はアリスにぐいぐいとコミュニケーションを取りに来ていた。そう言う面を見ているからこそ、朱里に協力を頼み出たのだ。


 因みに、チェウォンが一番仲良くなりたいのは朱里であり、そんな朱里に一番に話しをしてしまったので一瞬で取り乱してしまった。


「うーん……その必要も無いと思うけどね、アタシは」


 朱里なら協力してくれるだろうと思っていた春花だけれど、朱里は必要無いと言う。


「どういう事?」


「無理に気張る必要なんか無いって事よ」


 朱里がそう言い終わった直後、春花の背中に衝撃が走り、塗れた手で口を塞がれる。


「余計な事を赤裸々に暴露しないでください!!」


 酷く慌てた様子で春花の口を封じたのは何度も水に落ちてずぶ濡れになったチェウォンだった。


 余程慌てているのか、春花に後ろから抱き着くような形で口を塞いでおり、人並み以上にある胸部を春花の背中にこれでもかと押し付けている。


 その様子を見た白奈は眉を寄せる。


「ちょっとチェウォン、くっ付き過ぎじゃない? 有栖川くんはこんなに可愛いけど、一応男の子なんだから、そんなにくっ付くものじゃないわ」


「――っ、え、ええ。そうですね。すみません、余計な事を言うものだから、つい……」


 白奈に注意され、チェウォンは慌てて春花から離れる。


「一応じゃ無くて、正真正銘男だけど……」


「説得力が無いのよ、アンタ」


「そうかな……? 結構、筋肉とかあると思うけど……」


 袖をまくって力こぶを作ってみるけれど、あまり山にならない。


 春花は暫く自分の力こぶを見た後、残念そうな目を向けて来る朱里に向き直る。


「無かったみたい」


「知ってるわよ、見てたから」


「マッチョメン違うくても、春花は強い。最強の男の娘」


 シャーロットは春花が半魚人相手に大立ち回りをしたのを知っている。シャーロットに限らず、日本の童話の魔法少女は全員知っている事だ。


 春花はその事を言っているのかと思ったのだけれど、シャーロットは見た目が最強に可愛い男の娘という意味で言っている。


「でも、身体付きは男の子っぽいよ。脚の細さとかも、女の子とは違うしね」


 レクシーは自然な動作で春花の肩や腕を触りながら女子との違いを確認する。


「セクハラレクシー。略してセクシー」


「不名誉な事を言うんじゃない。あ、いや、失礼。……男の子だと認識していても、やはり顔が可愛いからつい距離感が近くなってしまうな……」


「別に平気です。慣れてるので」


 言って、春花はシャーロットを見やる。


 一緒にクルールー教団に乗り込んだ日から、シャーロットは会うたびにセクハラをしてくる。そして、シャーロットに便乗するように詩もまた春花にセクハラをしてくるのだ。


 といっても、お尻を触るとか直接的なものではなく、隣に座って太腿を触って来たりするくらいだ。最初はびっくりしたけれど、別段嫌な訳では無い。二人がそういう変態チックな趣味がある事を理解しているのでもう諦めている。


「……まさかとは思うが、セクハラをしている訳では無いよな?」


「ブイ」


 シャーロットはブイサインをした後、逃げるように次のアスレチックへと向かった。


「待て! あれ程セクハラをするなと言ったのに! 未成年に手を出すのは犯罪だぞ、シャーロット!」


「心は十代美少女(キューティーガール)


「実年齢は「自主規制」――言葉を被せるな!! 待てコラ!!」


 お仕置きをしようとシャーロットを追いかけるレクシー。そこそこ怒っているのか、いつもの澄ました口調が崩れている。


「さ、アタシ達も行きましょうか」


「そうね」


 朱里と白奈も二人の後に続く。


 仲良くなりたいと言われたはずなのに、それに触れずに先に行ってしまった二人。協力してはくれないのだろうかと考えていると、チェウォンが少しだけ怒ったように眉を寄せて春花をみやる。


「貴方は悪魔ですか」


「どうしてです?」


「貴方だけに相談した意味を考えてください。秘密の協力者が欲しかったんです、私は」


「なるほど……。……すみません、東雲さんに協力を仰いだ方が確実かなって思って……」


 申し訳なさそうに少しだけ背中を丸める春花を見て、チェウォンは一つ息を吐く。春花が悪意を持って朱里に相談事を明かした訳では無い事は理解している。チェウォンのためを思って行動してくれた事もだ。


「……すみません。私の事を思ってしてくれた事なのに、責めるように言ってしまって」


「いえ、事実ですし……」


「いいえ。秘密だと言わなかった私が悪いです。……もし差し支えなかったら、他の方との仲を取り持っていただけませんか? 今度こそ、秘密裏に」


「……僕で良ければ。喋れる人は限られちゃいますけど」


「是非、お願いします。一人でも多く、仲良くなりたいので」


「また二人でお喋りしてる! 早く来なさい! 置いてっちゃうわよ!」


 二人の話がまとまったところで、前を進んでいた朱里が二人に声を掛ける。


「行きましょうか」


「はい」


 朱里に急かされ、二人は次のアスレチックに挑む。


「まずは、この先に居る上狼塚さんと猫屋敷さんをお願いします」


「分かりました」


 二人は先を進む瑠奈莉愛と餡子に会うために、急ぐようにアスレチックを進む。


「「あ」」


 が、力んでしまったのか、二人同時に水へ落ちてしまった。先は長そうである。


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― 新着の感想 ―
[一言] >「sこがうたぼgじゃおいhmsぁgじゃ!?」 にゃはは(^_^*)
2024/06/18 12:48 退会済み
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