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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第5章 ■■■■

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プール 2

水着の種類が多くて、どの子にどれを着せるか悩みますし、合わせるのが難しいです。

 朱里を問い詰めながらも少女達はプールの施設内に入場していく。


 例によって春花は一人で男子更衣室に入っていったのだが、詩や唯と一が暴漢対策グッズを春花に手渡してくる。


 きっと何を言っても無駄なのだろうと、春花は諦めて暴漢対策グッズを黙って受け取る。


 春花は一人男子更衣室に入って、さっさと着替える。女子と違って特に準備も無い。


 春花が男子更衣室に入って来て、着替え途中だった男性の利用客がぎょっと目を剥くも、普通に着替えを始めるので困惑しながらも男なのだろうと受け入れる。ただ、やはり気にはなるのか、ちらちらと春花の様子を窺っている。


 見られているとはつゆ知らず、春花はさっさと着替えてから更衣室を後にする。


 例の如く春花が一番早かった。市民プールの時は春花も待っていたけれど、今回はかなりの大所帯であるし、初対面である春花と一緒に回ろうだなんて物好きは居ないだろう。これがアリスであれば話も違ったのだろうけれど。


 春花は施設の案内板を見る。


 波のプール、流れるプール、ウォータースライダーに遊具のある子供向けプール等々。充分に楽しめる設備の整った施設になっている。


 その中でも春花が気になったのは温水プール。温水プールであればゆっくり出来るだろ。


 温水プールで時間を潰そうと考え、早速温水プールに向かおうとして――


「どこ行こうっていうのよ」


 ――ぐいっとラッシュガードのフードを引っ張られる。


「うわっ……」


 急に引っ張られたので少しだけバランスを崩して、つるっと脚を滑らせて後ろに倒れてしまう。


「おっと」


 バランスを崩した春花の肩を掴んで身体を支える。


「朱里、乱暴なのは良くないよ」


「不慮の事故でしょうが」


 どうやら、春花を引っ張った人物と、春花の身体を支えてくれた人物は違うらしい。とはいえ、声を聞けばどっちが何をしたのかは明白だけれど。


「ありがとうございます、ペンドラゴンさん」


 振り返り、転びそうだった春花を支えてくれたレクシーにお礼を言う。


 レクシーはスポーティーな水着に春花と同じくラッシュガードを着ている。春花の無地のラッシュガードとは違い、柄や差し色の入ったお洒落な物となっている。


「気にしないでくれ。それと、私の事はレクシーと呼んでくれ」


「分かりました。レクシーさん」


 春花がレクシーと呼べば、レクシーはにこりと微笑む。


「てかアンタ、勝手にどっか行こうとしないの。皆で遊びに来てるんだから」


 怒った様子で春花に注意をするのは、前回とは違う水着を着た朱里だった。


 赤色なのは変わらないけれど、ワンピースタイプの水着を着ている。


「いや、大体の人と初対面だから、僕は温水プールでゆっくりしようかと……」


童話(うち)の子達とは初対面じゃないでしょ。シャーロットも……いや、変態(アレ)は駄目ね」


「今、ワシの話した?」


 ひょこっとレクシーの後ろから顔を覗かせたのは、空色のビキニとパレオのセットに身を包んだシャーロット。


「してない。ハウス」


「ノー。パラダイス、満喫する」


 言って、シャーロットは後ろを振り返る。


 女子更衣室からは続々と水着姿の魔法少女達が出てくる。


 その中で、一瞬だけ凛風が顔を覗かせたけれど、後ろから引っ張られるようにして女子更衣室に戻っていった。


 一瞬だけ見えたけれど、かなり布面積が少なかったのはきっと気のせいなはずだ。


「今、凛風マイクロビキニ着てなかった?」


「ああ、見えた」


 呆れたような表情を浮かべる朱里とレクシー。どうやら、春花の見間違いでは無かったらしい。


「公共の場でなんつうもん着て来るんだか……」


「度胸があるのか、倫理観が欠如してるのか……」


「両方でしょ」


 全員が見間違いなら良かったのにと思っていると、白のタンキニに身を包んだ白奈が春花達の元へやって来る。


「早いのね、有栖川くん。大丈夫? 何も無かった?」


「うん。特に」


「そう。良かったわ。誰も凍らせなくてすんで」


「一般人への魔法の行使は禁止よ」


「犯罪者への魔法の行使は許されるわ」


「アンタ、過剰防衛って知ってる?」


「朱里は当然の報いって言葉知ってる?」


 バチバチと何やら二人の間に火花が散っているような気がしてならない程、二人の雰囲気は少し刺々しい。


「はいはい二人共喧嘩しない。キスの件は帰ってからってアリスも交えてって事で話は着いただろう?」


 朱里が来ている段階で、キスの件は話が着いたのだと思っていたけれど、どうやら先延ばしになっただけだったらしい。


 朱里としては面倒臭いタイミングで面倒な事言いやがってという思いがあり、白奈としては私の弟兼妹である相手と何許可無くキスなんてしてくれちゃってんだい? という思いがある。


 バチバチと火花は散っているけれど、止めに入ったレクシーの言葉にすんなりと従っているので本気で喧嘩をしている訳では無い……はずだ。


「他の子達ももう遊んでるみたいだし、私達も行こうか」


 皆、数人で一緒に遊んでいるようなので、春花達もこの五人で遊ぶ流れになるだろう。


「す、すみません」


 と思っていたところで、不意に声を掛けられる。


 おずおずと声を掛けてきたのは、競泳水着に身を包んだチェウォンだった。


「わ、私も、御一緒してよろしいですか? せ、せっかくですし……」


 チェウォンにしては珍しいおずおずとした態度に朱里もレクシーも怪訝な顔をする。


 チェウォンは何事もはっきりと伝えるタイプの人間であり、自分の行動にも迷いが無い。自分の行動を信じ、責任を持って行動にあたる。例え失敗しても自分でしっかりリカバリーをして、迷惑をかけた相手には謝る。


 そんな、芯のある人間だ。


 こんな風に自信の無さげな態度はかなり珍しい。祝勝会の時もそうだったけれど、どうも様子がおかしいように見える。かといって、体調が悪い訳でも無さそうだし、先の戦闘について何か躓いているような様子も無い。


 どうして自信が無さそうなのか、五人には皆目見当も付かない。


「別に良いけど。ね?」


「ええ、一緒に回りましょう」


 皆目見当が付かないからといって、チェウォンと一緒に回るのが嫌な訳では無い。


「それじゃあ行こうか」


「れっつごー」


 チェウォンを交え、五人は早速手近なプールへと向かう。


 緊張した面持ちのチェウォンをユナとジアンがニヤニヤと笑みを浮かべながら見守っている事に、六人は気付く事は無かった。


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