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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第5章 ■■■■

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異譚34 むさぼるもの、父なる■■■

 建物の陰から現れたのは、修道着に身を包んだ半魚人だった。


 半魚人達の顔や身体の特徴は様々で、カジキマグロやトビウオ、マンボウのような特徴が見受けられる個体も居る。


 体格が良い者、小柄な者、細身な者と、人間のような(・・・・・・)個体差がある。


「やっぱり、クルールー教団繋がり」


 アリスの言う通り、半魚人達の着る修道着にはクルールー教団の施設で見たマークが描かれている。


「それじゃあ、海上都市(此処)を落とせば全部終わるって事だね」


 黄金の大剣を構え、素早く踏み込むアーサー。


「修道着を着るなら、武器なんて持つものではないよ」


 迫る半魚人達の攻撃を大剣で捌き、たったの一振りで両断をするアーサー。


 アーサーの動きは実直。小細工を弄さず、小手先の力に頼らず、ただ己が磨き上げた剣技で相手を圧倒する。


 まさに王道。近接戦闘、特に、大剣を使う魔法少女はアーサーを真似するべきだとアリスは思っている。


 努力と技術の粋。それがアーサーだ。まぁ、それと同じくらいに魔法少女としての才能もあるのだけれど。


 迫る半魚人達を素早く両断していくアーサー。


「ここ、水ばっかりで良いわねぇ。わたしの領域って感じ」


 アーサーとは反対の方向から来る半魚人には、ベラが対応する。


 ベラの足元の水たまりの水が独りでに動きだす。


 水は宙に浮き、幾つもの小さな水玉となりまるで散弾のように高速かつまばらに射出され、半魚人達を抉る。


 ベラ、というより水瓶座(アクエリアス)の特性なのだけれど、アクエリアスは自身が触れた水を自由自在に操る事が出来る。


 水上都市は浮上したとはいえ、まだそこら中に水が残っているので、ベラにとって水上都市は潤沢に貯蓄された武器庫のようなものである。


 自身で水を生成するための魔力を使う必要が無いので、ベラは省エネルギーで戦い続ける事が出来る。


 ベラはたまたま日本に来ていただけだけれど、今回選出された魔法少女はアクエリアスが多い。少ない魔力量で長く戦い続ける事が出来るので、今回の任務には最適である。


 アリス達が手を出す必要も無く、アーサーとベラの二人だけで、多数迫っていた半魚人達を殲滅し終える。


「ふう。第一ウェーブクリア、って感じかな」


「各国で三か所からの侵入。加えて、三か所から更に分散しての侵攻。必然的に敵の戦力も分散せざるを得ない」


「そこまで頭が在るようには見えないけどね」


「頭が無くても、頭が居れば(・・・・・)知性的に動くでしょ。他のチームの状況は……って最悪」


 舌打ちをしながら、小型無線機を付けた耳を指差すロデスコ。


「ジャミングされてる。通信出来ないわ」


 ロデスコに言われて全員が通信出来るかどうかを確認する。ロデスコの通信機の故障という可能性もあるため、一応全員が確認をするけれど、ロデスコの言う通り他のチームとも、航空母艦とも通信が出来ない。


「……これじゃあ、誰が異譚支配者に遭遇したのか分からない」


「……一応、音拾える……」


「ワシも」


 周囲の音から状況を察する事の出来るマーメイドとレディ・ラビットが居れば、ある程度の距離であれば周囲の戦闘状況を確認する事が出来る。


 だが、それはこのチームだからこそだ。


「それはこのチームだけなのです。耳が良い子がいないチームは連携が出来ないのです」


 オリーの言う通り、魔力感知以外の探査能力を持たない魔法少女のみのチームでは索敵は不可能だ。


「皆進むのは一緒。核と戦ってるのが分かれば、直ぐに露払いに移行してくれるはず」


「多少露払いまでに時間を取る事になるが……連絡が取れない以上、行き当たりばったりは仕方ないか」


「そんなのいつもの事でしょ。計画通りに進んだ試しが無いわ」


「……それも、そう……」


 異常事態(イレギュラー)なんて、いつもの事。


 状況を確認した一行は直ぐに霧の向こうに聳え立つ建物へと向かう。





「あいよー、通信機ダメダメネ。これじゃ、アリスの声聞けないヨ」


 赤いチャイナドレスに革製の胸当てや手甲。頭には緊箍児(きんこじ)を付けている糸目の少女――孫凛風。魔法少女名は孫悟空。


 だが、基本的に中国の魔法少女は魔法少女名(コードネーム)で呼ぶ事が無い。


「凛風姐姐(じぇじぇ)。いかがいたしましょう?」


 姐姐。つまり、姉。


 中国の魔法少女は、先輩を皆姉として慕う風潮がある。そのため、作戦中もコードネームでは無く名前で呼び合う。


 余りに仲が良く、恋仲に……なんて事もざらにある。だが、仲の良さは相互助力を最大限まで引き出す事にもなる。


「うーん……まぁ、先に進むしかないネ。行くところは変わらない訳だからネ」


 凛風の視線の先にあるのは、霧の中に聳え立つ巨大な建物。


 あまりに巨大すぎて、どこからでも確認できる。きっと、他の面々も巨大な建物を目指して進んでいるに違いない。


「行き当たりばったり。いつもの事ネ」


 如意棒を肩に担ぎながら、先頭を歩く凛風。


 つい先ほど、凛風達も半魚人達と一戦交えたところだ。


「準備運動にはなったネ。さ、皆行くヨ」


 凛風が数歩歩いたところで、不意に脚を止める。


「? いかがいたしました、凛風姐姐?」


「驚いたナ。霧でジャミングされてるとは言え、この我が気付かないなんてネ」


「何を言って……なるほど、そう言う事ですか。全員戦闘態勢!!」


 即座に凛風の言いたい事を理解した凛風付きの少女――(リュウ)雨霧(ユートン)は全員に指示を飛ばす。


 雨霧の指示の数秒後、目前の地面が割れる。


 地中から飛び出して来たのは、数多の触手を蓄えた肉塊だった。


 触手と触手の間には恐らくは内臓だと思われる器官が露出しており、同じく露出している目玉と共に醜く膨れ上がっている。


 明らかに先程戦った半魚人とは一線を画す生命体(存在)


 内包する魔力量。見るも悍ましい姿。人なんぞ軽々と超える巨体。


「間違い無いネ。異譚支配者(・・・・・)ダ」


 肩に担いだ如意棒を構える凛風。


「此処で終わらせるヨ。さっさと倒して、功績全部いただきネ」





「……どうやら、私達が一番乗りのようですね」


 海上都市に上陸した韓国チームの目の前に立ちはだかる、巨大な影。


 突き出した目、分厚くたるんだ唇、魚のような鱗に爬虫類のような水かきを手足に持つ、明らかに異形の姿をしている存在。にもかかわらずその姿形は人間と酷似している。


 胡乱ながら確かな知性を感じさせる目を見れば確信する。


 上陸直後に戦った半魚人共とは生命体としての格が違う。


 また、内包する魔力量も雑魚のそれとは明らかに違う。


異譚支配者(・・・・・)と接敵。向こうから会いに来てくださるなんて、ありがたい事この上ないです」


 異譚支配者を前に、チェウォンは拳を構える。


「戦闘開始。全員、気を抜かないように」


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